( 307186 ) 2025/07/13 06:48:28 0 00 「通勤ラッシュでも座りたい」と“始発駅”まで戻り、席を確保している同僚。定期区間外でも「改札」を出なければ問題ない? 不正乗車で「割増運賃」を請求されるリスクも解説
通勤ラッシュの時間帯でも席を確保するために、あえて始発駅まで行くという話を聞いたことがある人もいるでしょう。例えば、夕方のラッシュの時間帯に御茶ノ水駅から八王子駅までJR中央線快速を使って帰宅する際、始発駅である東京駅まで2駅分あえて逆方向に進み、座席を確保して八王子駅まで帰るという形です。
これは、一見すると上手な通勤術にも思えるかもしれません。しかし、その行動は鉄道のルール違反になる可能性があります。知らずに真似すれば、定期券を失ったり、割増運賃を請求されたりするリスクもあるのです。本記事で解説します。
電車の運賃は改札を通った駅間で決まるもの、と思っている人は多いでしょう。
そのため、本ケースのように御茶ノ水駅から八王子駅までの定期券を持っている人の場合、御茶ノ水駅で改札を通り、途中で改札を出なければ、その間には定期区間外の駅に戻って折り返したり、遠回りしたりしても問題ないと考えている人がいても不思議ではありません。
しかし、これは誤った理解です。たとえ改札を出ていなかったとしても、定期券の券面に表示された区間以外を利用すれば、それは不正乗車にあたります。
例えば、御茶ノ水駅から八王子駅までの定期券を持っている人が、東京駅まで行ってから八王子駅まで乗車したいのであれば、御茶ノ水駅から東京駅までの往復運賃が別途必要になるのです。
定期券を使って区間外の駅に行き、これが不正乗車とみなされると2つのペナルティを受けることになります。
まず考えられるのが、定期券の没収です。JR旅客営業規則第168条第1項第11号では、「係員の承諾を得ないで、定期乗車券の券面に表示された区間外の区間を乗車したとき」は、その定期券を無効として回収できると定められています。
御茶ノ水駅から八王子駅までの6ヶ月定期券の金額は10万7210円です。例えばこの定期券を使い始めてから2ヶ月後に不正が発覚し、回収されたとすれば、残り4ヶ月分に相当する約7万1400円の損失となるのです。
高額な定期券を失うことは、家計にとって大きな影響を及ぼすでしょう。
もう1つは割増運賃の請求です。旅客営業規則第265条第1項では、「不正乗車があった場合には、乗車した区間の普通旅客運賃に、その2倍に相当する額の増運賃を加えた合計額を請求できる」といった旨が規定されています。
「改札を出なければ大丈夫」と軽い気持ちで行った行為が、思いがけず大きな損失につながるおそれもあるのです。
どうしても座って帰りたいということであれば、定期券の区間を始発駅まで延ばすのが、最も現実的で負担の少ない方法です。御茶ノ水駅から八王子駅までの6ヶ月定期券は10万7210円ですが、東京駅まで区間を延ばすと12万40円になります。その差額は1万2830円です。
6ヶ月で1万2830円ということは、1ヶ月あたりに換算するとおよそ2000円程度。月に20日通勤するとすれば、1日あたりの追加負担は100円です。この金額で毎日確実に座って帰れると考えれば、検討する価値は十分にあるでしょう。
また、勤務先が神田駅であれば、東京駅まで定期券を延ばしても金額は変わりません。こうしたケースは決して珍しくなく、自分の通勤経路でも当てはまる可能性がないか、一度調べてみるとよいでしょう。
ただし、会社から通勤手当が支給されている場合、申請した経路通りに定期券を購入することが求められる場合もあるため、事前に会社の規則を確認しておくことが大切です。
「改札を出なければ問題ない」という誤った認識を持ち、定期区間外で乗車し折り返す行為は不正乗車にあたります。不正乗車とみなされた場合のペナルティは決して軽くはありません。どうしても折り返して通勤を楽にしたい場合は、正しく定期券の区間を延ばすことが現実的な対応といえるでしょう。
出典 JR東日本 旅客営業規則
執筆者 : 浜崎遥翔 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャルフィールド編集部
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