( 305185 )  2025/07/06 05:08:49  
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参院選が公示され、党首の第一声に耳を傾ける有権者ら=3日、宮崎県国富町 

 

 土俵際に追い込まれた石破政権が踏みとどまるか、野党が一気に寄り切るか。3日公示された参院選は「政権選択」の性格を色濃く帯びる。物価高対策や、財政・社会保障、対米関係などを争点に、与党は「責任政党」のアピールに懸命。多極化する野党は、政権批判票の受け皿争いが激しさを増す。選挙後の政権の枠組みを巡る思惑も絡み、夏の政治決戦の火ぶたが切られた。 

 

 ◇「給付」か「減税」か 

 「今年中に生活が苦しい方々にお金が行き渡るようにする。バラマキでも何でもない」。石破茂首相(自民党総裁)は3日、神戸市での第一声で1人当たり2万~4万円給付案に理解を求める一方、医療・年金・介護の財源となる消費税を「傷つけてはいけない」と述べ、減税論をけん制した。 

 

 物価高対策を巡っては、改選を控えた自民の参院議員が消費税減税を迫り、首相も一時傾斜。だが財政規律維持を重んじる森山裕幹事長らに押し返され、現金給付案に回帰した。 

 

 そうした迷走への反省も踏まえ、力点を置くのは政権政党の「安定感」だ。首相は難航する日米関税交渉について「国益を守るために全身全霊で臨む。どの党がそれを実現できるのか」と自負。東日本大震災後、歴代首相は福島県など被災地で国政選の第一声に臨んできたが、今回は改選数3を与野党が激しく競う兵庫選挙区を選んだ。公明党候補の応援にも入り、「友党・公明と共に次の時代に責任を持つ」と声を張り上げた。 

 

 ◇首相、裏金に触れず 

 野党は物価高対策での「失政」を追及し、有権者の不満を吸い上げる戦略だ。「食料品が高過ぎる。石破政権は何もしておらず無策だ」。立憲民主党の野田佳彦代表は宮崎県国富町で、食料品への消費税率ゼロを訴えた。赤字国債を発行しない「責任ある減税」も掲げ、財源論にも配慮を示した。 

 

 日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)は大阪市内で「自民は『現金を配るからよろしく』。買収ではないか」と強く批判。一丁目一番地と位置付ける社会保険料引き下げに「正面から切り込む」と繰り返した。国民民主党の玉木雄一郎代表も東京都内で「現役世代から豊かになろう」と述べ、所得税減税を通じた手取り増を主張。いずれも、「物価を上回る賃金上昇」を目指す首相の取り組みは「不十分」との立場で、現役世代の支持獲得を図る。 

 

 衆院で過半数を割った自公にとって、非改選を合わせた参院の過半数死守は「必達目標」(首相)だ。ただ物価高に加え、一昨年から続く派閥裏金問題で「自民は負のイメージが染みついた」(政府関係者)。首相が第一声で応援したのは裏金事件に関係した自民候補だったが、事件には触れなかった。共産党の田村智子委員長は「裏金に全く無反省の自公を少数に追い込む」と力を込めた。 

 

 選挙結果を左右する「1人区」では、自民が比較的強いとされる西日本でも「与野党が競り合う情勢」(自民関係者)。首相や野田氏は今後、接戦が伝えられる1人区を中心にてこ入れを図る方針だ。 

 

 ◇過半数割れで流動化 

 選挙後も衆院での少数与党は変わらない。さらに参院でも自公が改選50議席に届かず、過半数を割り込めば、政権の存続そのものが危うくなる。ただ、野党が大同団結して「非自民政権」をつくる機運にも欠ける。「どれぐらい議席を取るかなどを勘案し、臨機応変に対応したい」。野田氏は3日、記者団にこう述べ、現時点で政権構想がないことを暗に認めた。 

 

 自民内では公示を前に、麻生太郎最高顧問、岸田文雄前首相、茂木敏充前幹事長が会談するなど、参院選後も見据えた動きが既に出ている。自民幹部は「過半数を割れば一気に政局は流動化する」と漏らした。 

 

 

 
 

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