( 309031 )  2025/07/20 05:35:04  
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勢いを増す参政党の神谷代表 

 

 参院選は7月20日に投開票が行われる。選挙戦も最終盤を迎えたが、最近になって「参政党が掲げる“日本人ファースト”は在日外国人排斥、ヘイトスピーチの可能性が高い」との批判や報道が目立つ。批判が増えている背景として参政党が参院選で“台風の目”になっていることが挙げられる。多くの有権者が支持しているのは一目瞭然であり、テレビ朝日の報道ステーションは予測獲得議席を「15前後」と報じて注目を集めた。 

 

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 参政党は1人区でも善戦が報じられており、全国各地で自民党、立憲民主党と三つ巴の争いを繰り広げている。そのため参政党に対する強い警戒感を表明している政治家の一人に立憲民主党の野田佳彦代表がいる。担当記者が言う。 

 

「野田氏は7月13日に大阪市内で記者団の取材に応じ、参政党を批判しました。野田氏は“日本ファースト”なら自国第一主義で許容範囲内だが、“日本人ファースト”は外国人排斥、人種差別を招きかねないと指摘。『ちょっと危ない論調だと思います』と牽制しました。さらに15日には政府が外国人政策の司令塔として『外国人との秩序ある共生社会推進室』を新設したことに触れ、『間違いなく日本人ファーストにあおられた動きだ』と自民党も批判しました」 

 

 メディアではTBSの「報道特集」が12日、参政党の主張を批判。その内容に参政党が反発したこともあり、ネット上では今でも賛否両論の激しい論争が起きている。 

 

「『報道特集』は参政党の神谷宗幣代表が選挙中、外国人問題に関してどのような発言を行ってきたか焦点を当て、いわゆる“ファクトチェック”を実施しました。そして参政党の『在日外国人は日本人より優遇されている』との主張は事実に反していると結論づけたのです」(同・記者) 

 

 番組では専門家も取材に応じ、「参政党は外国人差別を煽動している可能性が高い」と批判した。 

 

「参政党はTBSに抗議しましたが、TBSは公益性や公共性の高い報道だと反論しています。またメインキャスターを務める山本恵里伽アナウンサーが番組で参政党に対する違和感をコメントしたことで、ネット上では山本アナウンサーに対する賛否両論も激しい議論となっています。大手メディアでは他にテレビ朝日の『羽鳥慎一モーニングショー』や共同通信などが参政党の主張に疑問を投げかける報道を行いました」(同・記者) 

 

 だが、参政党の主張には外国人排斥、ヘイトスピーチの可能性があるとの指摘が注目を集めるほど、「参政党に対する攻撃だ」という反論もネット上では増えている。Xから実例をご紹介しよう。 

 

《参政党だけ目の敵。明らかに異常》 

《参政党ばっかり選挙妨害が来る。なんなら殺害予告まで来る。オールドメディアは露骨に叩く》 

《野田に限らず、参政党のキャッチコピーを批判している人は勉強不足、政策内容を理解していない証拠》 

《報道特集の偏向報道は明らかな放送法違反であり、選挙期間中の間接的 落選運動》 

 

 

 ネットメディアで選挙報道を担当している編集者は「もし本気で参政党を批判し、参政党の躍進にブレーキをかけたいのなら、差別やヘイトとの論点は逆効果なのではないかと思います」と言う。 

 

「『参政党は外国人を差別している』との批判には、『全ての在日外国人を差別する意図はない。コンプライアンス意識の低い、場合によっては刑法に抵触している在日外国人が野放しにされていることを問題視している』との反論が可能だからです。実際、ある外国人タレントが参政党の主張に疑問を投げかけると、ネット上では『真面目な外国人は日本にいていい』との反論が殺到しました。さらに別の外国人タレントが『参政党の主張を支持しているのは健全なナショナリズムであり、排外主義とは無関係』とXに投稿しました。この論点では『差別した/差別していない』という水掛け論で終わってしまう可能性が非常に高いのです」 

