( 309796 )  2025/07/22 07:37:16  
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与党は大敗。石破首相は続投の意向を示したが、今後どうなるのか(写真:代表撮影/ロイター/アフロ) 

 

前回の「日本株にいきなり今年後半の超重要な1週間がやってきた」(7月7日配信)では、予想どおりのせめぎ合いとなった。先々週(7月7〜11日の週)は、ETF(上場投資信託)で配当金捻出のための売りが出る中で、日経平均株価の下値は一度も3万9500円を切らない強さを見せた一方で、上値も4万円まで上昇にタッチしたのは「オプションSQ(特別精算指数)値」だけで、現物は4万円に到達しなかった。 

 

■14〜17日「日経平均4回の上昇」で年後半相場が見えた 

 

 このように、勝ち敗けをつけようがない展開となったため、筆者は自らのブログやラジオ・テレビの担当コーナーで「重要な週」は「1週間延長」(14〜18日)とした。ところがその「延長した1週間」だった先週も、勝敗の結論は出なかった。 

 

 しかし、決して期待感が見いだせなかったわけではない。日経平均の先週の日中の動きを見ると、14日は10時〜14時まで、15日は13時〜大引けまで、16日は後場寄り〜13時すぎまで、17日は寄り付き直後〜大引け直前まで、ほぼ一直線に上昇する場面があった。 

 

 いかにも「待たせたね、さあこれから行くよ」と言わんばかりの動きに、筆者は恥ずかしながらその都度期待した。残念ながらそれは4度も裏切られることになったが、逆に言えば、筆者を4度も期待させたこの動きに、年後半相場の姿が見えた。 

 

 この4度の動きをどう解釈すべきか。4月初めのトランプ関税の大波乱で、多くのファンドはキャッシュ比率を上げ、ポジションを「警戒型」にした。だが、その後の上昇で通常のポジションに戻す作業が、参議院選挙前の様子見相場の「薄目の板」(上記の4日間とも、東証プライム市場の出来高は15億株前後の低レベル)のため、動きが目立ったとみたほうがいいのではないか。 

 

■日本企業の業績は言われているほど悪くない 

 

 それだけではない。アメリカはすでに四半期決算発表が本格化しているが、日本企業についても、3月本決算企業の第1四半期決算を中心に、今週から出て来る。 

 

 例を挙げれば、アメリカは21日ベライゾン・コミュニケーションズ、22日コカ・コーラ、23日テスラ、IBM、アルファベットなどだ。一方、国内でも24日は信越化学工業、ニデック、三菱自動車、中外製薬、キヤノン、25日にはファナック、スクリーンHDなどが第1四半期の実績を発表。通期見通し公表も期待される。 

 

 

 日経平均の予想EPS(1株当たり利益)でみても、決して悲観するほどではない。同EPSは2月13日には2564円と史上最高になっていた。トランプ関税による景気減速懸念から、5月12日には2410円まで下げたものの、年後半の景気減速や円高懸念がある中で、7月18日現在では2537円と、高値をうかがっている。 

 

 もちろん、この予想EPSは1ドル=140円台がベースとなっているため、130円台の円高でもなると、通期見通しが下方修正される可能性はある。しかし、そうならないだろうと思われる事象が、アメリカで起きた。 

 

 16日に、ドナルド・トランプ大統領はSNSで再びジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長解任の可能性を発信したが、直後に株安ドル安となったとたん、すぐに記者を集め、パウエル氏の解任を否定した。 

 

 大統領が利下げを強く要求していることとは矛盾するが、結局、これで「ドル安を極端に嫌っている大統領」が証明されたことになり、年末130円台の円高の可能性はかなり小さくなった。 

 

 さらに日銀が発表するマネーストック(M3、経済全体に供給されているお金の総量)でみても、6月は1616兆2000億円と過去最高だった。 

 

 また、7月の主要銀行貸出動向では、資金需要D1(「増加」から「減少」を指し引いた指数)が+3と、前回4月の+8を下回ったものの、金融機関の86%は「横ばい」と回答しており、想定内の動きだった。7月のインフレ経済に対応する日銀以外の金融機関の動きを見ると、引き続きお金はジャブジャブ状態が続くとみていいだろう。 

 

 さらに、活発な自己(自社)株買いも続いており、「金(カネ)対株のバランス」も良好である。世界市場では、その需給バランスの影響で、17日にはナスダック総合指数とS&P500種指数がそろって史上最高値となり、翌18日においても、ナスダック総合指数は5営業日連続で史上最高値を更新した。出遅れているNYダウ工業株30種平均も、4万4000ドル台に戻り、昨年12月4日の史上最高値4万5014ドルの背中が見えてきた。 

 

 

 その他の市場も、先週は英国のFTSE100指数が一時史上最高値を更新。また、大きく下げていたとはいえ、中国・上海総合指数も年初来高値となっている。また、主要国の株価指数以外では、影響力の大きいフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)も、年初来高値を更新し、2024年4月10日の史上最高値に迫っている。このように、トランプ政策の不透明感がある中で、世界の株価は良好である。 

 

■歴史的大敗でも結果は「想定内」 

 

 さて、日本株においては、外国人投資家が12年ぶりの「15週連続買い越し」の中で、重要な注目材料であった参議院選の結果が出た。多くのメディアの事前予想は「非改選分をあわせた自民・公明の与党議席数は過半数ギリギリか過半数割れか」となっていた。 

 

 果たして、選挙後は「買い」か「売り」か。以下の3つのケースに分けて考えたい。まず第1のケース。「予想で売って結果で買う」という相場格言があるが、格言どおり「ギリギリの結果」なら、勝っても負けても株は「買い」となる。 

 

 「負けても買いか」と思うかもしれないが、「ギリギリ」はほぼ「半々」ということだから、ネガティブととらえて売っている投資家と、ポジティブととらえて買っている投資家は半々と考えられる。予想の範囲内なら株価にとってプラスマイナスでゼロだが、相場は不透明感を嫌っているので、不透明感が解消した分、勝っても負けて「買い」ということになる。 

 

 問題は予想外の結果になったときだ。それは与党にとって「予想以上の高い数字が出たとき」(第2のケース)か、逆に「予想以上の惨敗になったとき」(第3のケース)だ。当然、第2のケースは「買い」、第3のケースは「売り」とみるのが一般的だ。 

 

 今回は与党が改選分では歴史的敗北は喫したものの、非改選を合わせると結果は第1のケースとなったため、「買い」でよさそうだ。 

 

 もちろん相場は今後も続く。見てきたように、日本株が大きく下がる要因は見当たらない。上げたところは買わず、下げたところを買う姿勢を崩すべきではない。それが年後半相場を勝つ姿だ。 

 

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています) 

 

平野 憲一 :ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト 

 

 

 
 

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