( 302500 ) 2025/06/26 06:50:53 0 00 経営再建中の日産自動車が24日に開催した定時株主総会で、独立社外取締役8人の再任への賛成率が約9割に上ったことが、同社が関東財務局に25日提出した臨時報告書で分かった。業績悪化を受けて反対が増え、前年の賛成率は軒並み下回った。
■経営監視能力への不信感
取締役会議長を務める木村康氏(ENEOSホールディングス名誉顧問)は前年比5・63ポイント減の91・12%だった。監査委員会委員長の永井素夫氏(みずほ信託銀行元副社長)は4・97ポイント減の91・53%、指名委員会委員長のアンドリュー・ハウス氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント元社長)は4・24ポイント減の92・46%、報酬委員会委員長の井原慶子氏(カーレーサー出身)は4・95ポイント減の92・40%。
総会では個人株主から経営責任を問う声が上がっていたが、大株主の仏ルノーや機関投資家が再任を支持したとみられる。
機関投資家の多くは、あらかじめ定めている議決権行使基準に沿って取締役選任案の賛否を判断する。投資運用の期間が比較的長く、法令違反や経営監督上の明確な落ち度、独立性の問題などがなければ、短期的な業績悪化で社外取締役の再任に反対する可能性は低い。ただ、社外取締役の経営監督能力への強い不信感はくすぶっている。
総会前、取締役在任が6~7年と長い木村氏、永井氏、井原氏の3人に対しては、実は不再任を求める株主提案も出されていた。
■統治機構の問題点が露呈
この提案は日産の取締役選任議案への反対の意向表明として整理されたため、実際には総会の議案としては扱われなかったが、招集通知に注記として示された提案理由は再任への怒りに満ちていた。
「当社の業績は壊滅的な状況にあり、2025年3月期は、国内の完成車メーカー9社中、日野自動車と当社のみが最終赤字の予想となっている。その結果、当社の時価総額はスズキとSUBARUに加えていすゞ自動車にも抜かれ、国内の完成車メーカー9社中6番目にまで落ちてしまった。また、PBR(株価純資産倍率)は0・20倍と極端に低く、9社中断トツの最下位である(株主提案日時点)。(中略)当社経営陣による『人災』という他ない。殊に、前CEO(最高経営責任者)である内田誠氏の経営者としての能力は極めて低く、その様な人物をCEOに選んだ当時の取締役会の責任は重大である。指名委員会等設置会社である当社の場合、人事に関しては、取締役の中でも指名委員会の委員の責任が重い。内田氏がCEOを退任して済む話ではなく、同氏をCEOに選んだ取締役も責任を取る必要がある」
総会では、こうした株主の不満の声に社外取締役は正面から答えなかった。
社外取締役再任への9割の賛成率は、再任候補者が取締役選任案をつくる当事者で、経営監督が適切に機能しているかを判断する客観的な目が届かない日産の統治機構の問題点を露呈したともいえそうだ。(池田昇)
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