( 312667 )  2025/08/02 05:48:58  
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多くの来場者でにぎわう大阪・関西万博会場の大屋根リング=7月、大阪市此花区 

 

大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催中の大阪・関西万博の入場券収入などで賄う運営費が8月中にも黒字となる見込みとなった。万博は準備段階からコストの上振れやパビリオンの建設遅れなどもあり機運醸成が課題だったが、開幕後は会場の様子がSNSなどで発信され、入場券販売が加速した。 

 

万博の運営費は、人件費の高騰などを受けて当初想定していた809億円から1160億円に増額。このうち969億円(約84%)を入場券収入で、110億円(約9・5%)を公式グッズ販売のロイヤルティー収入などで賄う計画だ。 

 

万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)は運営費が黒字化する入場券の販売枚数を、価格(平日大人6千円)などに基づき1840万枚と設定。販売実績は7月25日時点で累計1705万枚となり、現状の週40万~50万枚のペースで売れ続ければ、8月下旬にも損益分岐点を超える見通しとなった。 

 

万博協会の副会長を務める大阪府の吉村洋文知事は1日、記者団に運営費が黒字化する見通しを示した上で「万博の中身が充実し多くの人が魅力を感じている結果。公式グッズの販売も好調と聞いている」と強調した。 

 

万博を巡っては、会場建設中に地下廃棄物から発生したガスが爆発する事故が起きたほか、一部の海外館の建設が開幕に間に合わないなど課題が山積。開幕前の入場券販売は目標とした1400万枚の7割程度の970万枚にとどまり、運営費が赤字となった場合の新たな公費負担も懸念された。 

 

開幕後はユスリカの大量発生やレジオネラ菌検出による水上ショーの中止などトラブルも発生。しかし、実際に来場した人々がSNSなどで会場内の情報を活発に発信したことで評価は高まり、入場券販売が促進された。閉幕までの駆け込み需要による収益の上積みも期待される。 

 

ただ、マイカーを駐車場に止めてシャトルバスで会場に向かう「パーク・アンド・ライド(P&R)」の利用が想定より低迷。バスの運行は料金収入で賄っているため、赤字なら収支に影響する可能性もあり、万博協会幹部は「まだ楽観できる段階ではない。閉幕に向け万博の魅力発信を強化していく」としている。 

 

■会場建設費はカバーせず、最低ライン 

 

 

ただ、今回の黒字化は会場運営費に対するもので、会場建設費の最大2350億円の予算などをカバーするものではない。会期が半年間の万博は、テーマパークのように長期的に運営して建設費などを回収することはできないのが実情で、「運営費の黒字化は最低ラインに過ぎない」(専門家)との指摘もある。 

 

一方、黒字化で収益金が生まれれば、その活用方法などを検討する必要がある。1970年の大阪万博や2005年の愛・地球博では収益金を活用して財団が創設された。大阪公立大の橋爪紳也特別教授は「閉幕後に万博のレガシー(遺産)を残すためにも同様に財団などを創設し、次世代に万博の理念を伝えるべきだ」と訴えている。(山本考志、黒川信雄) 

 

 

 
 

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