( 302425 )  2025/06/26 05:32:06  
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自販機台数でトップのコカBJH(記者撮影) 

 

 6月中旬、都内の気温が30度を超えた真夏日。汗だくになりながら道端を歩いていると、コカ・コーラの自動販売機が目にとまった。 

 

 飲み物を買おうと近づくと、ミネラルウォーター「いろはす」(540ミリリットル)が140円、炭酸飲料「コカ・コーラ」(500ミリリットル)が190円で販売されていた。3年前にはコカ・コーラが140円前後で買えていたことを考えれば、この数年でずいぶん高くなった。 

 

 原材料費などのコスト増を受け、飲料業界では値上げラッシュが続いている。とりわけ、基本的に飲料会社が定価販売できる自販機においては、猛スピードで商品価格が上昇してきた。 

 

 冒頭のコカ・コーラは2025年10月にも再び値上げが実施され、200円の大台に乗る。スーパーやドラッグストアの店頭価格との差は、商品によって、今や倍近く開いている。 

 

■自販機での販売は足元で急落 

 

 かつては「ドル箱」とまでよばれた自販機も、人口減少やコンビニの台頭、コロナ禍における人流の変化などで売り上げが低迷。販売量でコンビニに抜かれるのも、時間の問題とみられる。 

 

 飲料各社は不採算機の撤去を進めている。飲料総研の調査によれば、2014年に247万台あった稼働台数は2024年に204万台まで減っているが、それでもまだ1割近くの自販機は赤字とされている。しかも、2025年10月には飲料各社が大規模な値上げを控えており、これで集客数が減れば赤字の自販機が2〜3割に跳ね上がるともいわれている。 

 

 国内飲料事業で販売数量・売上高の9割近くを自販機が占めるダイドーグループホールディングス(HD)は苦戦が続く。同事業の直近の2026年1月期第1四半期(2025年2〜4月期)は値上げが一巡したものの、売上高323億円(前年同期比4.6%減)、営業損失23億円(前年同期は12億円の赤字)で着地した。 

 

 自販機台数でトップのコカ・コーラと2位のサントリーも例外ではない。 

 

 約70万台の自販機を有するコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(以下、コカBJH)は、ここ数年の価格改定がじわじわと影響し、昨年10月の値上げで販売減が顕著になってきた。 

 

 

 サントリー食品インターナショナルで国内飲料事業を統括する内貴八郎専務も「(値上げによって自販機の売り上げは)いっぺんに落ちた」と危機感を示す。 

 

■競合同士の連携が進む 

 

 こうした市場環境の厳しさから、業界では競合間の連携が進む。活発なのは商品の相互販売だ。 

 

 例えば、2016年にはダイドーとキリンビバレッジが、2019年にはアサヒ飲料と伊藤園が、それぞれの自販機でお互いの商品を扱い始めた。それぞれがブランド力のある商品を販売しあうことで、“乗り合い”による売り上げ増が狙える。 

 

 また、2023年1月にはダイドードリンコとアサヒ飲料が合弁会社ダイナミックベンディングネットワークを設立。合弁会社を通じて、ダイドーが持つAI技術を活用したオペレーションをアサヒの自販機にも展開することで、ルートセールス担当者1人当たりの担当自販機台数や販売本数、売上高の向上を目指す。 

 

 人口減少が続く中で、個社の努力による販売増や採算改善は限界に来つつある。競争はしながらも、協業できる領域を幅広く模索していくことが必要な時期を迎えている。 

 

本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「【限界の自販機】「コカ・コーラ」200円時代突入へ、今秋値上げで赤字自販機は2〜3割に激増も。サントリーやダイドーも苦戦で、連携の動きは加速か」でご覧いただけます。 

 

田口 遥 :東洋経済 記者 

 

 

 
 

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