( 306280 )  2025/07/10 04:20:27  
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 強引な営業や金銭トラブルが問題視されてきたホストクラブへの罰則を強化する内容を盛り込んだ改正風俗営業法が、6月28日に施行された。法改正を機に、悪質なホストに苦しめられた20歳代の娘を持つ愛知県内在住の50歳代の母親が取材に応じ、「社会経験の浅い若者に高額な借金を負わせるやり方は許せない」と訴えた。(西谷有理沙) 

 

「被害に遭ったら警察などに相談してほしい」と話す母親(6月12日、名古屋市中区で)=尾賀聡撮影 

 

 母親によると、娘は専門学校生で、「アニメが好きな普通の子」だという。派手な遊びや夜遊びをするタイプではなかったが、ある時期から、帰宅が遅い日が増え、ため息をつきながらスマートフォンをいじる様子が目につくようになった。 

 

 娘からある日、「家を出て住み込みで働く」とのメールが届いた。驚いて何があったのか尋ねると、「ホストクラブに借金があって風俗店で働かされていた」と打ち明けられた。ホストと出会ったきっかけはオンラインゲームだったという。 

 

 母親は「一緒に食事に行くようになると『実はホストだ』と告げられ、『俺の恋人として店に来てくれ』と言われたそうです」と説明した。 

 

 最初の1、2回は楽しんだものの、ホストの行動はどんどんエスカレートしていった。数万円する飲み物などを勝手に注文され、「お金がない」と言っても、「(借金して)返せるだろう」と押し切られる。返済が滞ると「早く払え」とどなられ、来店を促すメッセージもたびたび届いた。監視されているような恐怖から断り切れず、ついには風俗店で働いて借金を返すよう強いられたという。 

 

 母親は「娘がホストクラブに費やしたのは総額約300万円で、ツケ払いの『売掛金』が約70万円ありました。風俗店で働かされた経験を、娘は『地獄だった』と言い、今も男性に対する恐怖心が消えないままです」と、傷痕の深さを語った。 

 

 「娘自身も反省しなければなりません。しかし、社会経験の浅い若者をターゲットにして借金を背負わせ、風俗店で働かせるのはやりすぎです。法改正で悪質な店がなくなり、利用者が守られることを願います」。母親はそう強調した。 

 

 

 改正風営法は、支払いのために売春や風俗店での勤務を迫る行為などを禁じ、違反した場合は6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金を科す。虚偽の料金説明や客の恋愛感情につけこんだ飲食の要求も禁じた。 

 

 また、ホストの売り上げ順位や営業成績を直接的に示す「No.1」や「○億円プレーヤー」などの文言を広告や宣伝に使うことも、改正法で禁じる行為を助長するとして規制対象になった。同法の施行を機に、名古屋・栄では看板に黒いテープを貼るなどして宣伝文句を隠す店が目立つようになった。栄のホストクラブの男性経営者は「業界全体に厳しい目が向けられている。今後は『売掛金』を制限し、健全な営業をしていく」と話した。 

 

 

 
 

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