( 305530 )  2025/07/07 06:27:54  
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kapinon.stuio/Shutterstock.com 

 

7月は1年の折り返し地点。「あと何年、お金がもつのか不安…」と感じる方もいるのではないでしょうか。 

 

今回は、内閣府「高齢社会白書」やJ-FLECの調査データをもとに、60歳代の収入・支出・金融資産の実態をわかりやすく解説します。また、元マネースクール講師として将来に備える具体的なヒントも紹介します。無理に我慢して生活を切り詰めるのではなく、今ある資産をどう活かすかを一緒に考えてみましょう。 

 

※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。 

 

内閣府で2025年6月10日に公表した「令和7年版高齢社会白書」をみていきましょう。 

 

●【収入面】「60歳代は収入の転換期」勤労収入から年金収入へ 

60〜69歳の「現在の1か月あたりの収入金額」における収入分布について解説します。 

 

60歳代前半(60〜64歳)の男性では、月収25万円以上の割合が約67.8%にのぼり、多くの人が現役時代と同様の生活水準を維持していると見られます。しかし、60歳代後半(65〜69歳)になるとその割合は約59.9%に下がり、1割程度が年金生活へ移行した影響を受けていると考えられます。 

 

一方で女性は、60歳代前半が約51.1%、後半が約51.0%と、年齢による収入変化はほとんどなく、パートや非正規などで継続的に働く姿がうかがえます。 

 

このことから、60歳代は男女で収入の変化幅に差があり、特に男性は65歳を境に生活の見直しを迫られるケースが多いといえそうです。 

 

次は、支出における生活費について見ていきましょう。 

 

●【支出面】「60歳代は生活水準の見直し」など調整の動きあり 

60〜69歳の「現在の1か月あたりの生活費」としてかかる支出金額の分布について解説します。 

※「生活費」は食費、住居の設備補修・維持費、光熱・水道費、家具・家事用品費、被服及び履物費、保健医療費、交通・通信費、教育費、教養娯楽費などを指しており、家賃・住宅ローンは含みません。 

 

60歳代前半の男性では、生活費は30万円以上の世帯が32.2%と最も多く、生活費25万円以上に広げると46%にのぼります。まだ現役収入が残る中で、レジャーや交際費なども含めた比較的ゆとりある暮らしが続いている様子がうかがえます。一方、後半になると、収入の減少とともに生活費がやや抑えられ、30万円以上は26.8%、25万円以上で40%と約4割にやや減少します。収入と支出のバランス調整が必要となる時期といえるでしょう。 

 

女性は60歳代前半では支出が分散していますが、25万円以上使っている世帯が約30%と意外に多く、家計のスタイルは家庭によってさまざまです。ところが後半になると収入の大きな変化がない一方で、生活費が25万円以上の割合が増えており、貯蓄を取り崩しながら生活している世帯も少なくないと考えられます。 

 

収入が減り、生活費を調整する60歳代は、これまでに築いてきた金融資産をどう活用するかが大きなカギとなります。 

 

 

続いて、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額について階層ごとの世帯割合(金融資産非保有世帯を除く)をみていきましょう。 

 

※金融資産保有額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。 

 

60歳代・二人以上世帯では、約2割の世帯で金融資産を保有していないことが明らかになっています。 

 

また、「平均値は2033万円でも、中央値は650万円」と大きな開きがあり、格差の存在を示唆しています。 

 

「3000万円以上」の保有世帯も20.0%と一定数いるが「100万円未満」の層も約6.5%と金融資産保有額の分布には大きなばらつきがあります。 

 

「老後の備え」を“貯められた人”と“そうでない人”とで二極化しており、生活水準や将来不安の感じ方にも大きな差が出る可能性があります。ただ、このように金融資産保有額の状況には幅がありますが、大切なのは「いくらあるか」よりも「どう使うか」です。 

 

次は、手元の資産をどのように活かせるかをシミュレーションで見ていきましょう。 

 

これからの暮らしをあらためて見直すタイミングでもある60歳代。「今ある資産があと何年もつのか」を見える化するツールとして、資産寿命シミュレーションがおすすめです。 

 

こちらは銀行など金融機関のウェブサイトにて無料で利用することもできます。 

 

資産寿命シミュレーションの最大のメリットは、《お金のもち時間》がわかるので将来に対する“見通し”が立つことです。 

 

無理のない資産の取り崩しペースが把握でき、必要に応じて運用や生活費の見直しも早めに始められます。 

 

資産の「見える化」は、お金の不安を安心へと変える第一歩です。 

 

資産寿命シミュレーションのイメージ図について、 

 

 ・手元の資産:1000万円 

 ・公的年金などの年間収入:180万円 

 ・生活費などの年間支出:230万円 

という前提条件のもと、毎年50万円ずつ赤字になる場合の資産の減り方について2つの場合をシミュレーションしています。資産を運用することで、年間50万円の赤字でも資産寿命を約10年延ばせるという試算があります。 

 

たとえば、年利3%で運用すれば資産は約30年持続し、運用しない場合の約20年と比べて大きな差が生まれます。 

 

この「使いながら増やす」意識が、老後資金の安定に直結します。 

 

特に、NISAなどの税制優遇制度を活用すれば、より効率的な資産形成が可能になります。 

 

 

今回は、内閣府やJ-FLECの調査結果をもとに、60歳代の家計実態や資産の活かし方について解説しました。 

 

まとめると、 

 

 ・60歳代は収入が年金中心になり、支出とのバランスが重要 

 ・金融資産の保有額にはばらつきがあり、「使い方」がカギ 

 ・資産寿命シミュレーションで見通しを立てるのが安心への第一歩 

無理に我慢して生活を切り詰めるよりも、先の見通しを立てて「お金を使いながら増やしていく」計画を立てるほうが、ずっと気持ちも楽になります。少額からでもぜひ資産形成をはじめてみてはいかがでしょうか。 

 

 ・内閣府「令和7年版高齢社会白書」 

 ・J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」 

 

村岸 理美 

 

 

 
 

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