( 313018 ) 2025/08/03 07:27:28 0 00 (※写真はイメージです/PIXTA)
不動産業界の定説として、「金利が上がれば、不動産価格は下がる」というものがあります。近年、インフレの影響から住宅金利が上昇傾向にあることから、「価格が下がってから購入しよう」と考えている人もいるかもしれません。しかし現状の予想では、金利が上がったとしても、不動産価格が下がる可能性は低いようで……。本記事では、稲垣慶州氏の著書『住む資産形成 資産価値重視で後悔しないマンションの選び方』(KADOKAWA)より、今後のマンションの値動きについて解説していきます。
[図表]不動産価格と金利から見た「支払金額」早見表 出典:住む資産形成 資産価値重視で後悔しないマンションの選び方』(KADOKAWA)より抜粋
インフレの度合いや金利について気にする方はもちろんいます。金利が上がれば不動産価格は下落傾向になります。月の住宅ローンに占める元本返済の割合が減るためです。
《金利が1%アップすれば不動産価格は20%下がる》
このことが定説のようにもなっています。いま住宅ローンの金利(変動金利)は0.7%程度です。この説に従うとすれば、変動金利が1.7%になったとすれば、1億円のマンションの価格は2,000万円下がることになります。
だとすれば、金利が上がって不動産価格が下がってから購入すれば良いのではないか、という方もいらっしゃいますが、その考え方は正しくありません。住宅ローンの金利が1%上がったとしても、金利が増えるので、結局、月々の支払額は変わらなくなります。[図表]を見てみてください。
価格7,000万円で金利0.4%のケースと、価格6,000万円で金利1.3%のケースで支払う返済額が同額に近くなります。価格6,000万円で金利0.4%のケースと、価格5,000万円で金利1.6%のケースもそうです。
要するに金利が上がって不動産価格が下がるのを待つ意味はないということです。むしろ、早めに残債を減らすために勇気をもって購入するのが良いです。価格の下落リスクに備えるのであれば、できるだけ適正金額の物件を購入するように心がけましょう。
金利が上がることを仮定しても、いまのところマンション価格が急落する可能性は低いといえます。
・2〜3年後に供給される新築マンションの価格は決まっていて、倍率も高く、圧倒的な需要がある。そのため周辺の中古マンションの価格も下がりにくい
・東京(とくに都市部)でいえば、転入超過が続いており人口が増加している
・インバウンドの影響もあり、分譲マンション用地がホテル用地と競合して値上がりしている
・資材価格の高騰や職人の人手不足などにより建物コストがかなり高くなっている
などといったことが、その理由に挙げられます。
現在は、新築マンションを建築するには坪あたり最低300万円はかかるようになっているといわれます。そうだとすれば、広告費や利益などを考えれば、坪単価を400万円以下にはしづらいです。
坪単価が400万円なら70平米(約21坪)で8,400万円となります。2024年に首都圏で発売された新築マンションの平均価格は7,820万円でした(不動産経済研究所のまとめより)。この価格で供給できる限界に近いといえるのかもしれません。
従来であれば、成約事例を見てその物件が割高か割安かは判断できていました。しかし、インフレ局面においては、想像を超えて値動きが早くなっております。現実的な例でいっても、1月に1億円で買ったマンションが年末には1億6,000万円になっていたことがあります。
私たち専門家は1年スパンといったレベルで価格がどのように動くかの予想を立てることもありますが、予想を超えたスピードで価格が上がることも多々あります。
実際にあったケースとしても、1億8,000万円で購入契約を結んだマンションが、2か月後の引き渡し時には2億3,000万円という相場になり、さらに5か月後には3億2,000万円になっていたこともありました。
これほど極端な例は少ないにしても、成約事例から見て適正価格を判断しようとするのは難しくなっています。3か月前の販売価格から比べようとすれば、ほとんどすべての物件が割高になる可能性もあります。
こうした状況のなかで、割安物件を探すことに執着していれば、一生、マンションを買えないことにもなりかねません。だからこそ、成約事例は参考程度とお考えください。成約事例から見れば割高のように感じられても、数年後に振り返れば割安だったことになる場合は多いものです。だとすれば、それが適正価格だということです。
“昨日の割高は今日の割安”という考え方をしておくのが良いのではないかと思います。
稲垣 慶州 株式会社KIZUNA FACTORY 代表取締役
稲垣 慶州
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