( 307559 )  2025/07/15 04:11:01  
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神奈川県で行われる参議院議員選挙において、16人が立候補し、4つの当選枠を争う激戦が繰り広げられている。

立憲民主党の現職牧山弘恵氏や自民党新人脇雅昭氏が先行し、残る2枠を狙うのは、国民民主党の籠島彰宏氏、参政党の初鹿野裕樹氏、公明党の佐々木さやか氏。

公明党は安倍政権下の実績に影響を受けつつも、支持を回復しようと必死の訴えを続けている。

初鹿野氏は共産党との問題を抱えながらも、支持を広げている。

立憲民主党は現職の牧山氏に一本化し、安定した状況を維持している。

また、国民民主党も改革を訴えつつ競争に加わっている。

選挙戦は熱を帯びており、最終結果が注目されている。

(要約)

( 307561 )  2025/07/15 04:11:01  
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神奈川選挙区から出馬する参政党の初鹿野裕樹氏(左)と公明党の佐々木さやか氏 

 

「うわぁ……、これは」 

 

 神奈川県在住の男性(37)は報道各社の序盤の情勢調査を取りまとめた表を見るなりそう唸った。 

 

「今回は、公明党かなぁ……」 

 

 7月20日に投開票される参議院議員選挙の神奈川選挙区は、定数4に16人が立候補する激戦区だ。日本保守党を除く全ての国政政党が候補者を1人ずつ立てている。ある党の関係者は「神奈川を通せるかで全国の趨勢が決まる」として、最重点区に位置付けているという。 

 

 報道各社の情勢調査やその他の取材を総合すると、現時点では、立憲民主党現職の牧山弘恵氏(60)、自民党新人の脇雅昭氏(43)がやや先行し、残る2枠を巡って国民民主党新人の籠島彰宏氏(36)、参政党新人の初鹿野裕樹氏(48)、公明党現職の佐々木さやか氏(44)が激しく争っているとみられる。また、日本共産党新人の浅香由香氏(45)らも「当落線上まであと一歩」(陣営関係者)と懸命に前を追っている。 

 

 冒頭の男性は特定の支持政党はないが、「ガチガチの反自公」(本人)で、初めて投票した約15年前から現在まで、自民党・公明党に投票したことはないという。 

 

「第二次安倍政権がすすめた安保法制(2015年)は許せなかったし、『平和の党』とか言いながらそれを止めもせずにくっついている公明党なんて自民党と同じか、それ以上に嫌いですよ。でも、終盤になってもこの情勢が続くなら仕方がない。今回だけは公明党に入れるかもしれません」 

 

 彼が念頭に置くのは参政党の初鹿野(はじかの)裕樹氏だ。 

 

「初鹿野氏本人のことはよく知りません。でも、差別と分断をあおり、科学を無視する発信を繰り返してきた参政党は、絶対に通したくない。初めて言いますよ。公明党に頑張れって」 

 

 予想外のエールも受ける公明党の佐々木さやか氏だが、まだまだ「視界良好」とは言えないようだ。 

 

「いやぁ、厳しい戦いですよ。今回は本当に厳しい」 

 

 公明党神奈川県本部の幹部が大粒の汗を流しながら言う。 

 

 

■参政党は「共産党」とトラブルも 

 

 全国的な集票力の衰えが指摘される公明党だが、ここ神奈川も例外ではない。佐々木氏が初当選した2013年に得た票は約63万票。それが前回22年に別の候補が出馬した際は、3位で当選したものの約54万7千票にまで落ち込んだ。 

 

 いま陣営は、佐々木氏は当選圏から外れた5番手につけているとみており、必死の訴えを続ける。党幹部も続々と応援に入った。7月4日と8日には元代表で今も支持者の間で抜群の人気を誇る山口那津男氏、10日には岡本三成政調会長が応援演説し、支持者が駅頭を埋めた。 

 

 岡本氏はAERAの取材にこう話した。 

 

