( 298991 )  2025/06/14 04:02:25  
00

40代のクルド人男性が覚醒剤取締法違反容疑で逮捕、起訴された。

彼は過去に入管施設に5年収容され、入管非難を繰り返し提訴してきた人物で、マスコミにも登場する有名人だった。

逮捕容疑は新宿区で覚醒剤所持の現行犯で、逮捕後も犯行を否認。

彼の過去には暴力事件や精神的問題もあり、入管施設でトラブルが続いていた。

彼は国を相手取って様々な訴訟を行っており、国際人権規約違反の主張もしているが、難民認定や在留許可を巡る裁判では敗訴している。

マスコミや支援者が彼を取り上げてきたが、今後の処遇や再犯時の責任について議論が予想されている。

(要約)

( 298993 )  2025/06/14 04:02:25  
00

覚せい剤(写真はイメージです) 

 

 6月11日、産経新聞Web版で、40代クルド人男性の、覚せい剤取締法違反容疑での逮捕、起訴が報じられた。この件が出入国在留管理庁関係者、そして難民支援者の間で大きな波紋を呼んでいる。なぜなら、この男性はこれまで施設に収容されること合計5年。入管非難を繰り返し、国をさまざまな形で提訴してきた。メディアにも多数登場する、当局批判の急先鋒だったからである。 

 

 *** 

 

 産経記事によれば、その男性は、都内在住の無職、デニズ・イェンギン被告(46)。調べによると、デニズ被告は5月12日、新宿区の路上で、覚せい剤1袋を所持しているところを現行犯逮捕された。6月2日に起訴されたという。 

 

 捜査関係者によれば、 

 

「夜10時前、“外国人らしい男性から白い粉を見せられた”との110番通報があり、当該の歌舞伎町近くの路上に警官がかけつけると、デニズが通行人に話しかけていました。声をかけたところ、支離滅裂なことを口走ったため、所持品検査をすると、尻のポケット付近からビニール袋が落ち、その中には白い結晶が入っていました。本人は“自分のものではない”と言っていましたが、結晶の成分を検査したところ、覚せい剤の反応が出たのです」 

 

 デニズ被告はその場で逮捕。が、その後も「私のものじゃない」と繰り返し、署に引き渡された後も、 

 

「“警察の罠だ”“弁護士が来ないと何も話さない”と言い、取り調べに応じない姿勢を見せていました」 

 

 量は0.418グラム。末端価格にして2〜3万円分といったところだろうか。 

 

 この事件が注目されているのは、デニズ被告がマスコミにしばしば登場する“有名人”であったからである。 

 

 被告は2007年の来日以来、入管施設への収容と、仮放免での出所を繰り返してきた。そして入所時の待遇などを巡り、国を複数回提訴している。 

 

 それらの訴訟資料などによれば、デニズ被告は1979年、トルコ・イスタンブール生まれ。トルコ国籍を有する少数民族・クルド人である。2007年に来日し、埼玉県蕨市で家屋解体業に従事。在留資格は90日間の短期滞在であったため、翌年には入管法違反(不法残留)の容疑で逮捕され、施設に収容された。その後、仮放免されては再び収容を繰り返し、入管施設には計5年間いたことに。2011年には日本人女性と結婚している。その間、難民認定を4回申請しているが、いずれも不認定に終わっている。しかし当時は、難民申請中は強制送還が停止されていたため、日本国内に留まり続けることになったのだ。 

 

 

 彼の素行には問題があったようだ。さる法務省関係者によれば、 

 

「仮放免中に2回逮捕されています。一度は都内のトルコ料理店で知人と喧嘩し、持っていた長さ約70センチの鉄棒を振り上げて“殺してやる”と脅迫したというもの。この容疑で懲役10カ月、執行猶予4年の有罪判決を受けています。また、その6年後には、やはり都内で酒に酔い、クラブへの入店を拒否されたことに腹を立て、店員の足を蹴り、顔面を殴った。さらには、警察署で取り調べを受けた際にも取調官に掴みかかろうとし、それを止めようとした署員の腹を蹴り、腹に頭突きを食らわせてやはり暴行や公務執行妨害容疑で逮捕されているのです」 

 

 この際は、懲役1年の実刑判決を受けている。 

 

 入管施設に収容されている間も、職員との間で度々トラブルが起きた。 

 

「ハンガーストライキを行ったり、自殺未遂をしたり。そうして仮放免処分となってはまた収容されることが続きました」 

 

 2019年には、夜中に鎮静剤の服用を申し出たものの、これが認められなかったことに腹を立て、大声を上げ、扉を蹴るなどした。こうした行為が収まらないため、警備員は部屋の移動を指示。が、彼がそれに従わなかったので、両腕と両足を持って処遇室に連行し、手錠をかけた。後にデニズ容疑者はこれらの処置を巡り、国に損害賠償を求めて提訴している。 

  

 この訴訟では、連行の過程で、職員が顎の下の「痛点」を強く押したり、手錠をかけられた腕を持ち上げたりしたことなどにつき、裁判所が「合理性を欠く措置」と判断し、国の違法行為が認定。22万円の賠償命令が確定し、メディアに大きく取り上げられた。また、「クルド難民デニスさんと歩む会」が設立され、カンパも集まった。一方で、 

 

「連行や手錠をかけたこと、隔離処分にしたことなど、施設が取った多くの行為は、デニズの当日の抵抗状況から見て、違法性はなかったと認定されています」 

 

 

 上記の訴訟以外にも、彼は国を提訴している。 

 

 判明しているだけでも、「入管施設への長期収容は、国際人権規約違反だ」として国を相手取って損害賠償請求を行い、また、難民不認定の処分取り消し、さらには、在留特別許可が認められないことの取り消しを求めて、やはり国を提訴している。 

 

 上記の司法手続き以外でも、自らへの入管の対応を国連の「恣意的拘禁作業部会」に通報。それを受けて同部会は「長期収容は国際人権法違反に当たる」との意見を採択し、日本政府に送達している。 

 

 もっとも、難民認定や在留許可を巡る裁判では、 

 

「敗訴しています。その中では、彼が来日後、7カ月間も経ってから難民申請を行おうとしたこと、また、“反体制派のイスラム教徒だ”と言う一方で、キリスト教に改宗したとも述べていることなど、主張に矛盾があることが指摘されています」 

 

 一部のマスコミは彼を重用してきた。 

 

 東京新聞は「日本の入管行政『人権軽視の極み』」と題した記事で彼のインタビューを掲載するなど、何度もデニズ被告に関する記事を掲載。朝日新聞や毎日新聞も彼の主張に沿う記事を掲載している。NHKも2022年12月、入管問題を扱った「クローズアップ現代」で彼をインタビューしている。 

 

 今回の逮捕・起訴を受けて、前出の法務省関係者は言う。 

 

「有罪が確定したとしたら、送還など厳しい措置が取られることになるはずです。しかし、彼を支援してきた弁護士やメディア、国会議員などの激しい抵抗が予想され、出国までには時間がかかるかもしれません」 

 

 その間、もし彼が再犯したとすれば、一体、その責任は誰が取るのだろうか。 

 

デイリー新潮編集部 

 

新潮社 

 

 

 
 

IMAGE