( 299413 ) 2025/06/15 06:38:11 0 00 太陽光パネルを巡っては近年、自然災害の激甚化による損壊や金属ケーブルの盗難増加という新たなリスクに直面している。事業者がかける損害保険の引き受け条件は厳しくなり、保険料も大幅に引き上げられて収益を圧迫。政府の買い取り保証制度が今後順次終了することも相まって、事業者には採算悪化による大量離脱の懸念もある。パネルのリサイクルにも悪影響が出かねない。
警察庁の発表によると、昨年1年間の太陽光発電施設における金属ケーブル窃盗の認知件数は7054件で前年比1693件増となった。脱炭素の世界的な潮流の中、再生可能エネルギーによる発電に欠かせない銅の需要が高まっていることが背景にある。
盗難は2023年以降に特に顕著となり、保険会社の保険金支払額が増加。あいおいニッセイ同和損害保険では「太陽光発電設備の引き受けにおける収益性が著しく悪化した」と説明する。各社の条件も厳しくなっており、自前で防犯カメラを設定するなど対策の状況によって、保険料に差を設ける事例も出てきた。
国民民主党の竹詰仁参院議員が保険会社2社から情報提供を受けた事例では、福岡県所在の業者の場合、出力1メガワットでほとんど浸水のない地域のケースで19年の年間保険料が42万円だったのに対し、24年は165万円と4倍近くに増加。茨城県の業者も32万円から146万円に増えた。
保険料の支払いだけで売り上げの15%に達するといい、竹詰氏は「高くなっても仕方がない、という域を越えている」と指摘。事故を起こしていない太陽光にも高い保険料がかかるようになれば、「事業が成り立たなくなる」と懸念を示す。
再エネ由来の電気の買取価格を政府が保証する「固定価格買い取り制度(FIT)」は32年以降に順次終了する。年々、買い取り価格の水準も引き下げられ、収益を見込みにくくなってくる。
帝国データバンクの調べでは、太陽光を含めた再エネ発電事業者の24年度の倒産、休廃業・解散件数は過去最多の52件にのぼった。再エネ需要は高まる見通しのはずが「コストが見通しにくく企業に利益が出るかが不透明」(担当者)だという。事業者の淘汰(とうた)が進めば、その過程でパネルの放棄が増加する恐れもあるなど課題が山積している。(織田淳嗣)
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