( 312046 )  2025/07/31 04:11:53  
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正念場に立つ石破総理 

 

 第1回【高まる“石破おろし”に「総裁を変えたぐらいで自民党の票は戻らない」と識者が断じる理由…頼みの「組織票」は先細りで“結党以来の危機”との声も】からの続き。自民党総裁でもある石破茂首相(68)は7月23日、党本部4階の総裁室で3人の首相経験者と会談を行った。麻生太郎(84)、菅義偉(76)、岸田文雄(67)──の3氏と進退を巡る話し合いは1時間20分に及んだという。(全2回の第2回) 

 

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 会談で口火を切ったのは麻生氏。石破首相に対して「首相では選挙に勝てないという民意が示された」と発言、退陣を勧告するニュアンスをにじませたという。担当記者が言う。 

 

「麻生さんと石破さんには確執があります。2009年8月の衆院選で自民党は大敗し、旧民主党による政権交代が実現しました。麻生さんが首相に就任したのは前年の08年9月で、この時点では麻生さんに国民的な人気があったので早期に衆院を解散し、総選挙で勝利することが期待されていました。ところが麻生政権がスタートするとアメリカでリーマン・ショックが発生し、世界的な大不況に発展します。そのため麻生さんは総選挙を延期、経済対策に注力する姿勢を見せたのです。これに一部の自民党議員が反発して“麻生おろし”が起きました」 

 

 その“麻生おろし”の中心人物の一人が石破首相だった。そのため今回の“石破おろし”では麻生氏が中心人物の一人になっている。 

 

「自民党は先の参院選で大敗したため、石破さんの責任を問おうと両院議員総会の開催を求める署名活動が行われています。その署名活動を担っているのが麻生派の議員です。さらに昨年9月に行われた自民党総裁選は石破さんと高市早苗さん(64)の決選投票となり、高市さんが敗北しました。敗れた高市さんに麻生さんが接近し、現在に到るまで親密な関係を築いてきました」(同・記者) 

 

 7月23日、高市氏は親しい国会議員を10人程度引き連れ、麻生氏と衆議院宿舎で会談を行った。ただし取材陣の取材には「台湾の話をした」と煙に巻いた。 

 

 政治アナリストの伊藤惇夫氏は「高市さんは非常に保守的な主張を貫き、激しい賛否両論の対象になっているのはご存知の通りです」と言う。 

 

「そのため高市さんが総裁選に勝って新しい自民党総裁に就任し、首班指名選挙にも勝って新しい首相となると、支持する有権者と不支持の有権者が激しく対立し、日本もアメリカのように国が2つに分断されるという指摘は少なくありません。まるで高市さんが次の首相になるのは決定的というような言説も散見されますが、私は高市さんが自民党総裁選で勝利するのは、それほど簡単なことではないと考えています。第1の理由として挙げたいのは、麻生さんの存在です」 

 

 麻生氏は高市氏の“後見人”であるかのような行動が続いている。これが党内の反発を招く可能性があるという。 

 

「麻生さんの行動は、昭和の自民党から延々と続く“キングメーカー”の再来と受け取られるのではないでしょうか。“ポスト石破”の有力候補として高市さんの存在感が増せば増すほど、『旧態依然とした麻生さんのイメージは、有権者の反発を招く懸念が強い』という党内の異論も激化するかもしれません」(同・伊藤氏) 

 

 

 参院選の歴史的大敗を踏まえ、「自民党は大刷新を断行する必要がある。麻生さんの行動は、それとは逆だ」と憂慮している国会議員は少なくないという。 

 

 そのため“反高市”の声が党内から出る背景としては、高市氏の思想性──彼女が極端な保守派であるか否か──は、それほど関係ないという。あくまで麻生氏の問題であり、彼が“キングメーカー”というイメージを有権者に与えることが怖いというのだ。 

 

「2点目に挙げたいのは、高市さんの支持層が減っていることです。今回の参院選で、高市さんに近い旧安倍派の参院議員が相当数、落選してしまいました。保守的な思想を持つ有権者で以前は自民党を支持しており、最近になって参政党の支援者となった層も、当分の間は参政党支持に留まるでしょう。たとえ高市さんが新総裁になっても自民党支持に戻ってくれるとは限りません。高市さんの支持基盤は、前回の総裁選より揺らいでいるというのが正直なところだと思います」(同・伊藤氏) 

 

 高市氏がダメなら、小泉進次郎氏(44)ならどうだ──という声も自民党内には少なくないという。 

 

「自民党の国会議員と話をすると、小泉待望論を語る議員の多さに呆れてしまいます。彼らは『農水相としてコメ高騰問題に対処し、国民から支持を受けた。新しい総裁、首相に就任すれば自民党の支持は増える』と期待するのですが、そんな甘い認識だからこそ参院選で大敗するのだ、と批判したくなります。小泉農水相を評価したのはテレビや新聞といった大手メディアだけであり、市井の有権者はずっと醒めた目で見ていたことを忘れてはなりません。小泉さんが新総裁、新首相に就任したとしても、それだけで自動的に自民党の支持率が回復することはあり得ないのです」(同・伊藤氏) 

 

※本記事の日本会議に関する記述に誤解を招く表現がございました。事実と異なる部分について削除させて頂きます。関係者の皆様にお詫び申し上げます。 

 

 第1回【高まる“石破おろし”に「総裁を変えたぐらいで自民党の票は戻らない」と識者が断じる理由…頼みの「組織票」は先細りで“結党以来の危機”との声も】では、自民党に吹いている逆風がどれほど深刻であり、党の分裂、崩壊も決して絵空事ではないことを、第2回と同じように伊藤惇夫氏の解説で詳細に報じている──。 

 

デイリー新潮編集部 

 

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