( 300398 )  2025/06/19 04:24:04  
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参院選への出馬が取りざたされる蓮舫氏 

 

〈長く充電してたから、久しぶりの街頭演説だったよ。〉 

 

 東京都議選の立憲民主党候補の応援のため6月13日、久々に街頭に姿を見せたのは元参院議員の蓮舫氏。昨年の東京都知事選に出馬して3位と惨敗を喫してから、自身のインスタに記した冒頭の言葉のように、長い「充電」期間に入っていた。充電を終え、都議選での応援演説だけでなく、7月20日投開票の参院選で、立憲民主の全国比例区候補として出馬することが取りざたされている。 

 

 野田佳彦代表ら執行部と近く知名度が高い蓮舫氏は、以前から参院選比例区の“目玉”として名前があがっていた。蓮舫氏を推す立憲の国会議員A氏は「待望論」を口にする。 

 

「蓮舫氏が都議選の立憲の候補者のところによく演説にいっているのは、参院選への肩慣らしともいわれています。親しい野田氏が代表ですし、本人は参院選に出る覚悟と聞いている。昨年の東京都知事選では大敗したが、都議選の演説を見てもわかるようにまだまだ人気はある。蓮舫氏が比例区で出馬すれば、大量得票が期待できます」 

 

■「蓮舫ショック」になったら党全体にかかわる 

 

 しかし、立憲内部では蓮舫氏の出馬に反対意見も少なくない。とくに国民民主党が比例区で山尾志桜里氏を公認して支持率が低下したことを目の当たりにした立憲の参院議員からは、こんな声が出ている。 

 

「山尾ショックの二の舞が心配だ。『蓮舫ショック』になったら党全体の勢いにかかわる」 

 

 国民民主が山尾氏の公認を検討していることが報じられてから、SNSで批判の声が炎上。それでも玉木雄一郎代表が主導して山尾氏の公認内定を決定すると、それまで上昇傾向だった国民民主の支持率は急落した。山尾氏は記者会見をしたが、そこで過去の不倫騒動などについて具体的な説明をしなかったことが響き、さらに批判を浴びる。国民民主は会見翌日に山尾氏の公認を取り消したが、一方的な公認取り消しに山尾氏は反発。党執行部への批判の声も高まり、ゴタゴタは今も続いている。 

 

 6月14、15日に朝日新聞社が実施した世論調査では、前回調査で「野党トップ」の支持率だった国民民主党の支持率は10%(前回13%)に下がり、野党トップの座を立憲民主党12%(前回13%)に明け渡した。「山尾ショック」が国民民主にダメージを与え続けている。 

 

 

■「蓮舫氏と山尾氏は同様の存在に映る」 

 

 この事態を他人事ではないと受け止めたのが立憲で参院選を控える議員たち。蓮舫氏もSNSで炎上することが珍しくないゆえに、出馬となれば「山尾ショック」のように党全体の支持率が低下するのではないかと懸念する声が高まっている。 

 

 蓮舫氏は昨年の都知事選で小池百合子知事に勝てる候補と期待されて立候補したものの、石丸伸二氏にも敗れる3位に沈んだことは記憶に新しい。毎日新聞(6月11日付)は、5月下旬に立憲の大串博志代表代行が水岡俊一参院会長と面会し、蓮舫氏擁立を話し合ったが、水岡氏が「どういう影響があるか考えてほしい」と難色を示したと報じている。 

 

 蓮舫氏を推すA氏は、蓮舫氏の出馬で比例票の底上げが期待できると話す。 

 

「辻元清美氏のように、蓮舫氏の出馬で大量得票が期待できる」 

 

 2021年10月の衆院選で立憲副代表だった辻元氏は、維新の勢いに押されて落選。辻元氏は翌22年7月の参院選に比例代表で出馬し、党内トップ、全体でも3位の42万票あまりを獲得して当選している。 

 

 だが、これに対し、 

 

「辻元氏は大量得票だったが、党の獲得議席に反映したかといえば違うのではないか」 

 

 と反論するのは蓮舫氏の擁立に反対する立憲の参院議員B氏。大手労組が支援組織の議員だ。 

 

 2019年参院選で立憲は、比例区で政党名の得票は約669万票で8議席を獲得。辻元氏が比例区で立候補した2022年の参院選では政党名の得票は約520万票で7議席獲得と1議席少なかった。 

 

 B氏はこう話す。 

 

「投票率も違う2つの参院選を一概に比較できないことはわかっている。ただ、労働組合など組織の支援をバックにしている候補者は、個人名での得票には限界がある。蓮舫氏が出馬して、辻元氏同様に個人名でガサっと票をとってしまえば、組織がバックの候補者にはきついものがある。それに何かと炎上する材料がある蓮舫氏は山尾氏と同様の存在に映る。蓮舫氏が出馬して比例の政党票が伸ばせればいいが、SNSで炎上して減らす可能性だってかなりある。事実、都知事選でも蓮舫氏はSNSで何度も炎上し、SNSで急上昇した石丸氏と明暗を分けた。蓮舫氏の出馬は党勢全体にかかわるので反対だ」 

 

 

■自民もSNSの反応見て候補者変更? 

 

 立憲だけでなく、いまや各政党がSNSの反応に神経をとがらせている。 

 

 自民党は参院選で東京都選挙区の2人目の候補者をまだ公表していない。オリンピック競泳の金メダリストで初代スポーツ庁長官の鈴木大地氏が有力視されているが、その前には女性の社会活動家が「内定」という報道があった。自民党幹部がこう話す。 

 

「女性の名前が出たとたん、SNSで炎上したのですぐに取り下げた。党で想定した以上にSNSは敏感に反応します。『山尾ショック』に見るように炎上するとそう簡単に収まらず、支持率下落に歯止めがきかない。うちはすぐ取り下げてダメージは最小限におさえることができた」 

 

 自民党で長く政務調査役を務めた、政治評論家の田村重信氏はこう話す。 

 

「山尾氏と蓮舫氏は女性のやり手で、弁舌も鋭く、どちらかというと攻撃にまわっているときは強いが、守りに弱いという共通点がある。『山尾ショック』があったばかりで、立憲の中で意見が割れるのは当然でしょう。SNSが炎上すれば、政党の支持率を下落させるまでに影響が大きくなっている。各党が慎重になるのもよくわかります。しかし自民党から見ると、蓮舫氏は山尾氏のような不倫やガソリン代不正請求というスキャンダルはない。大臣も経験しているので安定感があり、出馬すれば脅威でしょう」 

 

(編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

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