( 301635 )  2025/06/23 06:14:09  
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父は競馬が趣味で「今日は勝った・負けた」とよく話しています。もし大穴が当たって払戻金が100万円の場合、税金はかかるのでしょうか? 

 

競馬の払戻金が高額になった場合、うれしい反面、税金のことが心配になるでしょう。高額な払戻金がある場合、税金はかかるのでしょうか? 

 

競馬の払戻金は、所得税のうえでは「一時所得」として扱われることが一般的です。一時所得とは、営利を目的としない一時的な所得のことで、競馬・競輪・競艇といった公営競技の払戻金のほか、次のものが挙げられます(※1)。 

 

・懸賞や福引きの賞金品 

・生命保険や損害保険の解約返戻金 

・ふるさと納税の返礼品(時価相当) 

・遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金 

など 

 

なお、宝くじの当選金は非課税扱いです。 

 

一時所得の具体的な計算方法は、次のとおりです。 

 

図表1 

 

競馬の払戻金が100万円だった場合に、当てはめてみましょう。的中した馬券が、2万円分だったとします。収入を得るため直接要した金額とは、この場合的中馬券の購入費用となります。 

 

100万円-2万円-50万円=48万円 

 

払戻金のすべてが一時所得ではなく、計算後の金額、この場合は48万円の一時所得が発生することが分かりました。払戻金と的中馬券の購入額の差額が50万円超の場合は、一時所得が発生するということです。払戻金が50万円以下であれば馬券代の多少にかかわらず課税されない、ともいえます。 

 

ただし、これは一時所得となる収入が馬券の払戻金だけだった場合です。1年間に前項で挙げた他の一時的な収入があれば、それらも加えたすべての金額である「総収入金額」から「総支出額」を差し引き、さらに50万円を控除して一時所得を算出します。 

 

そのため、払戻金が少なくても他の一時的収入を合算すると50万円を超えてしまい、課税対象額が発生する場合があるのでご注意ください。この場合、たとえ給与所得者であっても確定申告の必要があります。 

 

では、極端ですが1年間の全所得が馬券の払戻金だけとした場合で税額を計算してみます。一時所得のうち、課税されるのはその金額の2分の1です。上記のケースでは次のとおりです。 

 

(100万円-2万円-50万円)×1/2=24万円(課税対象額) 

 

仮に、諸控除を考慮しなければ、所得税額は24万円×5%=1万2000円となります。現実的には、少なくとも基礎控除(令和7年分から58万円に改正)を超えなければ税額は発生しません(※2)。 

 

実際は、一時所得の課税対象額に給与所得など他の所得の金額を合計して総所得金額を求め、総合課税として税額を計算します。一時所得のみで考えるのではなく、一時所得として課税対象額が発生した場合も、所得全体として税額が決まるということです。 

 

 

実は、馬券の払戻金が一時所得ではなく、雑所得と判断される場合があります(※3)。 

 

例としては、馬券を継続的に大量購入している場合などです。 

 

平成29年の最高裁判所の判例から、競馬の馬券の払戻金の所得区分については、馬券購入の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して区分する、とされました。 

 

年間を通じて利益が得られるよう、専用ソフトウエアなど独自の予想手法を用いて継続的・網羅的に馬券を購入している場合は、雑所得(事業的規模)として課税されるということです。 

 

雑所得として認められる場合、一時所得と大きく異なるのは、外れ馬券も必要経費としてすべて計上できることです。なお、50万円の特別控除はないので、払戻金から購入したすべての馬券代を差し引いた金額が、雑所得の課税対象額となります。 

 

いわゆる一般の競馬愛好家の場合は一時所得に該当し、外れ馬券は必要経費として控除できません。そのため、的中馬券のみが経費となるのです。 

 

一時所得、雑所得ともに課税対象額が発生した場合は確定申告が必要です。払戻金の記録(JRAのインターネット投票なら明細を印刷する)、馬券の購入履歴(一時所得は的中馬券のみ。雑所得の場合はすべての馬券)などの確証類を用意します。 

 

馬券以外の公営競技の払戻金や生命保険等の返戻金など、他の一時所得も含まれたうえで課税対象額が発生した場合は、馬券以外の一時所得の必要書類もそろえて申告しましょう。 

 

出典 

(※1)国税庁 No.1490 一時所得 

(※2)国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について 

(※3)国税庁 競馬の馬券の払戻金に係る課税について 

 

執筆者:伊藤秀雄 

FP事務所ライフブリュー代表 

CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員 

 

ファイナンシャルフィールド編集部 

 

 

 
 

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