( 302970 ) 2025/06/28 05:03:52 0 00 オートレースで的中した際の「払戻金」を申告せず、所得税約7700万円を脱税したとして、所得税法違反に問われた岐阜市、無職の被告の男(52)に対し、名古屋地裁(坂本好司裁判官)は26日、懲役1年、執行猶予3年、罰金1700万円(求刑・懲役1年、罰金2300万円)の判決を言い渡した。超高額の払戻金を手にしながら、納税義務を怠った結果、高い代償を払うことになった。(大場暁登)
名古屋地裁
3億6564万5380円――被告が手にした払戻金の額は、目を疑うものだった。
2023年5月15日、オートレースの着順を当てる「モトロトBIG」で1口100円の車券を約100口購入し、そのうち1口が的中した。
翌日、車券購入に使ったアプリから「高額払い戻しの場合、確定申告が必要です」とメッセージが届いた。税理士にも相談し、「当時は納めるつもりだった」と、納税にあてる1億円を別の口座に分けた。
一方で、被告は払戻金で当時抱えていた借金を返済し、マンションや車を購入。ギャンブルなどの遊興にふけり、1億5000万円以上を使った。口座の残高はみるみる減っていき、次第に納税するのが惜しくなった。税理士と会うことはなくなり「気づかれても延滞税を払えば済む」と現実から目を背けた。
高校中退後、タクシー運転手や風俗店従業員などの職を転々としたが、どれもうまくいかなかった。
携帯販売店を運営すれば経営状況が悪化し、サラリーマンになれば、仕事上の人間関係に苦しみ会社に行けなくなった。借金がかさむとギャンブルで取り返そうとして負け、2007年と21年の2度、自己破産も経験した。
そのたびに、「生い立ちや運の悪さだ」と思い込んできたが、高額当選で「ようやく金持ちになれた」と思ったという。
「(納税当局には)ばれないんじゃないか」と期待する一方、納税を逃れていることへの不安も尽きなかった。対話型AIサービス「チャットGPT」に「税金の金額を教えてください」と尋ねたり、インターネット検索で「追徴課税 競馬」「税務調査 逃げ切った」などと調べたりしたが、ついに期限までに申告はしなかった。
24年9月、名古屋国税局が税務調査に着手。「こんな大変なことになると思わなかった」。本来納めるべきだった所得税に無申告加算税などが上乗せされ、1億円余りを納めた。さらに、判決で言い渡された罰金も支払うことになる。
公判では起訴事実を認め、ギャンブルに依存しがちだった生活を改めるべく、岐阜県のギャンブル更生プログラムを受講していることも明らかにした。
「今後はタクシー会社に就職して再び運転手として働く」と語り、最終意見陳述で「まっとうな人間になる」と誓った。
「場当たり的かつ身勝手な動機に、何ら酌むべきものはない」。そう厳しく指摘する判決を、スーツ姿の被告は、何度もうなずきながら聞いていた。
公営ギャンブルの払戻金は多くの場合「一時所得」となる。一時所得の場合、払戻金として受け取った額から、払い戻しのあった「当たり投票券」の購入額を引き、そこからさらに特別控除の50万円を除いた額の2分の1に所得税がかかる。
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