( 309401 )  2025/07/21 06:14:11  
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“学歴詐称”問題について会見を開いた田久保眞紀・伊東市長(時事通信フォト) 

 

 これまで何度も報じられてきた、政治家の経歴詐称疑惑。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏が、昨今、注目を集めている静岡県伊東市の田久保眞紀市長の“学歴詐称”問題について、思うところをつづる。 

 

 この猛暑をさらに暑苦しくする話題。言うまでもない、静岡県伊東市の田久保眞紀市長(55才)の“学歴詐称”問題よ。 

 

 彼女が市長に初当選したのは5月25日。就任以前は、同市の市議会議員を2期半ばまで務めていて、その前はカフェ経営やら何やら異色の経歴を持つ、同市初の女性市長として“時の人”だった。6月の市の広報誌には「平成4年 東洋大学法学部卒業」とある。前市長も前々市長も高卒だったというから、大卒の女性市長に期待を寄せた人も多かったんだよね、きっと。 

 

 しかしながらそこに水を差したのが、6月初めに市議全員に届いた「東洋大学卒ってなんだ! 彼女は中退どころか、私は除籍であったと記憶している」という差出人のない怪文書なの。 

 

 さぁ、それからよ。6月25日の市議会で取り上げられると、田久保市長は議長と副議長に卒業証書らしきものを見せたんだけど、それが「チラ見せ」で、コピーは取らせない。さらに議会で聞かれると、「(そうした追及は)極めて悪質で卑劣な行為であり、民主主義への挑戦だ。法的手段も考えている」と決めつけた。さらに、「この件に関してはすべて代理人弁護士に任せている」と言ったことから、第2幕の幕開け~。 

 

 だけど、幕を開けるまでもないよね。多くの人は田久保市長が「代理人」とか「法的手段」と言った瞬間、「あ、コレ、大学は卒業していないな」と思ったんじゃない? だいたい学歴なんて出身校から卒業証明書を出してもらえば済む話。法律の出番じゃないっしょ。 

 

 市長も、6月末に東洋大学に出向いて新たに卒業証明書を取ろうとしたと記者会見で語っている。そこで「私は卒業ではなく除籍ということが判明しました」とやけにキッパリ言うから、てっきり「ごめんなさい。市長を辞めます」となるかと思えば、「選挙のときに大卒と言ってないから法に違反していない」だの、「そもそも大卒だと思い込んでいた」だの、挙げ句の果ては「なぜ私の手元に議長に見せた卒業証書があったのかわからないから捜査当局に調べてもらう」だの。 

 

 会見のたびに言うことがコロコロ変わるだけじゃない。「私の経歴にまつわることで市民に迷惑と心配をかけたことを深くお詫びしたい」としおらしく頭を下げたかと思えば、次の瞬間、クスリと笑ったり、肩をすくめたりして、まさかのかわいこぶりっ子?かと思えば、ダークスーツ一択のはずのお詫び会見にピンク色のジャケットって、この人、どうなってるのよ! 

 

 だいたい私は、「正直言って」というフレーズを連発する人はウソつきだと思っている。「人の口から出る言葉はウソ偽りのないもの」という世界観の中にいたら、あえて「正直」という単語を強調することはないもの。あと、「お恥ずかしい話」を連呼する人も、心の中では本当に恥ずかしいと思ってなくて、何かをごまかそうとしている。……とまぁ、彼女の会見のたびにいろいろ考えさせられるんだわ。 

 

 

 一方で今回、「そもそも政治家を学歴で選ぶ方が間違っている」と言う人がいるけど、何言ってんの、だよね。 

 

 有権者のほとんどは候補者のことをよく知らない。その知らない人に票を入れるのは、政策と経歴が決め手だけど、政策の方は「頑張ったけど邪魔する人がいてできない」という逃げ道がある。てか、そうした言い訳は聞き飽きた。 

 

 特に調べたワケじゃないけれど、市の人口が15万人を超えると、東大卒の市長が多くなるという話を聞いたことがある。さらに大きな市になると、外国の大学卒とかね。その頂点に立つのが、カイロ大学を優秀な成績で卒業された東京都知事の小池百合子さんよ。ん? 怪しい? オダマリ! とにかく卒業証書はその人の品質保証書だから、それが虚偽だとハッキリしたら、辞職を申し出るのも当然でしょ。 

 

 それにしてもよ。私が気の毒だと思うのは、伊東市の職員なの。だって市長が会見を開くたびに苦情の電話が鳴り止まなくなるんだよ。電話に向かって頭を下げている大勢の職員を見て、田久保市長はなんとも思わないのかしら。 

 

 で、思うんだけど、私らもそろそろ「女性初」というキャッチフレーズで「よし!」と思うのやめない? 女性は、正直でしがらみがなくて思い切った改革ができると思いがちだけど、男もいろいろ、女もいろいろ。もう少し丁寧に人物を見ないと誰のためにもならないんだな、と“泥沼・田久保劇場”に熱くなりつつ、クーラーの部屋から一歩も出られない私は思うのでした。 

 

【プロフィール】 

「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。 

 

※女性セブン2025年7月31日・8月7日号 

 

 

 
 

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