( 312602 ) 2025/08/02 04:34:55 0 00 記者会見する田久保真紀伊東市長(左)=31日夜、静岡県伊東市内(青山博美撮影)
学歴詐称の疑いが指摘され、進退が問われていた静岡県伊東市の田久保真紀市長は31日夜の記者会見で、先の選挙で掲げた公約を「実現することをお約束したい」と述べ、一度は「市長辞任」を表明していた自身の態度を一変させた。学歴詐称の疑惑については「(東洋)大学にもう一度出向き、確認させていただきたい」と述べるにとどめた。大学を「卒業」したことを示すものとして市議会の正副議長や市職員に見せていた「卒業証書」とされる資料も公表せず、会見中に市長のそばに座っていた担当弁護士は、捜査機関への提出を「拒否」する考えを示した。会見では数々の「疑惑」は晴れずに残った。
■「全身全霊で、結果で返す」
田久保市長は会見で、強い口調で「使命を全身全霊を傾けて実現してまいりたい」と続投を宣言した。
「メガソーラー計画も新図書館建設計画も水面下で激しく動いている。大切な財産である、伊豆高原の美しい自然、山々の森が破壊され、ソーラーパネルで埋め尽くされてしまうということからこの地域を守ること、美しい海が次の世代に受け継がれていくこと、そこのこだけは何があっても諦めるわけにはいかない」と涙を浮かべながら、「必ず結果でお返ししたい」と訴えた。
■「『卒業見込み者扱い』になっていたかも確認する」
この日の会見に先だち、7日の会見では「卒業証書」が本物であることを証明するために捜査機関でもある地方検察庁に上申し、「上申が済み次第、極めて短期のうちに速やかに辞任したい」と述べ、辞任をしたうえで再度、市長選挙に出馬し、信を問う方針を示していた。だが、この日は違った。
「大学からなぜ除籍になったのか、除籍が確定する以前には卒業見込み者の扱いになっていたか事実関係を確認させていただきたい。分かり次第、市民にそのことを説明してまいる所存です」と「辞任」を撤回した。
「卒業証書」の上申についても、発言が変わった。「卒業証書」とされる資料を保管している弁護士は「弁護士が保管しているものを捜査機関が押収することがあってはならないと考えている」と述べ、捜査機関への提出を「拒否する」と翻意した。
■百条委で証言した「知人」が誰か「心当たりない」
会見場に集まった記者らがその場にいた担当弁護士に、さらに疑問点をぶつけようとしたところ、田久保市長は「『私の方から答えるように』という声をいただいている。弁護士が答えると疑う姿勢が見えて『怖い』といわれている」と弁護士から補足で説明しようとしたのを遮った。
「自分への刑事告発がどのような形で行われているか分からず、検討しなければなりませんので今、ここでお答えすることは差し控える」「申し訳ありませんが…」などと、繰り返し明言を避けた。
学歴問題を受け、この日の会見を前に、市議会に設置された調査特別委員会(百条委員会)には、田久保市長とかつて市民活動を共にした「知人」が証人尋問に出席していた。
そこで「知人」が「(大学)卒業はしていないと(田久保市長)本人から聞いていた」と証言したことについては「その知人が誰であるのか心当たりがはっきりしない。大学を卒業していないことをその方に申し上げたこと、いつ、どこでどういった場所で発言しているのか、証拠となるようなものを提出しているのなら、確認させていただきたい」と市議会側に反論した。
「本来であれば、私しか取得しえない個人情報、『除籍』という(大学からの)処分を(学歴問題が発覚するきっかけとなった)〝怪文書〟を書いた人が知りえていたのか、得体のしれない怖い、不安という、不安定な気持ちに襲われた」と、自身の心境を語る場面もあった。
■「百条委への出席、拒否しているわけではない」
百条委に自身が出席していないことを問われると、「出席を拒否しているわけではない」と抗弁した。「どのようなことを証言しなければならないのか、出席するよう要請されたときに、(出席要請書に)記載がなかった。百条委からどのような理由で出頭し、何を証言しなければならないのか、しっかり示してもらったら出席を検討する」と述べた。
■「説明責任果たしたとは思わない」
「説明責任を果たせているとは思っていない」とも口にした。だが、学歴問題については「今年6月28日に大学の窓口に出向いて初めて『除籍』と知った」と繰り返した。
記者との質疑応答は最後までかみ合わないまま、会見は1時間で切り上げられた。(高木克聡)
|
![]() |