( 310619 )  2025/07/25 07:16:33  
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ガソリン税・暫定税率の廃止の可能性が高まってきており、8月の臨時国会での議論が予定されています。

暫定税率が廃止されれば、ガソリン価格は148.1円に下がると見込まれ、ユーザーにとっては直接的なメリットがあります。

しかし、一方で税収が減少し、特に地方自治体の財政に影響を及ぼす可能性も指摘されています。

自動車産業界でも議論が進む中、ガソリン価格は原油価格に大きく影響されるため、将来的な価格の安定性には不安が残ります。

今後の動向を注視しつつ、税金制度の見直しや地域社会への影響についても考えを深める必要があります。

(要約)

( 310621 )  2025/07/25 07:16:33  
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 ついに、いわゆるガソリン税・暫定税率廃止の可能性が出てきました。 

 

 これまで慎重な姿勢をとってきた自民党から、8月の臨時国会でガソリン税・暫定税率に関する議論を進める用意があるとの動きが出てきたからです。 

 

 関係閣僚などの発言をもとに、各種報道が相次いでいます。 

 

加藤財務相が「ガソリン減税」に言及、今後どうなる?【画像クレジット:時事通信社/石破茂首相(左)と加藤勝信財務相(右)】 

 

 では、暫定税率が廃止されると、ガソリン価格はいくらになるのでしょうか。 

 

 経済産業省・資源エネルギー庁が毎週発表している、石油製品価格調査によりますと、直近の7月14日時点でのガソリンの店頭価格は、レギュラーガソリンが173.2円。 

 

 ガソリン1Lあたりの暫定税率は25.1円ですので、一気に148.1円になる計算です。 

 

 ユーザー目線では、暫定税率がなくなればガソリン価格が下がるという直接的なメリットがあるので、暫定税率廃止は大歓迎だと言えるでしょう。  

 

 一方で、暫定税率がなくなると税収が減り、特に地方自治体の財政を圧迫するのも事実です。 

 

 例えば、石破総理が愛媛県で参議院選挙の遊説の際、ガゾリン暫定税率廃止そのものについては肯定したものの、「地方税分で愛媛県で57億円(の損失)」と数字を強調しています。 

 

 こうした税収が、道路・トンネルの整備、また最近発生することが増えた道路の埋没の修繕や予防などに不可欠だとして、ガソリン暫定税率廃止した場合の財源をあり方を、与野党と地方自治体でさらに協議する必要あるとの姿勢を示しました。 

 

 暫定税率のルーツは、1970年代のオイルショックの際に財政を支えるために登場し、その後に国が法的な解釈を変えてきました。 

 

 現状では、石破総理が指摘するように、道路など社会インフラ向けの財源として活用されいます。 

 

 つまり、消費者にとって暫定税率廃止が自身が暮らす地域社会において、ネガティブな要因になりかねないとも言えるでしょう。 

 

 では、自動車産業界にとってはどうでしょうか。 

 

 自動車メーカー等でつくる業界団体の日本自動車工業会(自工会)は昨年9月、「令和7年度 税制改正・予算に関する要望」を公表し、これを議論の叩き台として、日本の税金制度のあり方を議論する与党税制調査会で自動車の税金についての議論が行われ、年末に「平成7年税制改正大綱」として取りまとめられました。 

 

 その中で、車体課税を中心に自動車に直接関わる税金について、2026年4月からの抜本的な改正に向けた道筋が示されています。 

 

 車体課税とは、自動車を所得時と保有時に自動車の所有者に対して直接的にかかる税金のこと。具体的には、性能環境割(旧所得税)、自動車税(軽自動車税含む)、そして自動車重量税です。 

 

 このうち、性能環境割については廃止して、消費税に一本化。また、自動車税(軽自動車税含む)と自動車重量税を融合させた新しい税体系をつくる可能性があります。 

 

 ただし、自工会は昨年9月の時点では、暫定税率を含めたいわゆるガソリン税の関して、言及していませんでした。 

 

 そこで、自工会がの会長と副会長が参加した今年3月の定例会見で、筆者が「車体課税の抜本改革についての自工会と税制調査会、財務省、総務省等との協議の進捗を教えてほしい。あわせて、これまで自工会として言及のないガソリン税の暫定税率に対する見解を知りたい」と質問しています。 

 

 これに対して自工会側からは、「1.車体課税については各方面と協議中。協議の進捗については、メディア向けに適宜、情報開示する」、「2.暫定税率はガソリン税のみならず、自動車重量税にもかかっていることも考慮する必要がある」との回答でした。 

 

 7月下旬時点で、自工会から車体課税や暫定税率の協議に対する進捗状況についてメディア向けの説明の機会はまだありません。 

 

 そうした中で、いわゆるガソリン税の暫定税率廃止が、車体課税の抜本的な改正よりもひと足早く、実現に向けて動き出している状況です。 

 

 自工会としては、こうした政治の動きを注視しながら、各方面との意見調整を進めることになるのではでしょうか。 

 

 いずれにしても、ガソリンや軽油の価格で最も大きな要因は原油価格であり、原油のほとんどを海外から輸入している日本にとって、ガソリンや軽油の価格をコントロールすることが難しいという状況に変わりはありません。 

 

 近年では、コロナ禍とウクライナのロシア侵攻が欧州のエネルギー安全保障に大きな影響を及ぼし、結果的に原油価格も上昇する事態に。 

 

 国は「燃料油価格激変緩和補助金」として、2022年1月から令和6年度補正予算まで総額8兆1719億円を投入してきました。 

 

 直近では、「燃料油価格定額引下げ措置」が講じされているところです。 

 

 さらに、参議院選挙の結果を踏まえて、いわゆるガソリン税の暫定税率廃止を、当初計画の4月から前倒しする協議を始めたという経緯です。 

  

 現時点では、原油価格の変動があるていど落ち着いている状況ですが、今後は世界情勢によっては原油価格が高騰し、暫定税率分がすっ飛んでしまい、国は再び石油元売りに対する補助金を増額する事態になることも想定されます。 

 

 いま、世の中の大きな関心事になっている、いわゆるガソリン税の暫定税率廃止の議論。 

 

 ユーザーとしては、暫定税率が廃止なってもまだなお、ガソリンや軽油の価格は今後も不安定であることを理解する必要があります。 

 

 あわせて、是非ともこの機会に、自動車を所有・保有・利用する際の税金の在り方と、地域社会の未来を私事として捉えて頂きたいと思います。 

 

桃田健史 

 

 

 
 

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