( 299923 )  2025/06/17 06:13:02  
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中国のオンライン中古車仲介サイトには、登録済みで走行距離100キロ以下の新古車が大量に出品されている(写真は大手中古車サイト「懂車帝」のウェブサイトより) 

 

 中国の自動車業界で「零公里二手車(走行距離ゼロの中古車)」と呼ばれる“新古車”の増加が議論を呼んでいる。中国商務省は先日、自動車メーカー2社、(新車ディーラーを経営する)自動車販売会社2社、オンライン中古車仲介業者2社などの担当者を集めて会議を開き、零公里二手車の流通の実態について聞き取り調査を行った。 

 

 この会議に呼び出された自動車メーカー2社は、国有大手の東風汽車集団とEV(電気自動車)最大手の比亜迪(BYD)だった。財新記者の取材に応じた関係者によれば、商務省の意図は両社を名指しで批判したり指導したりすることではなく、メーカーとしての一般的な見解を聴取することにあったという。 

 

■長城汽車のトップが警鐘 

 

 零公里二手車の問題の表面化は、民営中堅メーカーの長城汽車(グレートウォール)の董事長(会長に相当)を務める魏建軍氏の発言がきっかけになった。 

 

 「自動車業界では今、零公里二手車(の増加)という怪現象が起きている。中古車のオンライン仲介サイトに、登録済みの新車が中古車として(大量に)出回っている」 

 

 魏氏は5月23日、メディアの取材を受けた際にそう述べ、零公里二手車が自動車市場の秩序を乱し、(自動車メーカーが発表する)新車販売台数のデータの信頼性を損なうことに危機感をにじませた。 

 

 「零公里二手車はずっと前から存在しており、その裏には自動車メーカーの過剰生産体質がある」。中古車の流通に詳しい専門家の王萌氏は、財新記者の取材に対してそう述べた。王氏の推計によれば、2024年に中国の国内市場で取引された零公里二手車は40万〜60万台に上るという。 

 

 ある外資系自動車メーカーの販売部門の社員によれば、零公里二手車を中古車市場に主に供給しているのは新車ディーラーだ。 

 

 自動車メーカーはディーラーに対して、販売台数や目標達成度などに応じたさまざまなインセンティブを提供している。そのためディーラーは、インセンティブを獲得する(ことで総合的な仕入れコストを引き下げる)ために実際には販売していない新車を自社登録し、中古車市場に流しているという。 

 

 

■海外への輸出も急拡大 

 

 零公里二手車が流通しているのは国内の中古車市場だけではない。もう1つの流通ルートとして急拡大しているのが中国国外への輸出だ。 

 

 中でもロシア向けの輸出が顕著に増加している。ロシアが2022年2月にウクライナ侵攻を開始して以降、西側の自動車メーカーがロシアから相次いで撤退したため、市場に供給の空白が生じた。中国の貿易業者はこの商機を見逃さず、(国内でさばききれない)零公里二手車の輸出に乗り出したためだ。 

 

 業界団体のデータによれば、中国の中古車輸出台数は2022年の6万9000台から、2023年は27万5000台、2024年は43万6000台へと、わずか2年で6倍以上に急増した。その中には零公里二手車のロシア向け輸出が多数含まれていたとみられている。 

 

 (財新記者:余聡) 

※原文の配信は5月30日 

 

財新 Biz&Tech 

 

 

 
 

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