( 309416 )  2025/07/21 06:33:06  
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「生活保護なのにスマホ持ってるの?」と言われ困惑…「不正受給」の割合は多い? 保護費で「ぜいたく」している? 人々が知らない“制度の現実”とは 

 

生活保護受給者に対して、「生活保護なのに○○持ってるの?」「○○しているの」「不正受給じゃないの」と思う人もいるかもしれません。生活保護は国民の権利ですが、生活保護受給者に厳しい目が向けられるケースも残念ながら多いようです。 

 

実際に、生活保護で不正受給はどのくらい発生しているのでしょうか。本記事では生活保護不正受給の実態や、生活保護で持てるものや持てないものを解説します。 

 

そもそも、生活保護とはどのような制度なのでしょうか。生活保護は、国民の最低生活の保障と自立を助ける目的で、困窮の程度に応じて必要な保護を行う制度です。生活保護を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。 

 

生活保護を受ける際の条件として、「資産や能力などあらゆるものを活用すること」があります。つまり、不動産や車、預貯金など活用できる資産があれば活用しなければならず、原則として不動産や車は売却して生活費に充てなければなりません。 

 

ただし、絶対に不動産や車が持てないわけではありません。例えば、車であれば売却価値が低く、次のような場合に該当すれば保有が認められます。 

 

・障害者が通勤、通院などで車を使用する場合 

・公共交通機関が不便なため、通勤、通院などに車が必要な場合 

・深夜勤務などで通勤に車が必要な場合 

・6ヶ月程度で保護から脱却できる見込みがある場合 

 

また、生活必需品と認められたものも所有できます。生活必需品とは、普及率が70%を超えていることが判断の基準です。スマートフォンの世帯保有率は2024年時点で90.5%のため、生活必需品として所有が認められます。テレビやエアコンなども、同様の考え方により所有可能です。 

 

ただし、スマートフォンなどを購入するには、生活保護費の中からやりくりしなければなりません。生活保護費は決して多い金額ではありませんから、そこから購入できる機種は限られます。また、料金プランも月々の生活を圧迫しないように工夫する必要があります。 

 

 

生活保護といえば不正受給者が多く、生活保護費で高級車に乗ったり、旅行に行ったりしているイメージがある人もいるかもしれません。不正受給が実際にどのくらいあるのか調べてみました。 

 

令和5年度の1ヶ月平均の生活保護を受けている世帯は165万478世帯で、令和5年度の保護費は2兆7872億8351万6000円です。一方、不正受給の件数は2万3786件で、金額は97億3563万8000円でした。件数ベースでの不正受給の割合は1.4%、金額ベースでは0.3%です。 

 

100億円弱が不正受給されていると考えると大きな金額ではありますが、生活保護を受けている人のほとんどは不正受給に関係ありません。「生活保護=不正受給」と短絡的に考えるのは大きな間違いといえるでしょう。 

 

生活保護の申請は国民の権利です。今は生活保護に関係がないと思う人でも、加齢や病気などによって、生活保護が必要な状況になるかもしれません。 

 

一方、生活保護の制度は複雑で、本来は受給できる人でも支給が認められない場合があります。例えば、親族から支援を受けているために申請が却下されるケースです。却下によって「自分は生活保護を受けられない」と思い込んで、生活がさらに困窮する場合もあります。生活保護について偏見をもたず、正しい理解をもつことが大切です。 

 

生活保護を受給するには、原則として不動産や車は持てませんが、例外はあります。また、スマートフォンやテレビなどは生活必需品として保有可能です。 

 

生活保護の不正受給は極めて少なく、多くの人は不正受給に関係なく暮らしています。生活保護費は決して多くはないため、ぜいたくはできません。生活保護について偏見をもたず、正しい理解を深めていきましょう。 

 

出典 

厚生労働省 生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて 

総務省 令和7年版情報通信白書(PDF版) 

厚生労働省 全国厚生労働関係部局長会議資料(令和6年度 詳細版資料) 

厚生労働省 生活保護の被保護者調査(令和5年度確定値)の結果を公表します 

 

執筆者 : 山根厚介 

2級ファイナンシャルプランニング技能士 

 

ファイナンシャルフィールド編集部 

 

 

 
 

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