 

 外国人に対する政策とは異なり、参政党は以前から“トンデモ”な主張を繰り広げてきた。例えば神谷代表は以前、陰謀論らしき言説を主張したことがある。 

 

 週刊新潮が7月17日号に記事を掲載し、これをデイリー新潮が7月9日に「『参政党の神谷さんは陰謀論に染まり切っている』 元党員が証言 『勉強会で語る”歴史の真実”は陰謀史観そのもの』」とのタイトルで配信した。該当部分を引用する。 

 

《しかし、その神谷代表には、著作などで陰謀論らしき言説を主張していた過去がある。以下は神谷代表の編著『参政党Q&Aブック基礎編』からの抜粋である》 

 

《〈Q27 参政党のメンバーが言う「あの勢力」とは何でしょうか?〉》 

 

《A ユダヤ系の国際金融資本を中心とする複数の組織の総称です。(中略)日本は「あの勢力」に数百年前から標的にされ続けてきました。私たちが歴史で学んだ出来事の多くの背後には「あの勢力」が存在していたのです〉》 

 

「他にもネット上ではメロンパンが話題になっています。参政党は“食の安全”を主要な政策として掲げていますが、過去にはなぜか小麦粉を敵視していた時期がありました。その際、街頭演説で『メロンパン1個を食べて翌日死んだ人をたくさん見ています』と主張したことがあり、その動画が発掘されて拡散しています。参政党サイドは『党の公式見解ではなく、一種のデマだ』、『発言したのは元共同代表であり、今は党を離れている』と打ち消しに躍起です。しかしSNSでは『街頭演説は動かしようのない事実であり、デマとの反論は間違っている』と呆れた声が目立ちます」(前出の記者) 

 

 他にも神谷代表が党の公式動画で「天皇陛下に側室をやっぱり持っていただいてですね、たくさん子どもを作っていただく」と発言し、物議を醸したこともある。 

 

 

 さらに党の公式サイトには「親日本憲法(構想案)」を掲載しているが、専門家の間では「国民主権を否定しているほか、徴兵制を念頭に置いている可能性もある」と内容に憂慮する声が根強い。 

 

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「参政党の結党時を知る関係者から話を聞いたことがあります」と言う。 

 

「参政党の結党メンバーの中に、元共産党員や共産党の元シンパがいたそうなんです。そのため参政党は共産党の組織作りを参考にしたところがあり、具体的には党員の獲得に力を注ぎました。自民党は政治家の力が強く、党員は関係団体の職員が名前だけ貸すことも珍しくありません。一方の参政党は党員の発言力が政治家より強く、これは旧ソ連や中国共産党を彷彿とさせます。その結果、何が起きたかと言えば、党員の要望がストレートに党の主張になるため、公約や政策が非常に雑多で粗雑なものになっています」 

 

 参政党がネットを効果的に活用し、党員や支持層を上手に集めていることはよく知られている。だが井上氏は、その手法はいつか限界を迎えると指摘する。 

 

「本質的に参政党はニッチな有権者を掘り起こして党員とし、ニッチな政策を主張して注目を集めてきました。結局のところ、今の“日本人ファースト”でさえもニッチなキャッチフレーズに過ぎません。今後の参政党が今以上の注目を集める政党になったとしても、有権者の過半数が本気で外国人を排斥しようと動くことはないでしょう。今回の参院選で参政党は人気の“上限”を迎えたと見るべきであり、これからは参政党に批判的な声もネット上に多く投稿され、拡散していくと考えられます。もし本気で参政党の伸長に危機感を覚え、参政党の躍進にブレーキをかけたいのなら、まともに反論するとむしろ参政党を利することになります。なぜなら真正面の批判は“弾圧だ”と党員やシンパを団結させるからです。参政党を批判するために最も有効な方法は無視することではないでしょうか」(同・井上氏) 

 

デイリー新潮編集部 

 

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