( 300158 ) 2025/06/18 05:44:59 0 00 記者会見する日本郵便の千田哲也社長=17日、東京都千代田区(松井英幸撮影)
日本郵便の千田哲也社長は17日、配達員の酒気帯びを確認する法定点呼を適切に実施していなかった問題で、国土交通省の行政処分を受け入れるとともに、外部委託などを通じ、顧客への影響を最小限に抑えたい考えを示した。だが、お中元などの輸送需要が増える繁忙期の大量委託は、人手不足で逼迫する物流網に追い打ちをかけかねない。経営への打撃も大きく、企業風土の抜本的な見直しが急務になる。
「ドライバー不足に対して物流業界全体で血のにじむような努力をする中で、こんな事態を起こし、業界の一員として恥ずかしい」
千田氏は17日の記者会見で陳謝した。
処分が科されれば日本郵便は、大口客からの集荷や集配局間の輸送を担うトラックなど約2500台が5年間使えなくなる。
月間の輸送便数は11万8200便に及んでおり、このうち約3割は佐川急便やヤマト運輸などの同業他社に委託する方向で協議を進めている。料金や送達速度などのサービスも維持する考えだ。残りは自社の軽トラック3万2000台などで対応する。
日本郵便はヤマト運輸に対し、協業を巡るトラブルで損害賠償請求訴訟を起こし係争中だ。千田氏は「裁判は裁判として主張を展開する」としつつ、「(ヤマト運輸が外部委託に)協力いただけるのであればお願いしなくては」と語った。ヤマト運輸も「物流に混乱をきたさないようできる限り対応したい」とコメントしており、前向きな姿勢を示す。
もっとも、外部委託にかかる費用は日本郵便の経営を圧迫する。千田氏は「現時点では影響は見通せない」として、今年度を最終年度とする中期経営計画は見直さない考えを示した。
今回、行政処分の原因となった不適切点呼に関しては、かなり前から行われていた可能性が指摘されている。千田氏は2007年の郵政民営化後の時期を挙げ、「あまりちゃんとした形でなされていなかった可能性が否定できない」と推測した。今後、配達員らの意識改革や点呼状態を一元管理できるデジタル化などを進めるとしているが、信頼回復は容易ではない。(織田淳嗣)
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