( 299878 ) 2025/06/17 05:22:51 0 00 日本のコメ流通の仕組みはどうなっているのか(小泉進次郎・農水相/時事通信フォト)
6月5日、小泉進次郎・農水相は衆院農林水産委員会で「社名は言わないが、ある大手卸の営業利益は対前年比500%くらい」と答弁。コメ高騰の理由が「大手卸」の得た利益にあると受け取れるような発言だった。
「進次郎氏はコメの流通について自身のもとに『極めて複雑怪奇』などの声が寄せられているとし、その状況を『可視化させたい』と意欲を見せました」(政治部記者)
「利益500%発言」を受け、ネット上にはコメの卸業者を批判する書き込みが殺到。“犯人捜し”も進み、上場企業として決算が公表されている大手卸の2社である「ヤマタネ」と「木徳神糧(きとくしんりょう)」が槍玉にあげられて“炎上”する事態となった。
2社の決算資料を見ると、確かに直近は売上高・営業利益ともに大きく伸びている。ヤマタネは、2025年3月期決算のコメを含む「食品部門」の売上高が前年比145%となる495億8600万円、営業利益は同369%となる23億5100万円だった。
木徳神糧も2025年12月期第1四半期(1~3月)決算によると、「米穀事業」の売上高は前年同期比127%となる311億6200万円、営業利益が同487%となる19億2900万円。両社とも進次郎氏の言う「営業利益は前年比500%」に近い大幅な増益だ。
帝国データバンクによると、コメの卸業者は全国に1822社あり、売上規模5億円未満の小規模業者が7割と圧倒的多数を占める。進次郎氏の「利益500%」発言により、その業界全体にまで疑惑の目が向けられつつある状況だ。
進次郎氏が“複雑怪奇”と称したコメ流通の仕組みについて、農業経営学が専門の大泉一貫・宮城大名誉教授が解説する。
「小売や卸、消費者に直接販売する農家を除き、コメは農協に代表される集荷業者がまず買い取り、その大半が卸業者に販売されます。卸業者はスーパーなどの小売店に販売するほか、コンビニなどの中食や外食事業者に販売し、消費者に届く仕組みです」
そのうえで今回、米価が高騰した原因について、大泉氏はこう見る。
「コメ不足が顕在化してきた2023年産米を契機に、コメ買い取りに多様な業者が参入し、農協との間で“買い取り価格の競争”がまず起きました。その後、卸業者同士が在庫を融通し合う『卸間売買』のスポット取引市場でも急騰した。卸業者の利益が増えたのは、単純に米価が上がったから。ヤマタネと木徳神糧は上場していて決算情報の透明性が高いわけですが、それにより2社に注目が集まってしまった。
そもそもコメ不足は農水省による『生産調整』によって供給をコントロールしてきた結果でもあるはずです」
関連記事《【なぜコメ価格は高騰したのか】小泉進次郎・農水相に「利益500%」とやり玉に挙げられたコメ卸業者社員の本音「悪者がいると印象付けたいのか…」困惑する声に進次郎氏の回答は》では進次郎氏の発言でやり玉に挙がった大手卸業者2社の見解と、そうした声に対する進次郎氏の事務所の回答を紹介している。
※週刊ポスト2025年6月27日・7月4日号
|
![]() |