( 308806 )  2025/07/19 06:39:58  
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 日本ではその一挙手一投足が報じられる、大谷翔平の妻・真美子さん。ただし在米35年のマーケター、岩瀬昌美氏によれば、「真美子さんはアメリカでよしとされる女性像に少し当てはまらない」という。米国人女性の価値観と、真美子さんへのアドバイスを岩瀬氏が伝える。 

 

※本稿は岩瀬昌美著「大谷マーケティング 大谷翔平はなぜ世界的現象になったのか? 」(星海社新書)から抜粋、再構成したものです。 

 

 これから私が語る大谷さんの奥さん、真美子さんのアメリカでの評価についても、日本にいる方にはなかなか理解しにくいかもしれません。とてもアメリカ的な考えに基づくからです。 

 

 2024年シーズン前、日本ではテレビのワイドショーも、スポーツ新聞も、ネットでも大谷と田中真美子さんの結婚に関するニュースでいっぱいでしたね。あまりにも報道が加熱したことを反省したのか、2025年になって第一子が誕生したときはそれほど取り上げられていない印象を受けました。一方、2024年当時、アメリカでまともに報じられていたのは「大谷が結婚した」というところまでです。 

 

 ロサンゼルス・タイムズや全国放送のCNNでも報じられてはいますが、あくまでも単発記事としてサラッと触れるだけで、日本のように号外まで出る大騒ぎはされていません(私はあまり読まないですが、どこかのゴシップ誌くらいでは特集されたかもしれません)。 

 

 2024年当時、アメリカでは大谷の結婚よりも国民的歌姫テイラー・スウィフトの熱愛報道の方が盛り上がっていました。テイラーはグラミー賞を14回受賞しており、レコード業界団体の国際レコード産業連盟が発表した、「2023年に世界で最も楽曲が売れたアーティストランキング」で、2年連続4回目の首位に輝く大人気歌手です。 

 

 その絶大な人気から一挙手一投足が注目されているわけですが、彼女のボーイフレンドは2024年のNFL優勝決定戦「スーパーボウル」で連覇したカンザスシティ・チーフスのトラビス・ケルシー。2人の熱愛が発覚したのは2023年秋ですが、大谷の結婚が話題になった2024年でもアメリカのありとあらゆるメディアが取り上げ続けていました。 

 

 2024年2月には日本でもテイラーのコンサートが開かれましたが、終了後すぐに自分のプライベートジェットに乗って米国に戻り、彼氏のスーパーボウルの試合を観戦しました。NFLによるとテイラー・スウィフトによる経済効果は3億3100万ドル(500億円)もあったそうです。 

 

 

 さて、大谷選手の結婚を見てふと思い出すのが、元バスケットボール選手の田中真美子さんが結婚する前に選手を引退していたことです。大学生時代にユニバーシアード(学生版オリンピック)の日本代表に選ばれた実力者であるのに、と疑問を覚えます。本人は引退時、その理由について「本当にいろいろあるんですけど……これ以上難しいかなって」と語っていましたが、やっぱり大谷選手と結婚することも引退の理由の一つだったのだろうかとも想像されてしまいます。 

 

 対してテイラーはケルシーと結婚したとしても、エンターテイナーであり続け、歌手を辞めるようなことはないと思います。そして今のアメリカ人女性にとっては、テイラーのような「何もかも手に入れる女性」こそが憧れの対象です。 

 

 アメリカにも有名人の奥さんになって専業主婦として幸せに暮らす人はいます。が、今の若い世代の女性は、そういったライフスタイルには興味を示すでしょうか?どんなパートナーがいても自分は自分らしく、自分の人生は自分で作る――日本でも人気のジェニファー・ロペスも、MLBニューヨーク・ヤンキースの元スター、アレックス・ロドリゲス選手と婚約していましたし(その後破棄)、マライア・キャリーも同じく元ヤンキースのデレク・ジーターと交際していました。が、誰も自分のキャリアを捨てようとはしませんでした。そして男性も成功した女性をパートナーにしています。 

 

 こう考えると、真美子さんはアメリカでよしとされる女性像からは少し離れているでしょうか。どちらかというと日本的な昭和の良妻賢母のイメージに近いようです。 

 

 例えば日本では、大谷選手の奥さんの真美子さんが、5000円のバッグを持っていることが話題になりました。旦那さんがお金持ちなのに贅沢もせず主婦の鑑だというのです。 

 

 アメリカではこんな些細なことはニュースとして取り上げられませんでしたが、日本では、このことからわかる真美子さんの質素さ、旦那さまの3歩後ろを歩くような生き方について称賛するコメントが多数ありました。それを見て私は少し日本が心配になってきました。 

 

 彼女がとても素敵な女性ということはテレビを見ていてもわかります。でも弱冠28歳、結婚の1年前にして自分のキャリアを捨てて、大谷選手の奥さんというアイデンティティだけで日本人女性の平均寿命89歳までの残り60年を生きていくのは、同じ女性としてあまりおすすめできません。 

 

 真美子さんがアメリカで夫のサポート役に徹するのではなく、彼女らしく輝いていける道もあると思います。 

 

 

岩瀬昌美著「大谷マーケティング 大谷翔平はなぜ世界的現象になったのか 」(星海社新書) 

 

 アメリカでは、お金持ちになった人の暗黙のルールとして、寄付やボランティアで社会貢献することが求められます。 

 

 そして、同じくロサンゼルスに20年以上住む私が真美子さんにおすすめしたいのは、プロバスケットボール選手だった経歴を活かし、地元ロスで女子バスケットのオーナーあるいはアンバサダーになることです(もしこれを真美子さんが読んでいたら、最適な人につなぎますのでぜひ私までコンタクトください)。 

 

 NBAロサンゼルス・レイカーズのスーパースターであった故コービー・ブライアントも、リタイア後は男性スポーツでなく、女性の権利のために女子スポーツの強力なアンバサダーになりました。娘が4人いたことも影響したのでしょう。 

 

 日本の方からは「アメリカは男女平等でうらやましい」と言われますが、アメリカでも本当の男女平等は実現できていません。例えばNBA選手と女子バスケ・WNBAの選手の給与は40倍も違います。ここで真美子さんが、例えば貧困層が多く住んでいるカーソン市などで女子バスケチームを設立してコーチでもしたら、テイラー・スウィフトのようにきっと米国中の女性から憧れられるような女性になるだろうと思います(本人が望んでいるかは別の問題ですが)。 

 

 ポルシェに乗る大谷選手に対して、5000円のバッグを身に着けていることにより「日本的美しさ」を称賛される真美子さんではなく、自分で稼いだお金でエルメスでもシャネルでも持ってもらいたい。真美子さんには日本だけではなく世界中の若い女性の憧れの女性になってもらいたいな、と私は願っています。 

 

岩瀬昌美 

 

 

 
 

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