( 300905 )  2025/06/21 03:26:39  
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「勝訴」と掲げる上脇博之(ひろし)・神戸学院大教授(中央)。「(提訴から)4年もかかったことが問題だ」=2025年6月5日午後1時24分、大阪市北区、遠藤美波撮影 

 

 新型コロナ対策で2020年に安倍晋三首相(当時)が各戸配布を主導した通称「アベノマスク」について上脇博之(ひろし)・神戸学院大教授(憲法)が契約過程を示す文書の開示を求めた訴訟で、国の不開示決定を取り消して国家賠償を命じた大阪地裁判決が確定した。19日の期限までに国側が控訴しなかった。 

 

 今後、国は地裁の指摘を踏まえて改めて文書を開示するか判断することになる。上脇教授は20日に記者会見し、「訴訟の過程で文書の特定はできているはずだ。一日も早く開示に向けた手続きを進め、国民の知る権利に真摯(しんし)に応える姿勢を見せてほしい」と訴えた。 

 

 国が400億円超をかけて調達した約3億枚の布マスクは、約8300万枚が在庫になり、国会などで「税金の無駄遣い」と指摘された。 

 

 上脇教授の開示請求に対し、国は契約過程に関する文書は「不存在」としたが、5日の地裁判決は、交渉を進めるのにメールや報告書が「1通も作られなかったとは考えがたい」と指摘。打ち合わせ記録などを不開示としたのは違法とし、上脇教授に問い合わせずに開示請求の範囲を狭めるなどした国の姿勢を問題視して、賠償も命じた。 

 

 上脇教授と弁護団は20日付で国に申入書を送った。今回の対応の妥当性に関する調査と説明、特に重要施策での文書保存や情報公開請求への対応改善、アベノマスク事業の検証――を求めた。 

 

 徳井義幸弁護士は「(国民の知る権利に資するという)公文書管理法の趣旨をないがしろにする国の対応について、裁判官も許せんと断じた。重く受け止めるべきだ」と語った。厚生労働省は「判決の趣旨を踏まえて適切に対応したい」とコメントした。(大滝哲彰) 

 

朝日新聞社 

 

 

 
 

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