( 297813 ) 2025/06/09 07:03:38 0 00 6回終了時のTKO勝ちで統一王者となりガッツポーズを見せる中谷(撮影・増田悦実)
<プロボクシング:WBC、IBF世界バンタム級王座統一12回戦>◇8日◇東京・有明コロシアム
WBC世界バンタム級王者の中谷潤人(27=M・T)が、初の王座統一に成功した。IBF世界同級王者の西田凌佑(28=六島)に6回終了TKO勝ち。全勝の日本人王者対決を、3階級制覇王者が制した。自身10度目の世界戦で、国内タイ記録となるプロデビューから31連勝を達成。「バンタム級最強」を証明した。今後はスーパーバンタム級に転向予定。来春、4団体統一世界同級王者の井上尚弥(32=大橋)との大一番の実現を目指す。
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突然、試合が終わった。7回開始直前、ゴングが鳴ると中谷は控えめに両腕を掲げた。イスに力なく座る西田へ声をかけると、2つのベルトが運ばれてきた。左肩に4度目のWBCの緑。右肩には新たにIBFの赤。3階級目で初統一に成功した証を手に「日本人になじみのある階級で統一できてうれしい」と喜んだ。
「ブラックホール」を「ビッグバン」が飲み込んだ。守備力を誇る強敵に、サプライズを仕掛けた。「みなさんを驚かせたい。エンターテインメント性で」と1回から手数を重ねた。「ダメージを与えている」と確信すると、世界戦4連続KO中の拳が“大爆発”。相手の右目は腫れ、右肩は脱臼。非情な戦いぶりだったが「これがチャンピオン同士の戦い。良い形でベルトを取れた」と誇った。
節目を国内タイ記録で飾った。15年4月のプロデビュー戦から31連勝。元2階級制覇王者亀田和毅(TMK)、元東洋太平洋、日本バンタム級王者サーシャ・バクティン(協栄)に並んだ。世界戦10戦目で、9回目のKO勝ち。米老舗専門誌ザ・リングの全階級を通じた最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」の7位に恥じない攻撃力を披露した。
来春のビッグマッチへ前進した。3月のボクシング年間表彰式で、1階級上の井上から「1年後の東京ドームで」と突然の提案を受けた。実力を認められてのオファーに握手で応じた。準備を着々と進めた。西田戦に向け、恒例の米国合宿を1カ月敢行。現地に初めて栄養士を帯同させた。帰国後も減量食の写真を送り、助言をもらった。スーパーバンタム級転向を見据えた肉体改造の一環だった。
この日、来年5月ごろの対戦を目指す“怪物”からリング脇で見守られた。試合後に「もうすぐ行くので待っていてください」と宣言。実現のためには、階級を上げても無敗であり続ける。3階級王者が第1関門を突破した。【飯岡大暉】
【ラウンドVTR】
1回 中谷は30戦全勝、西田は10戦全勝。サウスポーの全勝王者同士が王座統一戦を迎えた。出だしで中谷が猛攻をしかけた。得意の右アッパーを軸に、左フックを強振。西田はガードをがっちり固めて、カウンターの左ボディーフックをヒットさせる。1回から激しい打ち合いとなった。ニッカン採点は中谷10-9
2回 西田はガードを高く掲げて、じりじりと前進。相手のパンチをブロックして、左ボディーアッパーを軸に攻める。中谷は左フックを強く振っていく。接近戦で左フックを当て、右アッパーを相手のガードをこじ開けるように、連打を何度も繰り出した。ニッカン採点は中谷10-9
3回 西田は左フックをカウンターでヒットさせて、中谷のクリンチを引き出した。前進しつつ、左ストレートも顔面にヒット。中谷はフックに力を込めるが、ラフになって精度が甘くなる。お互いにボディーも攻め合った。ニッカン採点は西田10-9
4回 西田はコンパクトで最短距離をいくストレートで中谷の顔面を何度もとらえる。左のカウンターもヒット。西田は接近戦でも細かいパンチを的確にヒット。中谷は強振のフックが多く、ヒットが少ない。ニッカン採点は西田10-9
5回 中谷が左ストレートのクリーンヒットを軸に一気にラッシュに入る。西田のクリンチを振りほどいて、チャンスに一気にたたみかけた。偶然のバッティングで西田の右目上が腫れ上がり、終盤にはドクターのチェックが入った。ニッカン採点は中谷10-9
6回 中谷はゴングから前に出て攻勢をかける。右フック、左ストレートをヒット。左のワイルドなフックで、西田の右目にガードの上から打撃を加えていく。西田は左ボディーフックで反撃したが、右目上は大きく腫れ上がり、ほぼ目が閉じている状況となった。ニッカン採点は中谷10-9
◆中谷潤人(なかたに・じゅんと)1998年(平10)1月2日、三重・東員町生まれ。幼少時代に空手を学び、中学1年から競技を開始。米国で単身渡米し、ルディ・エルナンデス・トレーナーに指導を受けて修行を積みながらアマ14勝2敗。同年4月にプロデビューし、1回TKO勝ち。16年に全日本フライ級新人王、17年に日本同級ユース王座、19年2月に日本同級王座を獲得。20年11月、WBO世界フライ級王座を奪取。23年5月、WBO世界スーパーフライ級王座を獲得。24年2月にWBC世界バンタム級王座獲得。身長173センチの左ボクサーファイター。
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