( 313013 ) 2025/08/03 07:21:07 0 00 話題沸騰の「ジャングリア沖縄」(記者撮影)
7月24日、台風の影響で横殴りの雨が降った沖縄北部の今帰仁村(なきじんそん)。テーマパーク「ジャングリア沖縄」の開業前夜セレモニーで、マーケティング支援などを行う刀(大阪市)の森岡毅CEOがマイクを握った。
「大成功はいらない。確実なる、堅実なる離陸をさせたい。それがその先に広がる大きな日本の観光の可能性につながっていくと信じている」
森岡氏にとって沖縄でのテーマパークは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)時代から温めてきた14年超の構想だ。
アメリカのメディア大手・コムキャストによるUSJ買収の影響で沖縄進出計画が白紙になった後、2017年に刀を創業。沖縄での計画実現に向けて逆算し、マーケティング支援やテーマパーク運営支援などで実績を積み上げてきた。
コロナ禍などの影響も受けながらも、創業8年のベンチャー企業が主導し、約700億円を集めて計画実現にこぎ着けた。
■自然を生かしたテーマパーク
脱走した肉食恐竜T-REXの危険が迫る中、大型オフロード車に乗って逃げる――。メインアトラクションの「ダイナソー サファリ」では、ゲストが隊員となり、状況確認や事態制圧のミッションに参加する。
迷子の恐竜を探し出す「ファインディング ダイナソーズ」や滑空できるジップラインの「スカイ フェニックス」、ショーなども含めて計22のアトラクションがある。15の飲食施設や10の物販施設、絶景が売りの「スパ ジャングリア」なども整備した。
【写真】全長約84メートルの吊り橋を歩く「スカイエンド トレッキング」など(16枚) ジャングリアの事業面積は約60ヘクタール。東京ディズニーランド(テーマパークエリア51ヘクタール)や東京ディズニーシー(同61ヘクタール)と同規模だ。
「都会にある大きな鉄とコンクリートをふんだんに使って造られたテーマパークとはまったく違う」(森岡氏)とし、ゴルフ場跡地の環境や地形、自然を生かしたテーマパークに仕上げた。
「300分待ち」。7月28日午後、開業して初の月曜日。公式アプリには「ダイナソー サファリ」が5時間待ち、「ファインディング ダイナソーズ」が4時間待ちと表示された。空中でスリルを楽しむアトラクションはいずれも整理券発券終了か運休中となっていた。ほかの平日も似た状況だ。
開業したばかりで運営に不慣れという要因もあるが、待ち時間が長くなりやすい構造となっている。少人数体験のアトラクションが多く、自動化されていないため、いわゆる顧客回転率を上げにくいことが背景にある。
■時間効率が悪いアトラクション
例えば「ダイナソー サファリ」では、体験中にゲストが下車する場面がある。桜美林大学副学長の山口有次教授(テーマパーク論)は「途中で降ろして乗せて、シートベルトを付けさせて生まれるロスで時間効率を悪くしている。下の位置から見せたいことは理解できるが、乗ったままでもやれたのではないか」と指摘する。
「ファインディング ダイナソーズ」では、ナビゲーターがゲストに同行して迷子の恐竜を探す。マシンに乗って進むアトラクションではないため初期投資を抑えられるものの、人手が必要になる。
ジップラインなどスリルを楽しむアトラクションについても「全般的に時間効率が悪い。自然公園などでは有効に機能するアトラクションだが、多人数を乗せて回すことには向いていない。スリル系は間違いなくほしいが、別のものでキャパシティを満たさないといけない」(山口教授)。
ジャングリアをめぐっては、沖縄北部の観光振興など社会的な意義は大きいものの、那覇空港から距離があり、周辺の宿泊施設の受け皿不足といった課題を抱える。そうした環境下で成功軌道に乗せられるかは、運営会社の筆頭株主として主導する刀の「運営力」にかかっている。
本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「〈事業費700億円〉ジャングリア沖縄が開業、事業を主導する「刀」は西武園ゆうえんち、イマーシブ・フォート東京での教訓を生かせるか」でご覧いただけます。
具志堅 聡 :東洋経済 記者
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