( 308906 )  2025/07/20 03:04:47  
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一般労働者の平均給与は緩やかな上昇傾向にある(写真はイメージ)=ゲッティ 

 

 参院選では一部の政党が外国人政策を巡り、外国人労働者の増加によって日本人の賃金が上がらないという発信を繰り返している。果たして事実なのか。専門家2人に取材した。 

 

 ◇百田氏と神谷氏が主張 

 

 日本保守党の百田尚樹代表は6月26日の記者会見で「データで言うとだいたい日本人の給料の7割くらいで働いている。安い労働力がどんどん入ってくると当然日本人の給料が上がらない」と主張した。 

 

 参政党の神谷宗幣代表は同月30日に国会内であった報道各社のインタビューで「人が足りなければ賃金を上げて人を集めるが、たくさん供給すると当然賃金は下がる。外国の方は平均値を取ると日本人より3割くらい安く働いている現実もあり、安い労働力として見られる」と述べた。 

 

 ◇外国人の平均給与が日本人の「7割」は事実 

 

 厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2024年)によると、一般労働者の平均月給(残業代など除く)は約33万円。外国人労働者は約24万円(勤続年数3・3年)で、一般労働者の7割程度にとどまるのは事実だ。 

 

 一方、一般労働者の平均月給は緩やかではあるが上昇傾向で、14年と比べて約3万円増えている。 

 

 厚労省の外国人雇用状況によると、外国人労働者数も年々増加し、24年10月末時点で230万2587人と過去最多を更新した。 

 

 ◇是川氏「直接の影響は考えにくい」 

 

 国立社会保障・人口問題研究所の是川夕・国際関係部長は、外国人と日本人の平均賃金の違いについて「大半は、外国人が若いことや勤務先の企業規模が小さいといったことに起因する見かけ上のものだ」と説明。同じ職場で働く日本人との格差は小さいとし、「外国人労働者が増えると日本人の賃金が上がらないということは現状では言えない。証明されていない」と指摘する。 

 

 日本では少子高齢化に伴い、生産年齢人口(15~64歳)が減少傾向で今後も減り続ける見通しだ。 

 

 内閣府の高齢社会白書(25年)によると、生産年齢人口は24年で7373万人だったが、50年には5540万人にまで落ち込むと推計されている。 

 

 是川氏は「毎年、生産年齢人口が40万~100万人減る傾向は向こう50年、100年変わらない。仮に年間30万人の外国人を受け入れても、人手が足りない職の方が多い。外国人労働者の増加が、日本人の賃金に直接影響を与えることは考えにくい」との認識を示す。 

 

 ◇友原氏「賃金は複合的な要因が絡む」 

 

 移民政策に詳しい青山学院大の友原章典教授(国際経済学)は百田氏と神谷氏の発言について、外国人労働者の受け入れ数など具体的な条件が示されておらず、経済学的な観点からは「何とも言うことができない」とする。 

 

 賃金への影響について「海外の景気や企業の内部留保などさまざまな要因が複雑に絡み合う。外国人労働者はあくまで一つの要因にすぎないという観点が抜けているのではないか」と指摘した。【畠山嵩】 

 

 

 
 

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