( 306240 )  2025/07/10 03:34:35  
00

参政党の街頭演説で「選挙に差別はいらない NO HATE」「人間にファーストもセカンドもない」のプラカードを掲げる人たち 

 

「日本人ファーストと言うと叩かれます」「でも諦めちゃいけない。私は皆さんと一緒に、日本人が幸せになる政策を実現することを約束します」 

 

仕事帰りの人々が行き交う都内の駅前で7月8日夜、参政党の参院選東京選挙区候補者は、集まった支持者たちにそう呼びかけていた。 

 

40人ほどの聴衆の中には支持者の他に、参政党が掲げる「日本人ファースト」などの主張に危機感を覚え、「選挙に差別はいらない」「人間にファーストもセカンドもない」とプラカードを掲げる人たちの姿があった。 

 

ハフポスト日本版は、参政党の街頭演説2カ所を取材し、話を聞いた。 

 

「日本人ファースト」を掲げる参政党は、6月に行われた都議選では躍進し、3議席を獲得した。神谷宗幣代表は「日本人を第一に考えるのは当然」としている。 

 

「日本人ファースト」という考え方に対しては、「差別ではない」との主張もあるが、どのような点が問題なのか。外国人支援団体など8団体が7月8日に発表した、排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明でも、その言葉は強く批判されている。 

 

外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士は同日の会見で、「外国人というだけでファーストではない、ないがしろにしていいというメッセージを含んでおり、排外主義につながる」と指摘している。 

 

師岡弁護士はアメリカでは現在、「アメリカ・ファースト」のスローガンのもと、移民に対し暴力的な排斥が行われており、その状況と重なるとした。 

 

また、「外国人が物価高や生活苦への不満のスケープゴートにされてしまっている」とし、本質的な問題の解決を促した。 

 

神谷代表は、参政党の議員が集い、渋谷で開催した昨年11月の街頭演説大会では「男女共同参画、ジェンダーフリー、選択的夫婦別姓、LGBT理解増進。こんなものは全部くそくらえなんですよ皆さん」と発言するなど、外国人やジェンダーの政策については明確な姿勢を示している。 

 

 

街頭演説での、参政党の選挙カー。看板には「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」「日本人ファースト」の文字も 

 

7月8日夜に都内で行われた東京選挙区の候補者による約10分の街頭演説のうち、大半は経済政策について語られた。 

 

候補者は、自民党政権の経済政策が間違っていたと強く批判。そして、子育て政策や子育て世帯への現金給付にテーマが移ると、「日本人ファースト」という党の考え方が垣間見えた。 

 

「日本人を増やしましょう。日本人が生まれてきやすい環境を一生懸命整えるんです。それがこの国の未来だから」 

 

そして、記事冒頭の発言にもあるように、以下のように続けた。 

 

「日本人ファーストと言うと本当に今、叩かれてしまいます。殺害予告も来るくらいです。日本人ファーストという言葉が言えなくなりそうになるけど、諦めちゃいけない。私は皆さんと一緒に日本人が幸せになる政策を実現することを約束します」 

 

演説の締めくくりには、「カルトじゃないですよ。楽しいからやるんですよ」と冗談めかして説明があった後に、「1、2、参政党ー!」と候補者と支持者が共に声を上げる。聴衆からは歓声と拍手が巻き起こった。 

 

演説中、静かに「差別反対」のプラカードを掲げていた人たちは演説終了後、口々に「日本人ファーストは差別です」「人間は平等だ」「外国人も税金を払っています」と聴衆に向けて叫んだ。 

 

「わたしは差別に抗う。日本人ファーストは差別の煽動です」とのプラカードを掲げる男性2人 

 

参政党の街頭演説では、差別反対のプラカードを掲げて抗議する人たちの姿が増えている。 

 

8日の演説で「日本人ファーストは差別の煽動です」「差別で票とる政治はいらない。差別をやめろ」とプラカード掲げた人たちは、どのような思いで街頭演説に足を運んだのか。 

 

2カ所の演説で話を聞いた3人からは、危機を募らせる声が聞かれた。 

 

仕事帰りのワイシャツ姿で「わたしは差別に抗う。日本人ファーストは差別の煽動です」というプラカードを掲げていた50代の会社員男性は、「選挙権がない外国人を差別のターゲットにして、日本人有権者の票を集めるというのは、非常に危険な行為」だと話す。 

 

プラカードを掲げた理由については、以下のように話した。 

 

「プラカード1枚掲げたからといって何かが変わるわけではないですが、演説があったこの駅前は外国人も通ります。その時に、オレンジ(参政党のイメージカラー)一色ではなく、そうではない別の意見もあるということを示したかった。 

 

今後どうなっていくかは分かりませんが、危機感を感じています。この状態で何もしなかったら、子どもたちや後世の人たちに恥ずかしい。だから今日、ここで立ちました」 

 

同日の演説2件では、プラカードを掲げる人たちと、候補者の支持者の間で、大きな諍いは見受けられなかったが、他選挙区では激しく口論する様子も確認されている。 

 

演説では、候補者の陣営スタッフが「支持者の皆様へ。妨害行為には冷静なご対応をお願いします」とのメッセージを掲げていた。 

 

 

友人と駆けつけた30代の会社員女性にとって、選挙の街頭演説などで抗議のプラカードを掲げるのは初めての経験だ。 

 

周囲にいた候補者の支持者と見られる人たちからは「下品な人たちね」「やっぱりマスクとメガネで顔を隠すのね」などの声も聞こえてきた。 

 

それでも「本当にこのままでいいの?」との思いで、震える手でプラカードを掲げた。 

 

「日本人ファースト」という言葉について、女性は「皆、同じ人間として存在しているということを忘れないでほしい。日本国憲法第14条でも『法の下の平等』が規定されていますし、国際人権規約にも違反します」と指摘する。 

 

「日本人ファーストという言葉で外国人を排除した先にあるのは、ホロコースト。いずれは様々な理由で、自分たちも標的にされる恐れがある」 

 

女性は、神谷代表の「高齢女性は子どもを産めない」「男女共同参画はいらない」という発言にも危機感を抱いている。 

 

「あたかも女性の社会進出のせいで少子化が進んでしまったかというような主張で、女性たちをスケープゴートにしないでほしいと思いました。 

 

子どもを産む・産まないでその人の価値を決めつけてはいけない。私自身は性被害サバイバーなので、性行為が関わってくる出産は嫌だと感じる。性被害者なども透明化して、少子化の責任を全部押し付けるような発言は許してはいけないと思います」 

 

中高生の子どもがいるという40代の会社員男性は、参政党の「日本人ファースト」という考え方について「非常に危険だと感じている」と話す。 

 

「子どもがまだ10代と若いので、子どもたちが生きる社会のためにも声を上げなければいけないと思いました。子どもたちも、これからどういう人生を送るか分からない。外国人と結婚するかもしれない。 

 

日本人ファーストという考え方は『差別ではない』と言う人もいますが、日本人だけを優遇する政策をするということは非常に危険。過激化する前に、差別にはしっかりとNOを突きつけたいです」 

 

(取材・文=冨田すみれ子) 

 

 

 
 

IMAGE