( 312707 )  2025/08/02 06:33:25  
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 クルマを運転していると、自分では当たり前にやっているハンドル操作が、後続車にとっては"予測不能の地雷"になっていることがある。特に近年、SNSでも話題になりがちな「あおり運転」とは別軸で問題視されているのが「無意識のあおりハンドル」だ。事故を未然に防ぐためにも、自分の運転を今一度振り返ってみたい。 

 

文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobestock(トップ画像:captainT@Adobestock) 

 

 運転歴が長くなればなるほど、無意識のうちに身に付いてしまうのがハンドル操作のクセだ。 

 

 狭くもない交差点を左折する時、コンビニの駐車場に入るために左折する時に、一度右方向に不必要に大きく膨らんで曲がる。これこそが"あおりハンドル"の正体である。 

 

 大型バスやトラックを運転しているわけでもないのに、前走車が大きく膨らんできて肝を冷やした……というドライバーは多いのではないだろうか。 

 

 左折で膨らむ運転は、後続車にとっては「どこへ行くつもりなのか」が読めず、ブレーキのタイミングを狂わせる原因になる。特に初心者や慣れていないドライバーが後ろにいると、余計に混乱を招くのだ。 

 

 さらに、不用意に膨らんで曲がると、対向車や歩行者、バイクともヒヤリとする場面が増える。思わぬ接触事故を招かないためにも、自分のハンドル操作を客観視する必要があるだろう。 

 

 あおりハンドルをしているドライバーは「曲がりやすいから」「車両感覚が不安だから」という理由で膨らんでしまうが、これは根本的に車両感覚の誤解だ。 

 

 周囲からすれば、その大きくはみ出した軌道は完全に予測不能で、後続車だけでなく、対向車にも危険を及ぼす。特に夜間や悪天候では、ライトだけで進路を把握するのが難しくなるため、ヒヤリとする場面が増えるのだ。 

 

 バイクがその隙間をすり抜けようと考えるケースもあり、とっさの回避行動や接触で姿勢を崩すと、クルマよりも不安定なバイクは転倒を免れない。命の危険すらあるのだ。 

 

 道路交通法では、「車両は、左折する時は、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿って(道路標識等により通行すべき部分が指定されている時は、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない」(道路交通法第34条)と決められている。 

 

 この内容は運転免許取得したドライバーであれば、誰もが勉強したはずだ。「クセだから仕方ない」では済まされないのが現実なのである。 

 

 ※幅が狭い道や角度がキツイ道に入る際は仕方がない場合もある。 

 

 

 それでは、無意識の"あおりハンドル"を減らすためにはどうすればいいのか。最も効果的なのは、自車の内輪差と車両感覚を正しく理解することだ。 

 

 例えば、交差点で曲がる時は、事前に減速を充分に行い、低速でハンドルを切る。車両の前輪と後輪の軌跡の差を頭に入れておけば、不必要に外に膨らむ必要はなくなる。 

 

 さらに、ハンドルを戻すタイミングも重要だ。曲がり切ったあとに無駄に大回りするクセがついている人も多いが、なるべくコンパクトにコーナリングを終えることで、後続車の走行ラインを乱さずに済む。 

 

 「自分は大丈夫」と思っている人ほど要注意だ。一度、自分のドライブレコーダーを見返してみたり、同乗者に確認してもらうと、予測不能なハンドル操作をしていることに気づくかもしれない。 

 

 初心者やペーパードライバーだけでなく、運転歴が長いドライバーでも、客観視して"あおりハンドル"をしていると判断されたなら、まずは広い駐車場などで車両感覚をつかむ練習をしてもらいたい。 

 

 公道は自分一人だけが走る場所ではない。安全運転の本質は、いかに周囲のドライバーや歩行者が"あなたの行動を予測しやすいか"にかかっている。 

 

 特に幹線道路やバイパスなど、車間距離が詰まりがちな場面では、唐突な"あおりハンドル"は追突や接触の引き金になる。SNSで話題になる「あおり運転」とは異なり、悪意はなくとも他車に恐怖を与える行為になりかねない。 

 

 安全運転とは、技術だけではなく「相手に安心感を与える運転」が基本である。無意識のクセを直すことが、結局は自分を守り、周囲のドライバーを守る最善策なのだ。 

 

 車両感覚を正しく把握し、膨らまずに曲がる意識を持つ。小さなことのようだが、これだけで事故リスクはぐっと下がる。 

 

 近年はドライブレコーダーの普及で"あおり運転"は注目されがちだが、自分の無意識のハンドル操作が「新しい危険の種」になっていないか、ぜひこの機会に点検してほしい。 

 

 安心して楽しいカーライフを続けるためにも、あなたの運転が「予測できる運転」であることが何より大切だ。 

 

 

 
 

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