( 307441 )  2025/07/14 07:09:06  
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Hyejin Kang/Shutterstock.com 

 

2025年6月26日、家計診断・相談サービス「オカネコ」を運営する株式会社400F(フォーハンドレッド・エフ)は、全国のユーザー434名を対象に「老後資金に関する調査」を実施しました。 

 

調査によると、約8割(78.7%)の人が老後に対して何らかの不安を感じており、そのうちの35.2%は「非常に不安」と回答しています。多くの人が将来の生活に対して強い懸念を抱いていることがわかりました。 

 

このような不安の背景には、経済の先行きが見通しにくいことや、社会保障制度への信頼感が薄れていることが影響していると考えられます。特に不安を感じている内容としては、「生活費」が83.0%と最も多く、「医療費」が58.8%と続いています。ここ数年の物価上昇により、食品やエネルギー関連の支出が増えていることが、日常生活にじわりと影響を与えている様子もうかがえます。 

 

さらに、「健康面」への不安が53.8%、「介護費」に関する不安が49.7%と、加齢によって生じる体力の低下や病気、介護の必要性に伴う費用に対する懸念も多くの人が抱えていることがわかりました。 

 

老後資金の準備方法として最も多かったのは「預貯金」で、全体の75.1%を占めています。次いで「投資信託・株式」が59.9%、「公的年金制度」が55.1%と続いており、複数の手段を組み合わせて備えている人も少なくないようです。 

 

近年はNISAなどの非課税制度の拡充もあり、投資への関心も高まっていますが、それでも依然として預貯金中心で備える人が多い傾向が見られます。一方で、物価上昇や低金利が続く中で、預貯金だけでは将来が不安と感じる人も増えてきています。 

 

そこで注目されているのが、2024年からスタートした新しいNISA制度です。本記事では新NISA制度を解説し、積立投資シミュレーションで将来どのように資産が増えていくのかを試算してみます。 

 

※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。 

 

 

2024年1月、NISA制度が大きく改正され、「新NISA」として新たに運用がスタートしました。 

 

これまで、投資による利益には約20%(正確には20.315%)の税金がかかっていましたが、新NISAを活用することで、この税負担が免除されます。税制面での優遇が大きく、将来の資産形成を考えるうえで、有力な選択肢のひとつといえるでしょう。 

 

改正後の新NISAでは、制度の柔軟性と使いやすさが大きく向上しています。主な変更点は次のとおりです。 

 

●新NISA6つのポイント 

 ・非課税保有期間は無期限 

 ・「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用OK 

 ・年間投資枠は、つみたて投資枠「年間120万円」・成長投資枠「年間240万円」 

 ・非課税保有限度額は1800万円(内、成長投資枠1200万円)※枠の再利用可能 

 ・つみたて投資枠の投資対象商品は「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」 

 ・成長投資枠の対象商品は「上場株式・投資信託等」 

年間の投資上限額は、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円と設定されました。 

 

このように、新NISAは制度面でも投資対象の面でも、これから投資を始める人にもすでに運用をしている人にも使いやすい仕組みとなっています。 

 

●投資できる商品のポイント 

つみたて投資枠は、文字通り積立投資を設定することで利用できるNISA制度です。投資できる商品は「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」で、これに該当する銘柄はNISA公式Webサイト「つみたて投資枠対象商品」にて公表されています。 

 

2025年7月1日時点で、ETFを含む336本が対象です。投資信託は、売買できる銘柄が金融機関によって異なります。そのため、実際にはこの336本のうち、自分が口座開設している金融機関が取扱う商品のみが売買可能です。 

 

成長投資枠は、積立投資・スポット投資双方に柔軟に活用できる制度です。こちらは上場株やREITへの投資ができます。また、アメリカや中国などの外国株の売買にも利用できます。 

 

投資信託は、つみたて投資枠より対象銘柄が多いのが特徴です。投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品」を参照すると、2025年7月7日時点で2122銘柄が対象となっています。 

 

とくに、つみたて投資枠は初心者にとって始めやすいとされています。ただし、毎月一定額を継続して積み立てる必要があるため、多くの人にとって気になるのは「どのくらいの資産が形成できるか」という点でしょう。 

 

次章では、いくつかの前提条件をもとに、期待される資産の成長をシミュレーションしていきます。 

 

 

金融庁が公開する「つみたてシミュレーター」を活用して、月5万円を15年間積み立てて、年利1%〜5%で運用した場合の最終的な資産額をまとめました。 

 

