( 300198 ) 2025/06/18 06:30:26 0 00 コメ高騰の”真実”
農水省が発表したスーパーでのコメの平均販売価格は、5kgあたり4000円台。依然、高止まりが続いていますが、なぜコメの価格が高騰しているのか。コメ流通評論家の常本泰志氏が解説します。
主食用コメの生産量・需要量の推移(農水省)
コメ(主食用)の生産量・需要量の推移のグラフです。2023、2024年をみると、需要に生産が追いついていないのがわかります。
常本氏:2024年の推定需要量は約682万tでした。しかし実際は約705万tで、20万t以上見誤ったことになります。ちょうど2024年夏に、スーパーからコメがなくなったと思いますが、その理由の説明として、これが一番正しいのかなと思います。
(Qなぜ、見誤った?) 常本氏:コロナ禍では、需要より生産が上回っていたことがなど挙げられます。しかしコロナ禍以降、家庭内消費が増えているので、「需要量が底を打った」ということになります。
小泉大臣は16日、作況指数の公表を廃止すると明らかにしました。
農水省によると、2024年産のコメの収穫量は約679万t(前年比+約18万t)、その年の生育状況などを表す作況指数は101と平年並みでした。しかし、多くの農家から「穫れている実感ない」という声があり、認識にズレがありました。
こうした農家からの声を受け、小泉大臣は16日、作況指数の公表を廃止すると明らかにしました。また、「収穫量調査でのふるい目の変更」「人工衛星や人工知能の活用」「生産者からの収穫量データを主体とする調査」など見直しを行うとしました。
常本氏:私は産地に行く人間なので、農家から直接、生産者量についての話を聞くのですが、ここ10年、数字が当ってたことはないと思います。それぐらいコメが余っていたわけです。
価格高騰には複合的な要因が
去年夏、小売業者に店頭にコメがないという状況になり、卸売業者に対して小売り業者が仕入れを強く要望しました。すると、卸売業者はコメ農家と直接契約をするようになりました。つまり、通常のルートよりも高値で交渉が成立するようになったことが、コメ高騰の原因の1つとなりました。
また、卸売業者に直接コメが流れた結果、JAに入ってくるコメの量が大幅に減ってしまったことも、高騰の要因に挙げられます。
「どちらの大臣もやり方を間違えていた」と常本氏
今年1月時点で約91万tあった政府備蓄米。23年産から放出し、残りは約10万tという状況になっていますが、常本氏は「本来なら古いものから放出すべきだった」と指摘します。
常本氏:倉庫では通常、先に入れたものほど、先に出るように保管します。つまり今回、一番奥にあるものから出した。それにより”流通のロス”が出ました。また、輸送面でも問題がありました。初回31万tのうち、最初に21万t出てますけど、トラックが延べ台数で約2万台。このトラック確保や、先ほどの挙げた倉庫からの積み込みの問題もあり、流通するのが遅くなりました。
常本氏:もう一点、小泉大臣が就任してからは、随意契約で小売業者に放出しました。確かに迅速でよかったですが、全体のコメ価格を下げるのだったら、卸売も買える状態にして23年産と混ぜた方が平均的に下がったんじゃないか。また、古いコメに関しては、カビの問題などいろいろ出てきてます。その辺もをみても、専門業者が処理する方が妥当だったのかなと思います。
「ミニマムアクセス米」入札を前倒しすると小泉大臣が明らかに
また、小泉大臣は、政府が関税ゼロで輸入している「ミニマムアクセス米」の入札を前倒しすると明らかにしています。主食用については例年9月ごろに入札、12月ごろ引き渡されます。それを早め、今回は今月27日に入札を実施(3万t予定)、9月下旬に引き渡す見込みです。
これに対し、常本氏は「新米収穫で数量が増えるタイミングに、わざわざ輸入する必要があるとは思えない」と指摘します。
常本氏:関税がかからず国内産より安いミニマムアクセス米が増えると、供給過多になった時に、国内産の価格が下がりすぎてしまうリスクがあります。新米の状況を見てから判断しても、よかったんじゃないか。消費者の皆さんには、ちょっとの間、我慢していただけたらと思います。
常本氏は大きく2つ提言します。
では、今後どうやってコメ価格を下げていくべきか。常本氏は大きく2つ提言します。
1、輸入に頼る ミニマムアクセス米に対し、関税が1kgあたり341円かかる民間輸入米。この民間輸入米を徐々に増やしていけば、国内産の価格は緩やかに下がり、5年以内にスーパーで特売価格5kg2980円(一般的なコシヒカリ)になるとしています。
2、増産する(増産したいが難しい) 上記の「5kg2980円」より安くしたいのであれば、政府が農家に所得補償をするべきと常本氏は主張します。
コメ流通評論家・常本泰志氏
常本氏:アメリカでは農家の所得の40%以上、今年の場合は60%が補助金です。一方の日本は27%ぐらいです。コメの価格が下がった場合、十分な補償が必要です。ただ、30年安かったんで、誰にも継がせられないという農家が大半です。コメ農家の平均年齢は約70歳。若い人に農業やってもらうため、新規就農の補助金の枠をどう増やすか。例えば大きい農家さんに就職してもらう形で給与を保障するなどの策が必要です。
(『newsおかえり』2025年6月16日放送分より)
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