( 306940 ) 2025/07/12 07:04:36 0 00 定年で「退職金2000万円」を手にした父。そのうち1000万円で「利回りが高いから」と“米国国債”を購入!「為替レート」が心配ですが、このまま追加購入して大丈夫でしょうか?
最近退職した親が、大事な退職金を一気に投資にあてたと聞くと、身内として心配になることもあるでしょう。自分にとって知識のない金融商品、例えば今回の事例のように米国国債であれば、それがどんな金融商品なのか、気になるかもしれません。
本記事では、米国国債の特徴、さらには株や投資信託などとの比較から、運用商品としてのメリットやデメリットなどを解説します。資産運用における分散投資の必要性なども紹介しますので、参考にしてください。
米国国債は米国政府が発行する債券です。債券は国や自治体、企業などがお金を借りるために発行する有価証券で、借用証書のようなものといえるでしょう。
債券を保有すると定期的に利子が受け取れるほか、満期である償還日には、元本である額面の金額を受け取れます。そのため株や投資信託などとは異なり、発行体が破綻しない限り「元本割れ」はありません。
債券には、発行体別に、国が発行する国債、企業が発行する社債、地方自治体が発行する地方債などがあります。償還までの期間も短期の1年以内から、超長期の20年超まであり、さまざまな選択が可能です。
また、米国国債には利子の受け取り方によって、利付債とゼロクーポン債があります。利付債は、半年ごとに利子が支払われ、ゼロクーポン債は期間中の利子が、販売価格に反映されており、その分満期に償還される金額よりかなり安く購入可能です。
米国国債にはメリットともいえる特徴が2つあります。その1つが、数ある国債の中でも、利回りが相対的に高いことです。例えば日本国債と比較すると、2025年6月時点で日本の10年国債の利率が1.4%程度なのに対し、米国の10年国債は4.3%程度と約3倍になります。
さらに信用度の高さも特徴の1つです。もともと政府が発行する国債は、債券の中でも発行体の破綻リスクが、企業が発行する社債などより少ないと考えられています。
とくに米国国債は、世界最大の経済大国である米国政府が保証しており、一般的に考えれば、破綻などで債務が履行されない事態は起こりにくいでしょう。発行体の健全性の指標である「格付け」でも、米国国債の安全性は日本の国債よりも高い評価を受けています。
償還日に元本が戻る仕組みの債券は、株などに比べ「安全資産」といわれます。とくに利回りの水準も信用度も比較的高い米国国債は、安全に資産運用したい人には魅力的に映るでしょう。
しかし、米国国債にも避けられないリスクが存在します。まず、最も大きなリスクは「為替変動リスク」です。米国国債は日本人にとって外国の債券であり、ドル建てで購入し、利子支払いや償還もドルで行われます。
ドルで取引する以上、ドルと円の為替レートは無視できません。現状は1ドル140円台で推移していますが、もし、購入から償還までの間に円高が進行すると、円建てでの価値は減少してしまいます。
例えば、1ドル150円のときに1万ドル分米国国債を購入すれば、単純計算で代金は150万円です。しかし、償還時に1ドル100円まで円高が進むと、1万ドルは100万円にしかなりません。これでは利子をもらっても、トータルではマイナスになる可能性があります。
今後為替がどのように推移するのかは、誰にも分かりません。そのため、利回りが高い米国国債であっても、損失が出る可能性があるのです。さらに、いくら信用度が高いといっても、米国政府が破綻する可能性もゼロとはいえません。
実際に格付け主要3社は、近年、米国政府の財政悪化への懸念を理由に、最上位だった米国国債の格付けを引き下げています。国が財政破綻し、国債が債務不履行になった前例もあり、リスクがないとは言い切れないのです。
金融庁の「資産形成の基本」では、安定した資産形成のため「長期・積立」に加え、分散投資が推奨されています。分散投資とは、株式、債券、あるいは国内・国外など複数の値動きが異なる資産を、併せて運用することで、リスクを抑える投資手法です。
今回のように、米国国債だけに一気に投資すると、為替などが大きく変動した場合は損失が出る可能性もあります。そのため、資産バランスの見直しも含めて、投資商品を分散する必要性があるかもしれません。
米国国債は安全性が高いとされる国債の中でも、比較的利回りの高い金融商品です。しかし、ドル建ての外国債券であるため、為替変動によるリスクなどは常に存在し、損失が出ないとは言い切れません。
どの手法を取っても金融商品による資産運用にリスクはつきものです。資産の状況や年齢によっても、米国国債など債券の必要性は変わります。もし、親の状況が気になれば、資産運用の目的やスタンスも聞きながら、アドバイスしてみてはいかがでしょうか。
執筆者 : 松尾知真 FP2級
ファイナンシャルフィールド編集部
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