( 307081 )  2025/07/13 04:52:17  
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参政党の神谷宗幣代表 

 

 参議院議員選挙(7月20日投開票)の候補者争いが中盤に差しかかってきた。昨今の選挙戦は、ネット上での支持拡大が大規模得票につながる傾向がある。特に強い影響力を持つYouTubeでは、どの政党に勢いがあるのか。動画投稿者たちに話を聞いた。 

 

*  *  * 

 

 自民党13.9万人、立憲民主党4.4万人、公明党22.6万人……。 

 

 これは各党公式YouTubeチャンネルの登録者数だ。ネット戦略に長けているとされる国民民主党は25.9万人、れいわ新選組は38.2万人と多くの視聴者を獲得しているが、さらに上を行くのが39.9万人の参政党だ(11日時点)。 

 

「参政党支持者の熱量はちょっと異常だなと思う瞬間もあります」 

 

 こう話すのは、チャンネル登録者数約4700人、動画本数約90本のYouTubeチャンネル「にっぽん国民保守党」を運営する30代会社員のAさん。チャンネルは今年5月に開設したばかりで、当初は国民民主党に関連する国会討論や記者会見の切り抜き動画を中心に投稿していた。だが、6月中旬から参政党に関する動画投稿を始めると、再生回数が急増。チャンネル登録者数も3倍になり、収益化に成功したという。 

 

「初めは、パソコンや画像編集ソフトを買った初期投資を回収できればいいやと思っていたんですよ。でも、参政党の動画をアップした翌朝、広告収入を確認したら一気に跳ねあがっていて驚きました。今は副業ですけど、この調子なら本腰を入れようかなと思っちゃいそうですよね。ほかの投稿者たちもそうやってのめり込んでいくのかも……」 

 

■ネット上の風は国民民主党より参政党? 

 

 チャンネルの動画リストを見ると、国民民主党の動画は再生回数が1000回に満たないものが多いが、参政党の動画は大半が数万回再生されている。なかでも東京選挙区出馬の女性候補・さや氏を「最強の新人現る!」として紹介した、街頭演説の切り抜き動画は30万回再生のヒットとなった。 

 

「今ネット上で風が吹いているのは、国民民主党よりも参政党です。都議選で3議席を獲得した後、梅村みずほ参院議員が入党して現職の国会議員が5人という政党要件を満たし、メディアでの露出が増えた。期待と注目度が高まっているのをとてつもないインパクトで感じています」(Aさん) 

 

 特に人気を集めているのが同党の神谷代表だという。実際YouTube上では、演説動画があふれかえっている。その背景についてAさんは、「神谷さんの話し方は力強く抑揚があるので、30秒程度のショート動画として切り取っても、視聴者を引きつけるだけの魅力とネタがある」と話す。 

 

 Aさんは長年、「選挙はどうせ自民党が勝つし、それでいい」との思いから投票に行ったことがなかった。だが、日本経済の停滞や、裏金問題が浮き彫りになる中でフラストレーションを募らせた。昨年の衆院選で、飛ぶ鳥を落とす勢いの国民民主党に「日本が変わるかも」と希望を感じ、初めて一票を投じたという。 

 

「今年の参院選で、政治を変えたいという願いの受け皿になっているのは参政党。保守層に限らず、多くの国民が自民党政権への怒りを爆発させています。自分の動画が投票率を上げる助けになればと思っています」 

 

 Aさん同様、「元々は政治に関心がない若者の一人だった」と話すのが、YouTubeチャンネル「大人の意見が聞きたい【政治解説】」を運営する20代男性のBさんだ。SNSで参政党の話題が盛り上がっていたことで興味を持ち、今年3月のチャンネル開設以降、参政党の政策や主張について解説する動画や、演説の切り抜き動画をアップし続けている。 

 

 

■マンガの主人公を見ているような気持ちで楽しむ 

 

 チャンネル登録者数は約3万人で、動画本数は100本以上。直近のヒットは、梅村みずほ参院議員と岩屋毅外務大臣の国会質疑での“対決”を取り上げた動画で、48万回再生されている。 

 

 Bさんが参政党に魅力を感じたきっかけは、神谷代表の演説動画だ。 

 

「政治家って、わざと一般人に分かりづらく話してるのかなって思うくらい難しい言葉を使うけど、神谷さんは誰にでも分かる言葉でしゃべる。政治家のイメージが変わりました。僕の動画にも、『この動画を見て初めて政治に興味を持ちました』というコメントがたくさん届きます」 

 

 動画のコメント欄では、参政党の政策について言及する内容はあまり見かけないという。むしろ支持者たちの中で渦巻いているのは、神谷氏に対する“ワクワク感”なのかもしれない。Bさんが続ける。 

 

「政治家は口先ばかりで期待できないというあきらめが広がり、『何をしてくれるのか』ではなく『どんな人なのか』という人間的な魅力を重視する時代になったと思います。神谷さんの発言は物議を醸すことも多いですが、陰謀論やタブーとされていることでもとりあえず口にする。『次は何を言うんだろう?』と、マンガの主人公を見ているような気持ちで楽しんでいる人も多いんじゃないかな」 

 

 Bさんは、参政党を応援する気持ちで、「【衝撃】神谷宗幣が語った“日本人への重大なメッセージ”がこちらです…」「【衝撃】参政党の支持者を“爆増”させる方法が見つかりました…」といった動画を毎日投稿しているが、特定の党や政治家を妄信するのはよくないという思いもあり、熱烈に支持しているわけではないという。参政党の躍進については、「どうなんですかね……」と冷静な反応が返ってきた。 

 

「マイナスイメージにつながる大スクープが出たら、支持者が一気に離れる可能性はあると思います。軽い気持ちで支持しはじめた人たちって、そういうスクープもすぐに信じちゃうだろうから」 

 

(AERA編集部・大谷百合絵) 

 

大谷百合絵 

 

 

 
 

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