( 303910 ) 2025/07/01 07:32:54 0 00 フランスでは今、空前の「韓国ブーム」が巻き起こっています。日本人気が続いていたフランスで、一体何が起きているのでしょうか。アジア圏カルチャーの最新トレンドを、現地から在住者がお届けします。(写真は筆者撮影)
フランスのパリでは今、「韓国文化」が目覚ましい盛り上がりを見せています。K-POPや韓国ドラマを筆頭に、料理、コスメ、そしてファッションに至るまで、その存在感はかなり大きく、パリ中心部では韓国風カフェ・レストランのオープンラッシュが続いています。
少し前までは「日本ブーム」だったはずなのですが……。現在の20~30代といったフランスの若い世代、特に女性の間では、熱狂的な「韓国ファン」「韓国オタク」が存在するほどです。
韓国文化の何がそこまでフランス人を惹きつけているのか、パリの街を歩きながら探ってみました。
フランスにおける日本ブームは、本当に長く続いていました。さかのぼれば、19世紀後半の「印象派時代」から始まっています。ジャポニスムからスタートし、1980年後半になると日本のアニメブームにバトンタッチ。そこから派生して、和食や伝統工芸品、ZEN(禅)といった文化芸術まで、日本という国はフランス人から常に熱い視線を浴びてきました。
フランスにおける根強い日本ファンは今も健在ですが、その多くは30代後半~40代に集中しているイメージです。つまり、Z世代にとっては日本文化、および日本ファンの人々が少し“レトロ”に映るのかもしれません。
今日の韓国ブームが始まったきっかけといえば、何といっても「韓国ドラマ」と「K-POP」にあるでしょう。中でもNetflixドラマ『イカゲーム』の影響は非常に大きかったと思います。『イカゲーム』のシーズン2が配信された際には、パリのシャンゼリゼ通りで大規模なイベントも行われていました。
こうした背景もあって、近年のパリでは、K-POPアイドルのライブやイベントに長蛇の列ができています。韓国料理店も急増しており、現在ではビビンパ、トッポギ、プルコギなどがZ世代の外食の定番に。さらに2024年頃からは、韓国コスメもフランスの女性誌に数多く取り上げられるようになりました。
さらには、シャネルやルイ・ヴィトンといったハイブランドも、韓国の俳優やモデル、K-POPアイドルを次々とブランドのミューズに起用しています。パリの街を歩けば、彼らの姿を大きく掲げた広告をあちこちで目にすることができますよ。
フランスの若者世代にとって、そんな韓国文化はトレンドの源と言えるかもしれません。もちろんフランス人全員ではないものの、ストリーミングとSNS(TikTok、Instagram)における「可視性の高さ」や「完成度の高さ」は、ほかのカルチャーと比べても群を抜いています。韓国エンターテインメント業界が仕掛ける巧みな世界戦略も、その人気を後押ししているのでしょう。
対照的に、日本文化は「伝統」「ノスタルジー」「おもてなし」といったところに魅力があるそうです。ということで日本文化は、どちらかといえば“大人のフランス人”向け。筆者の周囲でも40~50代の世代を中心に、相変わらず日本旅行が注目されています。
とはいえ、最新トレンドを生み出す力、若さと勢い、そして今を感じさせる発信力という部分では、やはり韓国に一歩リードがあるのかもしれませんね。
面白いのは、日本文化にしろ韓国文化にしろ、どのアジア圏カルチャーにも「フランス的センス」が取り入れられているところです。
例えば、パリの老舗デパート「BHV」で開催されている韓国のポップアップ「KOREAN WAVE(コリアン・ウェーブ)」を訪れた時のこと。天然由来成分を使った韓国コスメコーナーや、韓国スタイルのコーヒースタンドには若いパリジェンヌがたくさん集まっていました。自然派コスメとおしゃれなコーヒーショップは、まさに今のパリのトレンドです。そこでは、ただ韓国からの輸入品を並べるのではなく、「パリの空気感」に寄り添うような演出がされていたのが印象的でした。来場者の多くはパリジェンヌで、商品を熱心に写真に収めたり、スタッフと英語でやりとりしたりする姿も見られました。
日本の「大福」や「抹茶」がパリで「MOCHI(モチ)」「MATCHA」として定番化しているように、韓国文化も“自分たちの日常の延長”として、親しまれつつあるのだと思います。
もはや日本文化も韓国文化も“異国のトレンド”ではなく、“自分たちのライフスタイルの一部”に。そうした文化融合においては、フランス人、特にパリジェンヌは本当に上手だなと感じています。
かつては“日本一強”の時代が続いていたフランスのアジアカルチャー。しかし、現在のスターは間違いなく韓国です。その勢いは、何十年と続いた日本人気をしのぐほど。
日本と韓国以外でいえば、ベトナム文化も浸透していますが、これにはかつてのベトナムがフランスの植民地だったという背景があります。「新しさ」という観点では、日本に続きやはり韓国がフィーバーしていると言えるでしょう。一時期は台湾発祥の「タピオカティー」もパリで大流行していました。
ただ、SNSの時代になってからは、スピード感ある展開が待ち受けているように思います。フランスのアジア好きたちの心を次につかむのは、どの国のどんな文化なのでしょうか。これからの展開が少し楽しみです!
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
大内 聖子
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