( 308331 )  2025/07/18 03:22:28  
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日本ペンクラブ会長の桐野夏生さん(2021年5月のペンクラブ会長選出時に撮影) 

 

作家らでつくる一般社団法人日本ペンクラブは7月15日、参院選を前に外国人を排斥する主張や根拠のないデマが拡散されている状況に対し、「民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための『デマ』や『差別的発言』によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません」と強く批判する声明を発表した。 

 

声明では、「与野党を問わず、一部の政党が外国人の排斥を競い合う状況が生まれています。しかも、刺々しい言葉で、外国人を犯罪者扱いし、社会の邪魔者のように扱うことが、さも日本の社会をよくするかのように振舞っています」と指摘。 

 

一部の党や候補者が、外国人を問題視するような政策を掲げている現状について、「『外国人犯罪が増えている』『外国人が生活保護や国民健康保険を乱用している』『外国人留学生が優遇されている』といった、事実とは異なる、根拠のないデマが叫ばれています。これらは言葉の暴力であり、差別を煽る行為」だと批判した。 

 

またこうしたデマや差別扇動が、1923年の関東大震災で朝鮮人虐殺につながったことにも言及。その歴史を踏まえた上で、「少しずつでも、成熟し前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための『デマ』や『差別的発言』によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません」と訴えた。 

 

声明は、小説「やさしい猫」で入管行政の問題点を描いたことでも知られる常務理事の中島京子さんが呼びかけて急遽作られた。 

 

中島さんは同日の記者会見で、「デマに惑わされる形で票が伸びて、国の政策に差別を根拠にしたものが反映されるのはとても怖いこと」「デマを正当化するために真実が歪められていくことが起こるのもとても怖かった」と述べた。 

 

また、「日本ペンクラブは表現の自由を大切にする団体」とした上で「表現の自由とはデマを拡散する自由ではない」とも指摘した。 

 

会長の桐野夏生さんは、記者から「排外主義的な主張が支持を伸ばす背景には何があると考えるか」と問われると、「一つには貧困があるのではないか。貧困の中で攻撃する相手を見つけていくのは、ヨーロッパでも見られる。貧困も大きな問題であると思う」と語った。 

 

副会長で専修大教授の山田健太さんは、SNS上のデマ拡散に危機感を示し、「小さい力かもしれないが、ペン(クラブ)が声をあげることで考えるきっかけになるかもしれない。投票する前に、友達と議論する時に、いったん立ち止まって、SNSの情報が本当なのか、威勢のいい言葉が本当に自分たちが求める社会につながるのか考えてほしい」と呼びかけた。 

 

声明全文は以下の通り。 

 

 

「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」 

 

私たちは、このまま社会が壊れていくのを見過ごすことはできません。 

 

参議院選挙を通じ、与野党を問わず、一部の政党が外国人の排斥を競い合う状況が生まれています。しかも、刺々しい言葉で、外国人を犯罪者扱いし、社会の邪魔者のように扱うことが、さも日本の社会をよくするかのように振舞っています。 

 

「違法外国人ゼロ」「日本人ファースト」「管理型外国人政策」など、表現の仕方は違えど、外国人を問題視するような政策が掲げられ、「外国人犯罪が増えている」「外国人が生活保護や国民健康保険を乱用している」「外国人留学生が優遇されている」といった、事実とは異なる、根拠のないデマが叫ばれています。これらは言葉の暴力であり、差別を煽る行為です。こうしたデマと差別扇動が、実際に関東大震災時の朝鮮人虐殺等に繋がった歴史を私たちは決して忘れることはできません。 

 

私たちはこれまで、過去の反省に立って多文化共生社会をめざし、すでに多くの自治体ではそのための条例も施行されています。そうして少しずつでも、成熟し前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための「デマ」や「差別的発言」によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません。 

 

民主主義社会を守るために、有権者がいま一度立ち止まり、自身の一票を大切に行使することを願います。 

 

2025年7月15日 

一般社団法人日本ペンクラブ 

会長 桐野夏生 

理事会一同 

 

 

 
 

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