( 306465 )  2025/07/11 03:10:36  
00

社民党から出馬したタレントのラサール石井候補。7月4日東京・吉祥寺駅前で街頭演説に立つ(菅沼栄一郎撮影) 

 

 社民党にとって今回の参院選(2025年7月20日投票)は、「2%以上の得票」を達成しなければ「政党でなくなる」崖っぷちの闘いとなっている。共産党や公明党も得票を急激に減らしており、いずれも80年(旧社会党含め)、103年(共産)、61年(公明)という長い歴史をもつ政党が、新興政党にとって代わられる「政党の交代劇」が進行している。しかし「少数与党とバラバラ野党」のすくみ合いは、戦後80年続いた日米関係をどう再構築するか、などの根本議論をよそに、「物価高をめぐる給付と減税」論戦を続け、参院選は後半戦を迎える。 

 

■かつては首相も出した社民党 

 

 7月4日の昼過ぎ。東京・吉祥寺駅前。タレントのラサール石井候補(69)が叫んでいた。 

 

「日本で一番民主主義を愛している。社民党こそ愛国だ」 

  「社民党を無くしたら日本は滅ぶ」。 

 

 社民は今度の参院選で、「2%以上の得票」「5人以上の国会議員」のいずれかの「政党要件」を満たさないと、政治団体に転落する。1945年の日本社会党の結党以来、自社さ政権(村山富市首相)の96年に社民党に名称変更したが、80年の歴史がある。実は、「政党陥落の危機」は、2019年以来続いており、いずれも2%をかろうじて上回る得票で、しかも前回の2022年は福島みずほ党首が自らの議席をかけ、かろうじて「政党」に踏みとどまった経緯がある。 

 

 ラサール氏の横で、その言葉にいちいちうなずいていた大椿裕子さんも比例候補。2年前に名簿の繰上りで、参院議員になったばかりだ。聴衆は報道陣を除けば20人足らず。歩道の花壇に腰かけて演説を聞いていた初老の婦人は、「がんばってほしい。なんといってもここは、筋金入りの脱原発だから」。しかし、報道各社の議席予想は「0~1議席」と予断を許さない。 

 

 得票が激減しているのは、社民党ばかりではない。 

 

 共産党は24年10月の衆院議員選挙での得票が約336万余票と前回21年より20%近く落ち込み、7割近く伸ばして380万台に乗せたれいわ新選組に逆転されたばかりだ。「れいわ新選組」は、元俳優で参院議員の山本太郎氏が2019年4月にひとりで起ち上げ、3か月後の7月の参院選でいきなり「得票率2%」を上回って、国政政党となった。24年末現在で国会議員14人にまで急成長した。1922年に非合法下で創立、103年の歴史を持つ政党の得票が、令和の元号が発表された時に合わせて設立された6年目の若い政党に逆転されたわけだ。ちなみに、先月の都議選で、共産党は5議席減らして14議席となり、都議会野党第一党の座を陥落、得票数も8年前から約28万票減らし、約49万票となった。 

 

 

 この都議選では、前回まで8回連続で「候補者全員当選」を続けてきた公明党が初めて敗北、しかも創価学会本部のある新宿区を含め3人が落選(候補者22人)した。22人の得票数は約53万票、8年前の約73万票、4年前の約63万票から2回連続で10万票ずつ減らしている。 

 

 1964年の結党以来60年を経過した公明党の最近の長期低落ぶりは、J-CASTニュース「公明党は夏の参院選後どこへ向かう 自民党と連立政権組んで23年、近年は比例得票が激減」(2025.04.12)でも伝えた。昨年の衆院選でも596万票に止まり、2005年の衆院選898万票をピークに、この20年間で3分の1にあたる300万票を減らした。支持母体の創価学会の高齢化に歯止めがかからず、世代交代も進まない。 

 

 「老舗3政党」に代って得票数を伸ばす「れいわ新選組」や「参政党」、その他の新興政党ともに、トランプ後の新たな世界構図がどうなるかを踏まえた論戦を期待するのはなお難しそうだ。さて、参議院選後には、少数与党の過半数が割れた?混乱の中から、「手取り」や「日本人ファースト」を超えた、議論が始まるのだろうか。 

 

 自民党本部事務局長として長年、「老舗政党」の実情を見てきた、現選挙・政治アドバイザーの久米晃さんに聞いてみた。 

 

「国民は、あらゆる物事に不信、不満を持っています。その責任は、政治でありこれまで政治をになってきた既成政党にあると思っています。新しい政党の勃興は、期待ではあるが、既成政党に対する不信、不満です。既成政党は、これに対する回答を出さないと再浮上しませんよね」。 

 

 「老舗政党」に対するアドバイスだった。 

 

(ジャーナリスト 菅沼栄一郎) 

 

 

 
 

IMAGE