( 300778 ) 2025/06/20 06:03:33 0 00 コメの不足や価格高騰を巡り、業界に特有といわれる流通経路が背景として指摘されている。小泉農相は複雑で多重的な構造を「ブラックボックス」と呼んで実態解明と改善に腰を上げたが、コメ騒動の沈静化につながるかは不透明感も残る。(田辺研吾)
店頭に並び始めた備蓄米(島根県出雲市で=小松夕夏撮影)
小泉氏は15日、福島県内でコメ農家らと意見交換を行い、「他のものと比べてもコメの流通は複雑だ。流通の構造で見えていないものがあるのも事実」と述べた。
農家が水田で生産・収穫したコメは、玄米の状態でJAを中心とした集荷業者が回収する。次に卸業者に引き渡され、専用の機械を使って精米作業が行われた後、スーパーなどの小売業者に配送されて店頭に並び、消費者の手に渡る。
卸業者は問屋、または中間業者とも呼ばれ、精米のほかに袋詰めや配送などの役割も担う。小売店に売り渡されるまでに複数の卸業者を経由するケースがあるとみられ、問屋を経るごとに中間マージンが課され、最終的な店頭価格に転嫁されているとの見方もある。
5月下旬、ディスカウント店「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、コメの流通は「5次」問屋なども存在する重層構造にあるとする意見書を出した。集荷業者にあたるJAと直接取引する1次問屋に比べ、2次、3次などの問屋は参入障壁が低いと主張する。今回のコメ騒動のように需給バランスが崩れると、円滑な流通に協力するのではなく利益を優先する業者が横行してくるとの見解も示した。
政府はコメ価格の安定に向け、今年3月以降、一般競争入札で備蓄米約31万トンを市場に放出したが、卸業者(問屋)に渡ったのは11・8万トン(5月下旬時点)にとどまった。小売業者や外食・中食業者に届いたのは6・4万トンだった。精米能力が限られたことなどから、多くが集荷業者や卸業者で滞留した模様だ。
一方、5月下旬に始まった随意契約による備蓄米の売り渡しでは、放出開始から1週間前後となる5月末には、精米を済ませて店頭に並んだ。JAや卸業者を通さず、小売業者に直接渡したことが迅速な流通につながった。
コメの流通に対する見解
高騰の一因とも指摘されている卸業者側は、反論している。大手の一つ、木徳神糧(東京都)の鎌田慶彦社長は今月11日、「市場価格をつり上げたり、買い占めや出し惜しみによって流通を阻害したりした事実は一切ない」との声明を公表した。
関係者によると、通常、小売業者は1次問屋から仕入れるケースが多く、2次や3次の問屋が関わるのは遠隔地の店舗と取引したり、流通量の少ない銘柄米を売買したりする例外的なケースに限られるという。ある卸業者は「産地間でコメを融通することはあるが、『5次問屋』は聞いたことがない」と首をかしげる。
小泉氏は17日、コメの集荷や卸、販売を担う全国の7万事業者を対象に流通・在庫状況の報告を求める初めての調査を行う方針を表明した。流通構造を解明してコメ価格高騰の要因を検証する狙いとみられる。
流通経済研究所の折笠俊輔・主席研究員は「これまでは安く販売して農家や卸にしわ寄せが来ていた面もある。政府は実態を把握した上で、その先に何をするのかを明らかにする必要がある」と指摘している。
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