( 300163 ) 2025/06/18 05:50:44 0 00 国内のエアコン製造拠点であるダイキンの滋賀製作所(記者撮影)
「もっと収益性を重視して、ROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)の注目度を上げなければ、海外投資家の『ダイキン離れ』が起きるでしょう」
5月の決算説明会で外資系証券のアナリストから飛び出した不吉な予言が現実になりつつある。
ダイキン工業の株価が5年ぶりの安値水準に沈んでいる。6月12日の終値は1万6485円。2023年7月に3万1330円の上場来高値を付けてから株価は下落基調に転じ、今年4月には一時1万5000円の節目を割り込む場面もあった。最高値から見れば、ほぼ半値の水準で推移している。
主な要因は、業績の停滞にある。前2024年度の営業利益は前年同期比2.4%増の4016億円となり、会社計画の4280億円を下回って着地。前期実績には為替によるプラスの影響が約130億円含まれており、これを除けば実質的には営業減益となる。
■中計目標に大幅未達
会社側は今2025年度の営業利益を同8.3%増の4350億円と見込む。2023年にダイキンが公表した中期経営計画で掲げた、2025年度の営業利益目標5000億円には大幅な未達となる見通しだ。
一部のアナリストは、2025年度の会社計画も達成は難しいと見ている。ゴールドマンサックス証券の諌山裕一郎アナリストは「どうにかして増益を保つ1年になる」との見方を示した上で、営業利益予想を4100億円としたリポートを発表している。
ダイキンの竹中直文社長は中計目標について「定量目標には到達できなかったが、当初の需要前提からの変化をのぞけば実質的に達成する」と弁明している。しかし市場の反応を見れば、社長の説明を額面どおりに受け取った株主が少なかったのは明らかだ。
国内の大手メーカーが業績不振に沈む中で、ダイキンの成長を支えてきたのは海外市場での成功だった。近年ではアメリカも大きな市場に育っている。2012年に現地同業のグッドマンを約3000億円で買収。住宅用のエアコンでトップシェアのグッドマンをテコに、「北米空調ナンバーワン」という目標を掲げた。
毎年10%を超える高い成長率を誇ってきた海外市場だが、足元では異常を来している。2025年度見通しでは、売上高の成長率で10%を超える市場がない。為替の影響を除いたベースでは米州がプラス13%、アジアがプラス10%となるが、過去と比べると物足りない水準だ。
■竹中社長が引き継いだ“宿題”
これまでダイキンは日本経済の「失われた30年」と言われた1990年代から2020年代にかけて、売上高を大幅に伸ばしてきた。
2代前の社長で、現在は名誉会長兼グローバルグループ代表の井上礼之氏が決断した中国市場への本格進出で、先行していたほかの日本メーカーをも押しのけて成功。外国人を含めた投資家から高く評価されてきた。
15年近く前から、ダイキンはエアコンを作って売るという「もの売り」のビジネスだけではなく、継続的な収益につながる「ソリューション」を中心としたビジネスを強化する方針を打ち出している。当時のCEOは井上名誉会長だった。
その井上氏は2024年6月の定時株主総会をもって取締役を退任。役員在任期間にして40年超の長期政権に区切りを付けた。カリスマが第一線から退くのと同時に、社長に就任したのが竹中直文現社長である。
カリスマが去ったダイキンはアメリカで失地回復を成し遂げ、市場からの信頼を回復できるのか。就任から1年が経過した竹中社長は、井上名誉会長の残した“宿題”に向き合っている。
海外市場での成長率変化や、アメリカ市場でシェアが低下した背景事情などについて触れた本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「ダイキン「カリスマ退任」から1年で迎えた正念場、有望アメリカ市場で大誤算→株価は5年ぶり安値圏で新社長が向き合う“15年来の宿題”」でご覧いただけます。
梅垣 勇人 :東洋経済 記者
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