( 307464 )  2025/07/14 07:26:26  
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エリオット波動原理は、トランプ政権による関税政策などを背景に不透明感が増す金融市場で、将来の相場を予測するテクニカル分析の一手法として注目されています。

この理論は価格が上昇する際には5つの波で構成され、下降時には3つの波で形成されるとしています。

エリオット波動の専門家、宮田直彦氏は、相場の動きをファンダメンタルズとテクニカル分析を組み合わせて予測し、今後の円相場や日経平均株価の見通しを語っています。

エリオット波動に基づく分析を通じ、宮田氏は相場のトレンドを読み解く能力を高めることに努めていると述べています。

(要約)

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【図解】エリオット波動 

 

 トランプ米政権による関税政策などの影響で、為替や株式など金融市場の先行き不透明感が強まる中、過去の価格などの推移から将来の相場を予測する「テクニカル分析」への関心が高まっている。その手法の一つ、「エリオット波動原理」による分析の第一人者である外国為替証拠金取引(FX取引)会社マネースクエア(東京)の宮田直彦チーフ・テクニカルアナリストに、今後のマーケットの見通しなどを聞いた。(時事通信経済部兼金融市場部 小代田淳一) 

 

 テクニカル分析は、過去の価格や出来高などの推移を主にチャートと呼ばれるグラフに示し、将来の市場の動きを予測する手法。相場のトレンドや勢いの強さ、転換の可能性、買われ過ぎ・売られ過ぎの水準などを示唆し、勘や感情を排除して判断するのに役立つとされる。 

 

 チャートは単純な折れ線グラフのほか、一定期間の始値、終値、高値、安値を1本のローソクの形にして並べた「ローソク足」がよく使われている。テクニカル分析手法としては、過去の一定期間の平均値を結んだ「移動平均線」を用いる方法や、複数の線と「雲」と呼ばれる抵抗帯で構成する「一目均衡表」、移動平均線と標準偏差を加減した上下ラインで成る「ボリンジャーバンド」などが有名だ。 

 

 マーケットの予測手法には、国内外の経済状況や企業業績など経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)を基に行う「ファンダメンタル分析」もある。ファンダメンタル分析で価格の割高・割安などを判断し、テクニカル分析で売買すべきタイミングを検討するといった、両分析を組み合わせる活用法もある。 

 

 テクニカル分析の手法の一つであるエリオット波動原理は、米国人のラルフ・ネルソン・エリオット氏(1871~1948年)が考案した。 

 

 エリオット波動は、相場の上昇局面で5波、下降局面で3波を描くという見方をする。株式を例に波動の動きを背景とともに説明すると、上昇局面では、ファンダメンタルズの改善前に先行きへの期待感や金融相場で上がる「1波」、失望感でいったん下がる「2波」、ファンダメンタルズの改善とともにダイナミックに上昇する「3波」、もち合いながら調整する「4波」、楽観的な見方でバブル的に上がる「5波」を経る。 

 

 その後の下降局面では、ファンダメンタルズの悪化前に下落する「A波」、もち合いながら戻す「B波」、ファンダメンタルズの悪化に伴ってパニック的に下げる「C波」のプロセスをたどり、再び「1波」に戻る。1~5波の中で、3波が最小になることはないといった決まりもある。 

 

 

「エリオット波動原理」による分析の第一人者である外国為替証拠金取引(FX取引)会社マネースクエアの宮田直彦氏 

 

 宮田氏がエリオット波動に出合ったのは1991年。証券会社に入社後、エジプトへの留学から帰国し、株式デリバティブ取引の部署に配属された時だった。国内ではバブル経済崩壊の本格化、海外では湾岸戦争の勃発や旧ソ連の崩壊などがあり、国内外の情勢が大きく変動する中、宮田氏は「どうしても目の前のニュースなどに右往左往し、非常に近視眼的な取引をしてしまうので、売買の指針のようなものが必要だと感じ、テクニカル分析を学ぼうと思った」という。 

 

 エリオット波動については同年10月、新婚旅行の飛行機の中で初めて本を読み、「目からうろこが落ち、それまでの見方を一変させられ、そこから没入した」と話す。具体的には、「目先、短期、中期、長期のいずれの見方もできるところに非常に魅力を感じた」といい、「多くて三つぐらいのシナリオを提示してくれるにとどまるが、そのどれかに極めて先見性があり、これだと思った」と振り返る。 

 

 その後、宮田氏はリサーチ部門に移り、各種アナリストランキングでテクニカルアナリスト上位の常連となったほか、的中した予想がたびたび話題になった。例えば為替では、1ドル=75円台と円が最高値を記録した2011年10月、宮田氏は15~16年までに124円台の円安になると予想。結局、15年5月に124円台に到達し、翌月には125円台の安値を付けた。この円安進行の主な要因は、12年12月に発足した第2次安倍内閣の経済政策「アベノミクス」や、日銀が黒田東彦総裁の就任後の13年4月に導入した「異次元緩和」だった。もちろん、11年時点ではこれらの出来事は予想できなかったが、エリオット波動で相場を当てることはできたわけだ。 

 

 その宮田氏に、今後のマーケットの見通しを語ってもらった。 

 

 円の対ドル相場について宮田氏は「161円90銭台を付けた24年7月から円高の時間帯に入っており、それは28年前半まで続く」と見る。詳細には、24年7月の161円90銭台からC波による円高・ドル安トレンドが進行中で、今年1月の158円80銭台からの円高・ドル安は、C波中ⓒ波に相当するとしている。 

 

 宮田氏は、「短期的には140円どころが強いサポートとなり、今年後半は150円付近か、これよりやや円安・ドル高の水準になることもあり得るが、中期的な円高基調は変わらないだろう」と語る。 

 

 また、宮田氏によると、ローソク足の年足では4年連続で陽線(円安・ドル高)になると、翌年から円高になる傾向がある。21~24年は連続で陽線だった。このほか、円安・ドル高のピークはおおむね8~9年、円高・ドル安の谷は16年半程度でそれぞれ一巡している。24年7月の161円90銭台は、前回ピークを付けた15年6月(125円80銭台)から9年後に付けた、サイクル高値とみられる。 

 

 他方、直近の谷が11年10月の75円台だったことから、当時から16年半後の28年4月ごろまでは円高基調が続くと予想。宮田氏は、同時期までの円の最高値は、「例えば1ドル=100円という円高は考えにくいが、一時的に120円ぐらいになることもあるかもしれない」と話す。なお、25年末時点では145円程度を見込んでいる。 

 

 

 日経平均株価については、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて20年3月に1万6358円19銭の安値を付けて以降、上昇局面が続いていると宮田氏は捉えている。25年4月の安値3万0792円74銭から上昇トレンド第5波にあると見ており、「25年秋から年末にかけ、昨年付けた史上最高値の4万2426円77銭は超え、4万5000円まで上昇する可能性もある」と予想する。 

 

 もっとも、米国株は年後半に急落するリスクがあるとしており、これを受け、日経平均も大きな調整局面に入ると見込んでいる。宮田氏は、「来年にかけては3万円ぐらいまでの下落はあるかもしれない」と述べ、途中過程となる25年末は4万円程度になると予想している。 

 

 最後に、宮田氏に分析で特に心掛けていることを尋ねると、「自分の今の見立てに固執し過ぎない」との答えが返ってきた。その上で、「確信があるときはアクセルをぐっと踏むが、複数の可能性があると取れるときは、あまり一つにウエートをかけ過ぎず、いつでも切り替えができるようにしている」と語った。 

 

 

 
 

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