( 310426 ) 2025/07/25 03:47:04 0 00 参政党の憲法草案
参議院選挙で躍進した参政党が5月に発表した「新日本憲法構想案」について憲法学が専門の九州大学の南野森教授に聞いた。
南野教授は一般の会社員や主婦のアイデアから作成された参政党の憲法案について「プロジェクトはとても面白い」とした上で、「政党が責任を持ってホームページに発表する前に専門家によるチェックが必要だったと思う。一番の問題は(「思想及び良心の自由」「信教の自由」「表現の自由(言論・出版の自由)」といった)人権の部分がごっそり抜け落ちていることだ」と指摘した。
また、参政党の憲法案に「違憲審査権」が記されている点については「これは日本国憲法でも行われているとても重要なことで、一言で言うと『法律が多数決でとんでもないものになった場合に、裁判所が無効にしてくれる』という人権の最後の砦のような制度だ。これは例えば『こういう法律を作ったら表現の自由を侵害して憲法違反だ』と指摘するものだが、参政党の憲法案に権利・自由条項がないので、『何に違反しているのか?』という疑問が直ちに出てくる。だからまだ不十分だ。神谷代表や弁護士でもある安達悠司氏は『元々ある人権にプラスするもの』などと言っているが、条文に記されていないために“次のリーダー”が『俺は知らない』と悪用されるかもしれない」と述べた。
安達悠司氏
一方で、参政党も主張している現行の日本国憲法の課題については「(法律よりも厳格な改正手続きが必要な)硬性憲法、硬い憲法は、時々の多数派によって簡単に変えられないようにしている。いろいろな事態に対応できるように条文が抽象的になったりしがちで、どうしても解釈に幅が出てくるがそのために裁判所と先述の違憲審査制があるのだ。仮に最高裁判所が危ない裁判官ばかりになったりすると恐ろしい話だが、それでも比較すると、今回の参政党の憲法案より、私は日本国憲法の方が100倍いいと思う」と主張した。
参政党の憲法案3条「天皇は、全国民のために、詔勅を発する」については「僕はちょっと驚いた」として以下のように述べた。
「明治憲法では、天皇には勅令という法律と同じような(効力を持つ)命令を出す権限が与えられていた。そのことで議会が対立したり、多数派と少数派が激しくぶつかったりして政治が決定できなくなった時に『よし、じゃあ天皇様に勅令を出してもらおう』といわゆる“天皇の政治利用”がされる可能性が生じ、これで日本は道を誤った。だから戦後、新しい憲法をつくる時に、天皇と国政の距離を徹底して取るようにした。天皇をどのようにイメージするか好き嫌いはあると思うがそれは価値観だ。だが、よからぬ勢力に天皇が利用される危険性があることを指摘しておく必要があると思う」
神谷代表
5条「国民の要件は、父または母が日本人であり、日本語を母国語とし、日本を大切にする心を有することを基準として、法律で定める」について「偏った意見と言われるかもしれないが、これは本当に危ないと思う」と主張した。
「神谷代表は外国人が帰化する時に“宣誓”を考えていると言った。例えばアメリカ合衆国の憲法に忠誠を誓うとか、あるいは日本でも公務員になる時に日本国憲法を守ることを宣誓することが求められているのであり得るのかもしれない。だが、先述のようにこの条文をこの後の政治家が見た時に、どういう法律を作るだろうかという可能性を我々は心配しなくてはいけない」
7条「婚姻は、男女の結合を基礎とし、夫婦の氏を同じくすることを要する」については「今、全国5つの高等裁判所で全て『同性婚が認められていないことは違憲』と言っているが、それに対する意思表示だろう。『夫婦の氏』も選択的夫婦別姓が今年の通常国会で法案が審議されたが、こういう動きに対して強硬な保守派は一貫して反対している。この辺りは価値観の問題というか、同性婚賛成・反対、選択的夫婦別姓賛成・反対があると思うが、それを憲法で決めてしまうと、硬性憲法であるため変えづらくなる」と指摘した。
16条2項では「報道機関は、偏ることなく、国の政策につき、公正に報道する義務を負う」については「防衛の章にこれを書くことは怖いと思った」と述べた。
「『ちゃんとテレビなどで参政党の政策も公平に扱ってほしいという人々の思いが反映された』など安達氏議員は言っており、その気持ちはわかるが、条文に書いてしまうとこれが乱用される原因になる。現在でも、テレビ報道については放送法で中立義務・公正義務が定められている。それをどう解釈するかは議論があるが、厳しくしすぎると、憲法21条の表現の自由を侵害することになるため、あまり報道機関に厳しく言いすぎてはいけないという“歯止め”になっている。ところが、憲法に『報道機関は公正に』と書くとそういう歯止めがなくなってしまう。憲法に『報道機関はこういう風に、国の政策に反することを言ってはいけない』などと書くのは自由民主主義の国家にはないと思う。こういうことが許されるのは、共産党の方針を批判してはいけないという中国・北朝鮮などの独裁国家・非自由主義・非民主主義の国家の憲法にしかないと思う」 (ABEMA/ニュース企画)
ABEMA TIMES編集部
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