( 305205 ) 2025/07/06 05:32:44 0 00 「なんで先生が?」ではなく「また先生か」にならないためにはどうしたらよいか(写真:mits / PIXTA)
教員による盗撮事件が大きな波紋を広げている。事件を受けて文部科学省は7月1日、教員の服務規律の確保を徹底し、性暴力に関する研修をはじめ必要な防止策を講じることを求める通知を出した。
しかし教員による性暴力は今回が初めてというわけではなく、文科省の通知だけで根本的な解決に向かうとは思えない。
■文科相は「当該教員は名乗り出て」と呼びかけ
今回の事件は、6月24日に愛知県警少年課が名古屋市立小坂小の教員(42)と横浜市立本郷台小の教員(37)を性的姿態撮影処罰法違反容疑で逮捕したことで発覚した。女子児童の盗撮画像を交流サイト(SNS)のグループチャットで共有していたという。
このグループには10人ほどの教員が参加していたといわれるが、全員の氏名は不明で、7月1日の記者会見で阿部俊子文科相は「当該教員がいれば子どもたちの前からすぐ離れて一刻も早く名乗り出てほしい」と述べている。しかし、そんな文科相の呼びかけで名乗りでてくるとは到底思えない。
この逮捕発覚から数日後の6月30日、盗撮での逮捕者を出した名古屋市の教育委員会(教委)は、複数のわいせつ事案を起こして不同意わいせつ罪で逮捕・起訴されていた市立小学校の教員(34)を同日付で懲戒免職にしたと発表している。この教員は名古屋市内の駅構内で15歳の少女のリュックサックに体液をかけたとして、3月に器物損壊容疑で逮捕されている。
その後にも、児童2人の楽器に体液を付着させたほか、給食の食器内に体液を混入させたとして追起訴もされた。さらに、2人の教員が逮捕されている盗撮画像交流グループにも参加していたという。そして、ようやく名古屋市教委も処分に踏み切ったわけだ。
こうした教員による性暴力(わいせつ)事件が発覚したことに、「驚いた」という保護者などの反応をマスコミは報じている。阿部文科相も、その1人だったのかもしれない。6月27日の記者会見で盗撮事件に関して質問され、「こうしたことにより教師への信頼、これが損なわれるような状況が生じていることにつきまして極めて遺憾に思います」と述べ、「断じて許せません」と怒りをあらわにしている。
盗撮事件のような教員による性暴力事件が初めてのことなら、それに対する怒りを示すことで足りるかもしれない。しかし、これが初めてでなく、頻発している問題であれば、それを防ぐことのできなかった文科相としての反省の一言もなければならないはずだ。
■ある小学校に掲示されていた掲示物とは…
盗撮事件が発覚する数日前に筆者は、研究授業参観のために訪問したある公立小学校の教室にあった掲示物に目がとまった。
そこには「児童生徒性暴力等防止のため」として児童・生徒に対して「不必要な身体接触はしない、個人的なメール・SNS等の送信はしない、閉鎖的な状況で指導・対応をしない」などが記されてあった。
この小学校で事件が起きているということではなく、日本の学校全体で教員による性暴力が問題になっているのだろう、と感じた。
掲示物が職員室ではなく各教室に貼り出されているということは、「そういう教員からの行為には子どもたちも注意して」という意味も込められているのだろう。それほど、教員による性暴力は学校において深刻な問題となっている。
実際、教員による児童生徒への性暴力事件は毎年、多発していると言っていいくらいの数が起きている。
文科省の「公立学校教職員の人事行政状況調査」によれば、2023年度に「児童生徒性暴力等により懲戒処分を受けた者」は157人で、前年の119人より38人増えている。
年度によって数に変化はあるものの、毎年100人ほどが処分を受けている状況に大きな変化はない。
もちろん、この状況が放置されてきたわけでもない。2021年には「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(いわゆる「わいせつ教員対策新法」)が衆参両院の全会一致により成立し、2022年4月1日から施行されている。この法律には、教員に啓発活動を行うことや、性暴力におよんだ教員に対しては原則として懲戒免職とすることなどが盛りこまれた。
しかし、この法律が効果を発揮していないことは、性暴力での懲戒処分者が減っていないことでもわかる。その中の1つが、盗撮事件である。
女子児童を盗撮するなど、「異常」なことなのに、そんな異常なことを先生がするはずがないということが「常識」になっているかもしれない。だから今回の事件でも、「なんで先生が?」という反応なのだろう。
■生徒へのアンケートで発覚したセクハラ疑惑
学校での性暴力が表面化することも珍しくない。2022年の『週刊文春』(9月29日号)は、「千葉難関高 校長の女性徒とセクハラ疑惑で教師が決起」と見出しのついた記事を載せている。
私立高校の教員が女子生徒の背後に近づき、ニヤつきながら「背低めだね、ちょうどうちの奧さんと同じくらいの高さだよ〜」などと呟く、明かなセクハラ行為を繰り返していた。その教員が校長だったのだ。
この件は、同校が生徒を対象に行ったアンケートにセクハラに遭った女子生徒が答えたことで表面化した。これを問題視した教員の有志が学校側に対処を求めて学校側は調査を開始したが、そのメンバーが学校関係者ばかりの「身内の調査」でしかなく、問題は結局ウヤムヤにされてしまった。
この問題が報じられた直後の11月には、同校の教員が児童売春・ポルノ禁止法違反(買春)の容疑で逮捕されている。SNSで知り合った10代少女に現金を渡してわいせつ行為にいたった、というものだった。
■「なんで先生が?」が「また先生か」になる前に
校内でのセクハラ行為、そして買春と、どれも「なんで先生が?」という感想をもたれる事件である。しかし、現実に起きている。「なんで先生が?」ではなく、「先生でも」になり、今回の盗撮事件によって「また先生か」という受け取り方になっていくかもしれない。
多くの真面目な教員にしてみれば、迷惑千万な流れである。しかし、多くの真面目な教員にとっても無関係ではない。学内で性暴力を許し、性暴力を起こす教員を放っておいた責任は、多くの真面目な教員にもある。盗撮事件をきっかけにすべての教員が、学校のあり方をもう一度考えてみる必要に迫られているのではないだろうか。
前屋 毅 :フリージャーナリスト
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