まずは、想定利回りを1〜5%とした場合、新NISAの積立投資で資産をどのくらい築けるのか、以下の前提条件をもとにシミュレーションをしていきましょう。 

 

 ・50歳から65歳までの15年間で老後資金をつくる 

 ・積立額は毎月5万円 

 ・投資信託は「安定的な運用」を重視した1〜5%の商品 

想定利回り:資産評価額(元本部分は900万円) 

 

年1%:970万6000円 

 

元本部分900万円に対して、運用益は71万円となります。1%程度の低利率では、投資収益は限定的です。 

 

年2%:1048万6000円 

 

年利2%で運用すると、15年後の累積の運用益はおよそ149万円となります。資産全体のおよそ15%が運用益によって生まれる計算です。 

 

年3%:1134万9000円 

 

年3%なら、最終的にはおよそ235万円の運用益がうまれます。複利効果により、利回りが高いほど最終的な資産総額は大きくなることがわかります。 

 

年4%:1230万5000円 

 

投資元本900万円に対して、運用益は約330万円です。総資産の25%強が運用益によって生まれる計算となります。 

 

年5%:1336万4000円 

 

15年間にわたり毎月5万円を積み立てた場合、元本900万円に対して、シミュレーション通り、もしくはそれ以上の資産を築ける可能性があります。 

 

しかし、預貯金と違い、投資にはリスクが伴うことも忘れてはなりません。 

 

例えば、年利5%程度のリターンを期待する一方で、同じくらいの5%程度の損失が発生する可能性もあることを理解しておく必要があります。 

 

毎月の積立金額:資産評価額 

 

 ・1万円:227万円 

 ・3万円:680万9000円 

 ・6万円:1361万8000円 

 ・9万円:2042万8000円 

 ・12万円:2723万7000円 

※想定利回り:年3% 

 

運用利回りを年3%と仮定して15年間積み立てた場合、毎月6万円の積立では約1361万8000円となります。 

 

一方、毎月9万円積み立てると、2000万円以上の資産を形成できることが分かりました。 

 

ただし、収入状況によっては毎月9万円の積立は決して少額とは言えません。 

 

また、利回りが3%を下回るリスクもあるため、必ずしも2000万円に到達する保証はありません。 

 

老後資金を目的とした積立投資は、早めに始めるほど有利です。 

 

長期間の積立投資により、利益を再投資する複利効果が期待できるため、資産形成を目指す場合はできるだけ早く始めることが重要と言えるでしょう。 

 

 

NISAの公式Webサイトでは「長期・積立・分散投資」の有効性について紹介されています。 

 

まず、長期で運用すると「複利効果」が大きくなります。複利効果とは、投資で得た収益を再投資することで、収益額がさらに大きくなる仕組みのことです。投資期間が長いほど、複利効果は大きくなります。 

 

たとえば、毎月1万円ずつ積み立て、利回り3%で運用した場合、投資期間20年では元本240万円が約330万円に、40年の場合では元本480万円が約930万円になります。 

 

総投資元本は2倍の差が生まれますが、長期運用による複利効果で、最終的な総資産には3倍近い開きが生じます。 

 

また、積立投資を取り入れることで、無理なく投資を続けるのも有効な手段です。一度に多額の金融商品を購入すると、投資タイミングが投資成績に大きな影響を与えます。 

 

うまく安値で購入出来ればよいですが、高値掴みすると損失リスクが高くなります。現時点の株価や基準価額(投資信託の価格)が割安かどうかを見極めるのがプロでも難しく、相対的に難易度の高い投資となるでしょう。 

 

少額の投資を毎月続ければ、さまざまな価格で投資することになるため、最終的なリターンが安定しやすくなります。少額であれば、家計の余剰資金から拠出しやすいという側面もあります。資産運用を長く続けるうえでは、少額での積立投資が有効です。 

 

最後に、分散投資をすることで、ある資産の損失をほかの資産がカバーしてくれるため、損失リスクをおさえることができます。 

 

NISAでは投資信託や株、REITなどを通じて値動きが異なる多数の資産(国内/海外、株式/債券/不動産など)に投資が可能です。さまざまな資産に分散投資して、損失リスクを抑制しましょう。 

 

 ・金融庁「NISAを知る」 

 ・金融庁「つみたてシミュレーター」 

 ・PRTIMES「約8割が「老後不安」、生活費と医療費が二大懸念。老後資金準備状況は「二極化傾向」。若年層の「ねんきん定期便」理解不足も浮き彫りに」 

 ・一般社団法人投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品」 

 ・金融庁「NISA 資産形成の基本」 

 

中本 智恵 

 

 

 
 

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