( 310216 )  2025/07/24 05:34:28  
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赤沢亮正経済再生担当相 

 

暗礁に乗り上げたかにみえた日米関税交渉が、一転して合意に至る急展開をみせた。日本経済への悪影響は一定程度抑えられることになり、経済界からも合意を評価する声が上がった。ただ、高水準の関税は依然残り、政府には国内企業の資金繰り支援などきめ細やかなサポートの取り組みが求められる。 

 

「和気あいあいというより、国益をかけたギリギリの真剣勝負だった」 

 

赤沢亮正経済再生担当相は22日、米ワシントンで記者団の取材に応じ、合意に至ったトランプ氏との会談を振り返った。 

 

トランプ氏と面会することは訪米前には決まっていなかった。ラトニック米商務長官らと協議する中で浮上したという。 

 

■トランプ氏に響く提案用意 

 

日本政府は自動車を中心に一連の関税措置の見直しを求め、特別扱いに難色を示す米側との交渉は難航を極めた。それでも合意できた背景には、トランプ氏に響く提案を用意したことがある。 

 

トランプ氏は自動車やコメの貿易を巡り、日本に対して不満をあらわにしていた。このため政府は、米国車の輸入時の認証手続きの簡素化や、米国産米の輸入拡大を約束して、同氏の顔を立てたことが奏功した格好だ。 

 

米側から関税率で譲歩を引き出したことで、日本経済への悪影響は抑えられる。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算では、自動車関税と相互関税を15%とする今回の合意で、国内総生産(GDP)は0・55%押し下げられる。交渉が不調で8月1日に相互関税が25%に引き上げられていれば、押し下げ効果は0・85%まで拡大していた。 

 

■経済界から評価の声 

 

経済界からは評価の声が寄せられた。経団連の筒井義信会長は「国益にこだわって粘り強く交渉した成果が実った」と歓迎。自動車業界関係者も「関税率が下がったことは評価する」と話した。 

 

しかし高水準の関税がかかる状況に変わりはない。木内氏は「最悪の事態は防げたが、重しは残った。体力がある企業であれば対処できるかもしれないが、景気後退局面に入るかどうかのライン上にある」と分析する。 

 

上智大の前嶋和弘教授は、対米投資拡大の動きも相まって「企業が工場を国内から米国に移して産業空洞化を招くかもしれない」と指摘。一方で体力のない中小企業などは、国内で厳しい経営を迫られる可能性もある。 

 

政府には今後、こうした指摘を踏まえ、企業の資金繰りや雇用維持を支援する取り組みが求められる。赤沢氏は「合意の内容を精査し、影響を受ける国内産業をどう支えるか速やかに検討して対策を講じる」と話した。(中村智隆、福田涼太郎) 

 

 

 
 

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