( 301615 )  2025/06/23 06:00:04  
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 これから先、ガソリン価格はどうなるのでしょうか。 

  

 中東情勢が緊迫する中、原油価格が上昇する可能性があります。 

 

 一方で、野党がいわゆるガソリン税に対して「来月(7月)からの暫定税率廃止」を求めて、国会に法案を提出しました。 

 

 衆議院では野党による賛成多数で可決され、続く参議院の財政金融委員会で審議されたものの同委員会が散会。採決は見送られ、同法案は廃案になってしまいました。 

 

“ガソリン減税”法案が廃案に…どうにかしてくれよ…! 動向気になる「ガソリン減税」(画像はイメージ) 

 

 いったい、ガソリン価格はこれから上がるのか、それとも一気に下がるのか。 

 

 ユーザーにとっては分かりにくい状況にあります。 

 

 そうした中、石破茂首相は6月19日、ガソリン価格の変動が国民生活に影響を及ぼさないように配慮するとの姿勢を、改めて示しています。 

 

 価格についてですが「ロシアのウクライナ侵攻前後の水準となっている現在の水準」という表現です。 

 

 そこから大きく上昇させないよう努力するとのことです。 

 

 では、「現在の水準」とはいくらなのでしょうか。 

 

 経済産業省・資源エネルギー庁が、石破首相がコメントした前日に公表したレギュラーの調査価格は172.1円/L。 

 

 また、ロシアのウクライナ侵攻の前後からの推移を振り返ってみますと、概ね170円〜175円/Lの間で推移しています。 

 

 よって、仮に中東情勢が悪化して原油価格が上昇したとしても、ガソリン価格は170円台/Lで収まることを、政府は確約したことになります。 

 

 その仕組みですが、「燃料油元売り」と呼ばれる石油精製業者や石油輸入業者に対して、国が補助金を出すというもの。 

 

 これにより、燃料油元売りからガソリンスタンドやホームセンター等の燃料油販売業者への卸売り価格が抑制されるという流れです。 

 

 ただし、この仕組みはこの数年で何度の変更が加わっています。 

 ユーザーにとっては、この仕組みがどうであれ、ガソリン小売価格が下がればよいので、詳しいプロセスを知る必要はないかもしれません。 

 

 ですが、ここへきてユーザーとしても気がかりなことが出てきました。 

 

 この仕組みが導入されたのは、2022年1月。 

 

 施策の名称は、「燃料油価格激変緩和対策事業」です。 

 

 当初は、基準価格と高補助率発動価格を設定して、補助率を決めていましたが、2025年1月からは、これらを新基準価格で一本化しました。 

 

 そう聞いてもピンとこない人が少なくないでしょう。 

 

 具体的な補助額でみると、2022年6~7月のレギュラーガソリン価格は補助金なしの場合、210円台半ば/Lに達しており、ここに41.9円を投じて170円台/Lに調整していました。 

 

 2024年7月も200円/L超えのところを32.3円抑制。年後半は190円台/L円台前半に対して15.7円補助で、175円/L程度を維持。 

 

 こうした仕組みが、2025年5月22日に変わりました。 

 

 施策の名称は「燃料油価格定額引下げ措置」です。ガソリンと軽油で10円/L、灯油・重油では5円/Lという定額です。 

 

 仕組みが変わった背景に、「暫定税率」の議論があります。 

 

 資源エネルギー庁は「当面、当分の間税率(以下、旧暫定税率という)の扱いについて結論を得て実施するまでの間、足元の物価高にも対応する観点から、現行の燃料油価格激変緩和対策事業を組み直し、定額の価格引下げ措置を実施する」と公表しました。 

 

 つまり、原油価格の変動があるていど落ち着いた中で、与野党間での「暫定税率」に関する議論が高まっていることを考慮した、ということです。 

 

 

 そもそも、ガソリン税の暫定税率は1974年に道路整備の財源、およびオイルショックによる原油価格高騰を補う一時的な措置でした。 

 

 しかし、その後も道路整備の維持などを目的として継続されているのが実情です。ガソリンの暫定税率は25.1円/L。 

 

 暫定税率廃止に向けては、与野党間で基本的な合意があるものの、廃止後の財源確保等や廃止の時期などについては意見が分かれている状況です。 

  

 また、自動車の税金については、性能環境割、自動車税、自動車重量税について抜本的な見直しが2026年4月以降に実施される見込みで、それに向けて与野党や自動車業界での議論が高まっているところです。 

 

 本来、ガソリン税も含めて、自動車に関わる税金のあり方全体を適正化するべきですが、足元での物価高を受けて、ユーザー視点では「まず暫定税率廃止でガソリン価格が下がってほしい」と思うのは当然でしょう。 

 

 そこで、まずは「定額10円/L引下げ」という方法をとったというわけです。 

 

 ところが、その仕組みが始まって1ヶ月もしないうちに、中東情勢が緊迫し原油価格高騰の危険性が高まり、前述のような実質170円台/Lていどを維持するという、補助事業に転換せざるを得なくなったのです。 

 

 要するに、ガソリン価格の最大要因として、日本が海外からの輸入に頼っている原油価格に大きく左右されることに、今後も変わりはありません。 

 

 その上で、暫定税率など税金のあり方を議論しているのです。 

 

 そのため、仮に暫定税率が廃止されても、原油価格の高騰が続けば、国としては施策の名称がなんであれ補助制度によってガソリン小売価格を抑制するしか手がないと言えます。 

 

イマイチよくわからない「ガソリン減税」とは(画像はイメージ/フォトAC) 

 

 武藤容治・経済産業大臣は20日、閣議のあとの会見で「脱炭素などの流れを踏まえるとガソリン価格の支援をいつまでも続けるものではない」との考えを示したと報道されています。 

 

 そうとはいえ、短期間にEVや燃料電池車が普及することは事実上、難しいでしょう。 

 

 さらには原油に頼らないカーボンニュートラル燃料やバイオ燃料の開発が進んでいるものの、ガソリンに比べるとかなり割高なのが実状です。 

 

 脱炭素の動きをスピードアップさせることは必要だとしても、当面の間、国はなんらかの補助によってガソリン価格上昇を抑制するしか手立てがないように思います。 

 

桃田健史 

 

 

 
 

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