( 307971 )  2025/07/16 06:52:16  
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日本銀行本店 

 

15日の国債市場で、日本の金利が軒並み上昇した。長期金利は一時、リーマン・ショック直後の2008年10月以来、約16年9カ月ぶりの高水準を付けた。20日投開票の参院選で与党が苦戦するとの見方から財政拡張路線が強まる懸念が生じ、国債が売られ、金利を押し上げた。市場では22年秋に英国で減税策への反発から株・債券・通貨が同時に売られた「トラス・ショック」が日本で再現されるリスクも意識されている。(米沢文) 

 

長期金利の指標である新発10年債(379回債、表面利率1・5%)の利回りは一時、1・595%まで上昇した。新発30年物国債の金利が過去最高水準をつけるなど、超長期債への売り圧力も強まった。 

 

金利上昇をもたらした主因は、マスコミ各社が報じた参院選の中盤情勢だ。いずれも与党は劣勢に立たされており、消費税減税を公約に掲げる野党との連立や政策協議を意識させる内容となっている。 

 

立憲民主党や日本維新の会が主張する食料品の消費税率を期間限定で0%とする場合は年5兆円程度、国民民主党案の実質賃金が持続的にプラスになるまで消費税率を一律5%にする場合では年10兆円超と、巨額の財源を必要とする。 

 

財政が悪化すれば、国が将来、国債の利払いや元本の償還ができなくなったり、歳出を賄うために国債を増発するリスクが出てくる。最悪の場合、日本国債の格下げにもつながりかねない。 

 

国債を保有する投資家は魅力が薄れた債券を売りたがる一方、買い手となる投資家はリスクを負う見返りに、より高い利回りを求めるため、金利が上昇する。 

 

多くの市場参加者の念頭にあるのが、トラス・ショックだ。当時のトラス英政権が財源の裏付けがないまま大規模減税を打ち出したことで、英国金利の急騰とポンドの急落、株安といった市場の混乱を引き起こし、退陣に追い込まれた。 

 

日本の足元の金利上昇も市場からのサインと見る向きは強い。大和総研の熊谷亮丸副理事長は「不透明な政治情勢から歳出拡大に拍車がかかることが懸念されている」と指摘する。 

 

長期金利の上昇は財政の重荷となるだけでなく、住宅ローンなど家計負担にもつながりうる。加藤勝信財務相は15日の記者会見で「国債に対する市場の信認が失われないよう、適切な財政運営に引き続き努めたい」と述べた。 

 

 

 
 

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