( 305820 ) 2025/07/08 06:49:14 0 00 リチウム相場の暴落で生産企業の多くは採算割れに陥っている。写真は中国の天斉鋰業が権益を持つオーストラリアのリチウム鉱山(同社ウェブサイトより)
EV(電気自動車)用電池の主要原料であるリチウムの相場下落が止まらない。世界的な供給増加に、需要の伸びが伴っていないのが原因だ。
非鉄金属情報サイトの上海有色網のデータによれば、電池向け炭酸リチウムの6月18日時点の取引価格は1トン当たり平均6万500元(約122万円)と1年前より37.6%下落。同日の最低取引価格は6万元(約121万円)の大台を割り込んだ。
2025年の年初と比べても、相場はすでに2割近く下がっている。リチウムの需給バランスが短期的に改善する見込みはなく、供給過剰が2030年まで続くと予想する市場調査会社もある。
■塩湖かん水の精製原価に接近
リチウムはすべての金属の中で最も軽い元素であり、電池材料として優れた化学的性質を持つ。その化合物である炭酸リチウムと水酸化リチウムは、EV用の車載電池の正極材料として広く使われている。
自然界におけるリチウムは単体では存在せず、塩湖のかん水や火成岩に多く含まれている。精製コストは塩湖のかん水から抽出する方法が最も低く、(炭酸リチウム換算で)1トン当たり5万元(約101万円)未満とされている。
それに比べて、鉱石を原料とする場合のコストは高い。代表的なリチウム鉱石にはリチア輝石とリチア雲母の2種類があり、前者の精製コストは1トン当たり8万元(約161万円)弱、後者は同約11万元(約222万円)とされるが、鉱山によっては20万元(約404万円)を超えるケースもある。
炭酸リチウムの取引価格は、2022年11月につけた1トン当たり60万元(約1211万円)をピークに下落が続く。2024年6月には同10万元(約202万円)の節目を下回り、赤字に陥るリチウム生産企業が続出した。
現在の1トン当たり6万元の水準では、リチア輝石やリチア雲母からの精製ではまったく採算が合わない。利益を確保できるのは、リチウム含有量が高いごく一部の塩湖の開発プロジェクトに限られるのが実情だ。
鉄やアルミなどの一般金属と異なり、リチウムは市場規模が小さく用途も限られるため、相場が乱高下しやすい。炭酸リチウムの取引価格は2021年の年初時点では1トン当たり5万元前後だったが、それが2年弱で12倍に急騰し、そこから2年半余りで10分の1に暴落した格好だ。
■ホットマネー大量流入のツケ
2021年から2022年にかけての急騰局面の裏には、中国の自動車市場でEVの販売が爆発的に拡大したのを受け、エンジン車からEVへの移行が世界的に予想を超えるペースで進むという期待の広がりがあった。
そんななか、大量のホットマネー(投機的資金)がリチウム業界に流れ込み、当時の高値を前提にした新規の資源開発プロジェクトが相次いで始動。それらが2023年以降に続々と生産を開始したため、需給バランスが供給過剰に傾いた。
追い打ちをかけたのが需要の伸び悩みだ。中国を除く世界の自動車市場では2024年に入ってEV販売が失速し、中国でも拡大ペースが鈍化した。その結果、リチウムの供給過剰に拍車がかかり、取引価格のさらなる落ち込みにつながった。
(財新記者:蘆羽桐) ※原文の配信は6月18日
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