( 301090 ) 2025/06/21 06:54:09 0 00 画像はイメージです(Graphs / PIXTA)
共同で大量に購入した馬券などで得た所得を隠し、約2億6200万円を脱税したとして、50代の男性と70代の男性が東京国税局に刑事告発されたと報じられ、話題となっている。
報道によると、男性2人は、知人が開発した馬券購入システムを利用して、主に大半の競馬レースの馬券を機械的に大量購入。多い時には1カ月で約20億円分の馬券を購入していたという。
多額の配当金を得ていたようだが、一切税務申告していなかったとみられ、2人は2021年までの2年間にあわせて約6億1000万円の所得を隠し、所得税約2億6000万円を脱税した疑いがある。すでに修正申告と納税を済ませているという。
トータルで勝つのは容易でないとされる競馬で驚きの稼ぎっぷりだが、そもそも馬券で得た利益は課税の対象なのだろうか。また、大量購入していた馬券は「経費」に当たらないのだろうか。門田睦美税理士に聞いた。
●「一時所得」か「雑所得」か
──馬券で得た利益は課税の対象なのでしょうか。
馬券で得た一定の利益は課税対象になります。個人の得た利益は分離課税(土地建物または投資に関する所得)以外は総合課税所得となり、10種類の所得に区分されています。
馬券収入は基本的には「一時所得」となります。窓口で購入した馬券はまさに当該課税を受けることになります。一時所得は、10種類に区分される所得の一つです。
ただし、例外的に「雑所得」となる場合があります。それは、システムを通じて継続して購入する場合などで一定の条件に該当する場合です。雑所得は、10種類に区分される所得に該当せず継続的に利益を獲得すると判断されたものとされています。
払戻金が一時所得と雑所得のいずれに該当するかにより、はずれ馬券の購入費用が必要経費として控除できるかが異なります。
一時所得の課税方法は、「総収入金額(払戻金)ー支出金額(当該当選馬券購入費用)ー特別控除額(50万円、他に一時所得に該当する所得がない場合)」です。
雑所得の課税方法は、「総収入金額(払戻金)ー必要経費(はずれ馬券を含む馬券購入費用)」です。
●趣味や娯楽で購入したはずれ馬券「まず経費にならない」
──「雑所得」となる場合とは具体的にどのようなケースなのでしょうか。
一時所得になるケースでは「当該当たり馬券のみ」が購入費用になり、雑所得に該当する場合には当該年度において購入した馬券の金額は必要経費になりますが、課税当局が一時所得と認定したものの、結果的には雑所得を認めた判例があります。
これらを受けて、国税局はパブリックコメントを経て、所得税基本通達34-1(一時所得の例示)を改正しました。以下の改正後の内容に当てはまる場合は「雑所得」となります。
「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して定めた独自の条件設定と計算式に基づき、又は予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターンに従って、偶然性の影響を減殺するために、年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入するなど、年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら多数の馬券を購入し続けることにより、年間を通じての収支で多額の利益を上げ、これらの事実により、回収率が馬券の当該購入行為の期間総体として100%を超えるように馬券を購入し続けてきたことが客観的に明らかな場合」
改正前は、ソフトウエアを利用し独自の条件設定と計算式に基づきインターネットを通じて長期間にわたり多数回かつ頻繁に馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして多額の利益を恒常的に上げること等が「雑所得」となる要件でした。
改正後はよりハードルがあがり、年間通じてほぼ全てのレースの馬券を購入し利益を得るようにすることを求めています。
また、同通達では、馬券の購入費用全額が「雑所得」となるには、営利的な行為でなければならないこととされており、趣味や娯楽の範囲で購入した当たり馬券の利益は「雑所得」には該当しないことを定めたものになると考えます。
これにより、はずれ馬券が費用になることはまず考えにくいこととなります。
●脱税に注意!?馬券配当が「年間合計50万円超」で課税対象
──このほか、馬券購入に関する税法上の留意点は何かありますか。
実際払い戻し配当を受けた方は年間で合計50万円を超えると一時所得として課税を受けることになりますが、実際に申告されている方は少ないとの情報があります。
つまり、ほとんどの方は、気がつかないうちに申告漏れ(脱税)を犯しているといえます。背景には、購入の際に本人確認をしていないため払戻金についての情報を取りにくいことがあると思われます。
ただし、例えば当該多額の配当金を預金口座に入金する、昨今では、SNSで情報提供をされているケースについては情報を容易に入手されること、また場外馬券売場に行かなくともネット上で馬券購入できる「即PAT」のようなシステムがあり、利用すると購入履歴や配当履歴が残ることになるのでこちらも情報の入手を容易にできるといえます。
当たり馬券の配当については前述したようにはずれた際には所得計算に反映されないため理不尽であるともいえますが、当局に判明するか否かではなく、脱税をしないために、申告要件に該当しない「50万円以下(他の一時所得がない場合)」をメルクマーク(指標)とされることをお勧めします。
【取材協力税理士】 門田 睦美(かどた・むつみ)税理士 ワンストップで処理することが可能で、手続きごとに依頼を選ぶことの煩わしさが生じません。また、英語も堪能で国際税務所の経験より国際税務にも知識があります。報酬は、価格表によること、リモートスタッフの利用により安価に管理されリーズナブルになっています。 事務所名:門田睦美税理士・社労士事務所 事務所URL:https://kadotaltasroffice-lp.com/
弁護士ドットコムニュース編集部
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