「(自民党の裏金問題への対応などで)わが党への風当たりは当然ありますし、自民党に厳しいことを言っていくべきだというご期待もいただいています。(参政党など)他党の勢いがどうこうは私からは言えないですけれど、あと10日(取材時点)、佐々木さんはホープですし実績も満載で仕事もできるので、何とか逆転できるように情熱と実績を訴えていきます」 

 

 対する参政党・初鹿野陣営。こちらも「いま、5番手」として支持者に投票を訴えるが、その表情は比較的明るい。陣営幹部は言う。 

 

「我々は新しい党なので一生懸命やるだけですよ。反応はいいです。若い人もたくさん足を止めてくれて」 

 

 初鹿野氏本人も手応えは感じているようだ。 

 

「梅村みずほさんが5人目の国会議員になって、やっぱりうちの代表がメディアに出られるようになってからですかね。支持が急に広がって、私たちもびっくりしています。この勢いに乗って頑張っていきたいですね」 

 

 だが、初鹿野氏は他党と“トラブル”も抱えている。 

 

 初鹿野氏は7日、日本共産党についてSNS「X」に「沢山の仲間が共産党員により殺害され、殺害方法も残虐であり、今だに(原文ママ)恐怖心が拭えません」などと投稿、日本共産党神奈川県委員会は8日に撤回と謝罪を求めて抗議した。 

 

 初鹿野氏は「白鳥事件」(1952年)などを根拠に問題ないとXに投稿し、陣営幹部も「党本部に任せているので我々としては特になにも」とどこ吹く風だが、日本共産党神奈川県委員会の藤原正明委員長は11日、AERAの取材に対し、参政党から抗議文への返答がないとして、「法的措置をとることも視野にいれている」と話した。 

 

 

■立憲は候補者「一本化」で安定 

 

 共産党支持者もおかんむりのようだ。60代の女性は、「ほんと、許せないわよね。『うそをつかない』とか、『差別はいけない』とか、いい大人になんでそんな当たり前のことを言わなきゃいけないのかしら」 

 

 その共産党の浅香由香氏は、情勢調査では当落線上からやや遅れた6番手につけている。4回目の挑戦で、過去3度はいずれも次点に泣いた。11日には志位和夫議長が応援入り。今週も小池晃書記局長らの神奈川入りを予定しているという。 

 

 国民民主党の籠島彰宏氏も当落線上で激しく争う。一時は野党第1党を伺う勢いもあった国民民主党だが、党全体の支持率は落ち込みが目立つ。それでも、「期待」の声も多く聞かれた。 

 

「長く自民党に入れていたけれど、今回は籠島さんに入れます。私は高卒だったけど正社員でずっとやってきて子どもを育てて家も建てた。でも、今の若い人はなかなか将来が見えないでしょう。私はもう引退しているけれど、若い人のためにも、国民民主党に頑張ってほしいですよ」(60代男性) 

 

 籠島氏本人は党の看板政策である手取り増のほか、農林水産省出身の経歴を生かしコメ問題などについても訴える。 

 

「手応えはあります。でも、いまの手応えが最後どうなるかは本当に未知数。風の変化はいろいろ感じますけれど、自分のなかの変化はありません。他党がどうとかは全くないです。自分の政策を愚直に訴えていくだけです」 

 

 一方、陣営関係者からはポロリと本音も漏れた。 

 

「参政党は勢いあるし、立憲さんが一本化して、安定してるからなあ」 

 

 立憲民主党は当初、現職の牧山氏のほか、前回22年参院選の欠員補充枠(任期3年)で当選した水野素子氏が出馬を予定していた。定数4に現職2人が立つ選挙戦は共倒れの危険もあったが、5月に週刊文春が水野氏のパワハラ疑惑を報道。直後に水野氏が出馬を取りやめて牧山氏に一本化した経緯がある。籠島陣営からすると、立憲が2人立てればその2人よりも上位に入れる皮算用があったのかもしれない。 

 

 神奈川選挙区にはほかに、れいわ新選組新人の三好諒氏(40)、日本維新の会新人の千葉修平氏(53)らも立候補している。 

 

 灼熱の選挙戦も、残り約1週間。激しいつばぜり合いが続く。 

 

(AERA編集部・川口穣) 

 

川口穣 

 

 

 
 

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