( 305555 ) 2025/07/07 06:50:46 0 00 Akio Miki JP/shutterstock.com
毎年5〜6月にかけて、会社員や自営業者のもとに「住民税決定通知書」が届きますが、中には「なんだか税金が増えた気がする」と感じる方もいるのではないでしょうか。
その背景には、前年の所得や控除の変動に加え、2024年10月から導入された国税「森林環境税」の影響もあります。
この記事では、通知書の見方や確認すべきポイント、そして新たに導入された森林環境税の仕組みについて詳しく解説します。
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「住民税決定通知書」とは、前年(1月〜12月)の所得に基づいて決定された住民税額を知らせる書類です。
住民税は「所得割」と「均等割」の2つで構成され、通知書には主に以下の内容が記載されています。
・所得金額(給与所得、事業所得など) ・各種所得控除(社会保険料控除、扶養控除など) ・課税所得金額 ・所得割額・均等割額の内訳 ・年間の納税額と月々の納付額
住民税決定通知書が届いたら、前年の所得や控除等に間違いがないか確認することが大切です。
例えば、給与所得者(特別徴収)の通知書を見てみましょう。
●チェックポイント(1) 所得に誤りがないか 通知書の所得欄には、「給与収入」や「給与所得」のほか、複数の収入がある場合はその合計額が記載されています。
お手元の源泉徴収票や確定申告書と照らし合わせて、記載内容に誤りがないか確認しましょう。
●チェックポイント(2) 各種控除が正しく適用されているか 「所得控除」欄には、医療費控除や社会保険料控除など、以下のような各種控除額が記載されています。
・雑損控除 ・医療費控除 ・社会保険料控除 ・小規模企業共済控除 ・生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・配偶者・扶養控除 等 これらの控除が多いほど課税所得が小さくなり、結果として住民税の負担が軽くなります。
医療費や保険料、確定拠出年金、ふるさと納税など、自身が利用した控除が正しく反映されているかをしっかり確認しましょう。
なお、ふるさと納税を行った方が医療費控除などを受けるために確定申告をした場合、「ワンストップ特例制度(※)」は無効となります。
その場合、ふるさと納税についても確定申告書に含める必要があるため注意してください。
※ワンストップ特例制度:確定申告をせずに、ふるさと納税の寄附金控除を受けられる制度
●チェックポイント(3) 納めるべき住民税額はいくらか 通知書の「税額」欄には、当年6月から翌年5月までに納める住民税額が記載されています。
このうち、前年の所得をもとに計算された住民税が「特別徴収税額((9))」です。ここから、すでに納めた額や過不足額などを調整して算出されたものが「差引納付額」となります。
実際に納める金額はこの「差引納付額」であり、月ごとの納付額は右側に記載されています。支払いスケジュールや金額をしっかり確認しておきましょう。
2024年10月から、新たに「森林環境税」が導入され、個人住民税(均等割)に年額1000円が上乗せされることになりました。
森林環境税は、国内に住所のあるすべての個人に課される国税で、住民税の均等割とあわせて徴収されます。
導入の背景には、森林の整備や保全を行うための財源を安定的に確保するという目的があります。
●結局、支払う税金が増えたの? 「森林環境税」が新たに差し引かれるようになり、「税金が増えたのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、実際の負担額は前年と変わっていません。というのも、森林環境税は、これまで徴収されていた「復興特別税(均等割1000円)」に代わる形で導入されたためです。
復興特別税の内訳は、都道府県民税500円・市町村民税500円の計1000円で、2023年に課税が終了しました。
これに代わる形で、2024年からは森林環境税として同額が課税されています。
●「二重課税では?」という声も 47都道府県のうち、独自の森林税をすでに導入している自治体も多くあります。
そのため、国の森林環境税とあわせて二重に課税されているのではないかという批判も一部で見られるのが実状です。
森林整備の重要性が増す一方で、負担の公平性や透明性が今後の課題となる可能性もあるでしょう。
前述のとおり、各種控除を活用することで課税所得を減らし、結果として所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。
まずは、ご自身が適用できる控除がないかを確認しましょう。特に、以下のような控除には要注目です。
・医療費控除 ・住宅ローン控除(※) ・小規模企業共済等掛金控除 ・生命保険料控除・地震保険料控除 ・ふるさと納税による寄附金控除 これらの控除のうち、一部は確定申告を行わなければ適用されないため、忘れずに申請することが大切です。
※住宅ローン控除は初年度のみ確定申告が必要。2年目以降は年末調整で対応可能です。
●iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入も節税手段のひとつ 老後資金の準備と節税対策を両立できる制度として、iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用も有効です。
iDeCoでは、毎月の掛金全額が所得控除の対象となるため、掛金に応じて所得税と住民税の負担を軽減することができます。
掛金は月額5000円から、1000円単位で自分に合った金額を設定可能です。上限額は、公的年金の加入区分や企業年金の有無により異なります。
また、運用する商品も自分で選べるため、リスク許容度や資産形成の方針に応じて選択が可能です。
・リスクを許容できる方:株式や債券が組み込まれた「投資信託」 ・安全性を重視したい方:「定期預金」や「保険」などの元本確保型商品 このように、iDeCoはライフスタイルに合わせて柔軟に活用できる制度であり、節税と老後の備えを同時に進められる点が大きな魅力です。
さらに、掛金の所得控除だけでなく、「運用益が非課税」「受取時にも税制優遇が適用される」といった多段階での税制メリットがあります。
住民税決定通知書は、前年の収入や控除をもとに計算された「住民税の金額」を知る大切な書類です。
特に、2024年からは新たに「森林環境税」が加わり、通知書の金額に変化を感じた方もいるかもしれません。
とはいえ、森林環境税は従来の復興特別税に代わるもので、実質的な負担は大きく変わっていません。
各種控除やiDeCoなど、活用できる制度はないか今一度確認してみてはいかがでしょうか。
・総務省「地方税分野の主な申告手続等における様式【税目別】」 ・総務省「森林環境税及び森林環境譲与税」 ・iDeCo公式サイト「動画・マンガでわかるiDeCo」
加藤 聖人
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