( 307141 )  2025/07/13 06:01:52  
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写真はイメージです Photo:PIXTA 

 

 宅配便で「置き配」が標準化され、「手渡し」は追加料金がかかるようになるかもしれない――この一報が駆け巡るや、老若男女で賛否両論を巻き起こしている。ネット通販利用で膨れ上がる宅配便に、全く新しいルール策定が求められる背景には何があるのか。(カーゴニュース編集部) 

 

*本記事はカーゴニュースからの転載です 

● 早ければ2026年3月末にルール改正へ 

 

 国土交通省は6月26日、「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」(座長=矢野裕児・流通経済大学教授)の初会合を開催した。 

 

 宅配便の再配達抑制を加速するため、宅配便に関して国が定めた「標準宅配便運送約款」(標準宅配約款)に「置き配」を可能とする条項を追加する改正を行う方向性を示した。次回を含め3回程度の会合を経て、秋頃に標準宅配約款の改正を提言する。 

 

 その後、意見公募(パブリックコメント)を経て省令を改正し、早ければ来年3月末までに約款の改正を行いたい考え。改正物流効率化法に基づき来年4月から大手荷主などへの規制的措置が施行されるのと合わせ、宅配便に関してEC事業者や荷物を受け取る消費者の行動変容を促していく。 

 

 政府は23年6月に策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」で物流生産性向上の目安として、宅配便の再配達率を政策決定段階での12%から6%とする目標を掲げた。次いで、翌年2月に策定した「2030年度に向けた政府の中長期計画」では、30年度までに6%まで引き下げる目標を示した。 

 

● 再配達率の目標「6%」は未達に終わる 

 

 一方、再配達率の推移をみると、宅配便大手3社(ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)のサンプル調査では22年10月調査の11.8%が、今年4月調査では9.5%。大手6社ベースの調査では22年10月時の10.6%が、今年4月時は8.4%となった。過去8年間は大手3社の再配達率を評価基準としていたが、より実態に近い再配達率を把握するため、大手6社の数値を基準とする方針に転換した。 

 

 国交省が昨年度実施した再配達率削減緊急対策事業では、置き配やコンビニ受け取り、1回での受け取りなど多様な受け取り方を選択した利用者にポイント還元を行う実証を行った。その結果、置き配を実施したケースでは再配達率が最大3.1ポイント削減できるなど有効性が確認できたことから、置き配のさらなる普及促進を決めた。 

 

 政府目標の達成に向け、再配達抑制を一層加速するため「標準宅配約款」が定める荷物の受け取り方に置き配の条項を加えることで、多くの宅配事業者が自社の約款に置き配を可能とする条項を追加しやすくする。 

 

 国が定めた標準約款の中で置き配による受け取り方が認められることで、事業者は自社の約款に置き配に関する条項を記載するハードルが下がり、荷物を発送するEC事業者や、荷物を受け取る利用者に対し、置き配による配送のあり方を提示しやすくなる。それにより、国交省は置き配による受け取り方が利用者に浸透することを期待する。 

 

● 過疎地域でドローン宅配の普及促進 

 

 標準宅配約款の改正では、置き配を促進する条項だけでなく、ドローンを活用した宅配の普及を加速することも盛り込む。特に宅配事業者の営業所が配送エリアを十分にカバーすることが困難な過疎地域などでは、ドローンを利用する方式で配送ドライバー不足に対応するよう自治体と宅配事業者に促していく。 

 

 「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」のメンバーは学識経験者のほか、宅配関係の事業者や小売・コンビニからヤマト運輸、佐川急便、日本郵便、セイノーラストワンマイル、CBcloud、全日本食品、セコマ、エアロネクストらが参加。EC事業者からは楽天グループ、アマゾンジャパン、LINEヤフーが加わった。 

 

 業界団体などからは、日本フランチャイズチェーン協会、日本通信販売協会、全日本トラック協会、不動産協会、マンション管理業協会が加わり、自治体からは宮崎県西米良村、北海道上士幌町、山梨県小菅村がメンバーとなった。行政からは事務局を務める国交省、経済産業省、農林水産省、環境省、警察庁、公正取引委員会がオブザーバーとして参加する。 

 

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